わがまま(白無常)
「もしもし、NINJAの[#dn=1#]で」
「早く拾って帰ってくれよぅ。早くっっ、命がいくらあっても足りねえよっ。」
ガチャンと受話を叩き付ける様な音がして足元にはバールが光り輝いていた。
「あ……あ、あ、バールだあ!謝必安っバール、バールだよ?これ本当にゲーム中にでるの?存在する?」
「そんな簡単にバールが出てしまえば、解読せずに箱を皆漁るでしょう?」
「確かにー!謝必安は頭が良いね。」
「[#dn=1#]の可愛らしさの前には全て霞みますよ。」
「ほ、ほ、ほっ褒めても何にもでないんだからあ!」
「[#dn=1#]の照れた顔が見れたので、私にはご褒美ですから。
さて、地下室まで案内してあげますね?」
顔を赤らめて手足をばたつかせていた[#dn-1#]をまた姫抱きにして[#dn=1#]の顔を覗き込んだ。
「はあああ、謝必安の必殺褒め殺しだね。」
「[#dn=1#]には弱点ですか?」
おでこにキスを落とすと、また[#dn-1#]は顔を赤くさせていた。
「うう、でも[#dn=1#]はアイドルだからっ、みんなの[#dn-1#]だからねっ。」
「そうですね。今は[#dn=1#]の一番のファンでいさせてもらえるだけで光栄ですよ。
そう言えば、傭兵はただのファンですか?」
「ナワーブ?ナワーブは相方だよー。ほんと無理救助したりダブルダウンする立ち回りするんだよね。助けないでって言っても来るの。」
「それは……大変ですね。フフフ。彼も[#dn=1#]の魅力に惹かれたのかもしれませんね。」
[#dn=1#]はハッとした顔をしていた。
「そ、そうなのかな?でも[#dn=1#]はみんなの[#dn=1#]だから。」
「フフフ、困ったファンですね。男は狼ですから、気を付けて下さいね。2人きりになっては駄目ですよ?」
「うん!分かったよ!ナワーブは狼さんなんだね?」
「まあ、そういう事で良いでしょう。帰ったらお茶でもどうです?お茶請けはドライフルーツです。」
「やったー!何のフルーツ?」
「楽しみにしてて下さい、[#dn=1#]。きっと[#dn=1#]が気に入ると思いますから。戻ったら直ぐに迎えに行きますね。」
「うん、すぐ来てね?なんのフルーツかなー?私が気に入るんでしょう?」
[#dn=1#]は謝必安から飛び降り、地下室をバールでこじ開け始めていた。
「……そう言えば[#dn=1#]、船の上から飛び降りたりはもうしていませんよね?」
「し、し、してないよ!」
「それにしても受け身をとるのがとても上手でしたよ。」
「えへへー、やっぱり?練習したもんねー。」
エッヘンと言わんばかりに、ポッカリ開いた地下室を背景に良い笑顔で[#dn=1#]は私を見ていた。
「もし[#dn=1#]が怪我をしたならば、付きっきりで看病してあげれば問題ありませんね。
食事からお風呂から下の世話まで出来ると考えると骨折は良いかもしれませんね?」
「……えへへー、気をつけるよ、謝必安。…………ごめんね?」
「いえ、怪我をしたら直ぐに教えて下さいね?かすり傷も怪我ですからね?」
「ひいっっ。」
「リッパーとの傷の手当てをしなければいけません。さあ、帰りましょう。」
「こんなの大した事ないからっ、わわわっ。」
嬉しそうに笑う謝必安にグイッと地下室に落とされた。
もしここで骨折しようもんなら、2週間は甘やかされ過ぎて二度とサバイバーとしての動きが出来なくなるような走馬灯の様なモノがよぎりながら下へと[#dn=1#]は落ちていった。
(終)