わがまま(白無常)

湖景村の船内で目が覚めて、回りを見渡しもう楽しくなってきた。

「解読☆解読★解読☆」

すぐさま階段を駆け上がり良いポジションでの解読をスタートさせて、船の穴の近くには愛すべき電話が置いてあった。
早く解読を終わらせて買いたい!うう、我慢!楽しみは取っておく!!

─────カタカタカタ
──────カタカタカタ
───────バンバンバンバンバンバン


──もぉー、飽きた!

「!!」

心臓が急に跳ね上がり、暗号機は盛大に爆発していた。

─ハンターが近くにいる─

ナワーブからのチャットの発信に慌てて船の上から飛び下りて、コロりと受け身をとった。

「もーう!巻き込みじゃん!……まあ船内チェイスしやすいもんね。仕方無し!」

プンプン怒りを抑えながら、少しだけ溜まったポイントにニコリと笑った。
どうやら今日のハンターはリッパーと無常?
……人には危ないって言っておきながら参加するって何なのっ、ズルすぎるっ。
海岸側にリッパーと無常が居るみたいなので、アスレと呼ばれている窓枠も板も完備な所の暗号機へ向かい、解読していたトレイシーの隣へお邪魔した。

「[#dn=1#]、……暗号機は爆発させないで欲しい。」

トレイシーは相変わらず忙しそうにリモコンをいじっては、目の前の暗号機を解読していた。本当に器用にこなすなあ、と感心する反面、
解読ばかりで面白くないんじゃないかと思う。

「分かってるよ!……あのさ、トレイシー。今日は私解読を代わるよ。……私の代わりにチェイスしてきてもいいよ?楽しくないよね。」

トレイシーへと目線を向けるとトレイシーの目の前が爆発していた。

「ぼ、僕は[#dn=1#]と違ってチェイスなんてしたくないからっっ、これあげるからチェイスしてらいいっ。」

トレイシーからグイッと金色に輝く信号銃を押し付けられたので受け取った。

「ありがとう!やだー、嬉しい!本当にもらっていいの?うわーい!!じゃあ変わりにコレあげる!!」

いつもの[#dn=1#]の所持品の「まきびし」を手渡されて、[#dn=1#]は飛び跳ねながらハンターが近くにいると発言したウィラの位置を確認して電話をしていた。

「正直いらないよ……[#dn=1#]。」

[#dn=1#]は自分の事をNINJAと言った。
正確には地下でNINJAアイドルのレッドをやっていて、NINJAを広めるためにこの荘園に来たらしい。
この[#dn=1#]から押し付けられたNINJA印の「まきびし」は地面に撒いておき、ハンターが踏めばスタンする。
そう 踏めば スタンする。しかも、この袋いっぱいの「まきびし」を1箇所に撒いておき、自分が踏まないように気を付けておかないといけない上に
歩幅の長いハンターには踏まれにくいという弱点すらある。
だから今日のハンターのリッパーと白黒無常じゃほぼガラクタ同然なのである。
[#dn=1#]に泣き喚かれたら困るので、仕方なく腰元に携帯して小さく溜め息をついた。


───

「もしもし!NINJAレッドの[#dn=1#]です!!」

「…………1000ポイントでは買えるものは……ひっ、いえ、何でもどうぞっっ」

「えー?じゃあねー、加速剤!飲んでみたかったのー、どんな味がするか気になっていたの。」

「わ、わかり…、ひいい、と、とっても薬品でっっ、不味いですよ、オススメ出来ませんん。あっっっこ、幸運剤と止血剤は美味しいですっ、か、可愛い方にはオススメですぅ。」

「うー、ポイント足りる?」

「勿論足ります足ります。ボールもさしあげますから。もうどうか、お電話なさらないで下さい、さようなら。」

ガチャンと受話器を勢いよく切られた音がして足元には幸運剤と止血剤とボールが置かれていた。

「…………?まあいいや、ラッキー☆可愛いだなんてー、なんだか照れちゃうなーあ。」

きっちり腰元に銃とボールをセットして、2種類の薬を飲み干して、トレイシーに向かって大声で声をかけた。

「行ってくるねー!!解読に飽きたら何時でも教えてね!!薬美味しくないんだねー、気持ち悪ぅー。」

「っっっ、早く行って!」

すると中央辺りに居るナワーブからハンターが近くにいると言うチャットが入り、
解読中止!助けに行くとチャットを送信して、[#dn=1#]はニヤリと笑みを浮かべてボールを構えて走って行ってしまった。

───────────

心臓が五月蝿くなり、出来ればリッパーとチェイスかもしたいと思っていたが、そこには誰も居なかったし、心臓も落ち着きを取り戻していた。

「ナワーブどこー?」

「ナワーブは見ていないよ。さっきまで白黒無常がいたからね。」

草むらからにょきにょきとカートさんが出て来て中央の暗号機を解読を始めていた。
うー、また解読かあー。

「あと一台だから頑張れるかな?[#dn=1#]ちゃん。ここが1番進んでいるからね。」

萎えているとカートさんが懐から宝を取り出し私に差し出してきた。

「使ってごらん?」

「ありがとう!」

暗号機に宝を近づけると一気に解読があと15%位になった。

「すごいねー!カートのお宝すごいねー!!私も掘り掘りしたいなー。」

「とても楽しいよ、[#dn=1#]。でも宝が掘れるまでは修行が必要なんだ。」

「そうなんだー。じゃあ今度さー修行するね!!」

「もちろ……[#dn=1#]危ない!!」

緊張が緩みきった私の背中を霧の刃が切り裂いた。

「いだだだだあいいい。っっっリッパー?やったあああ」

喜びも束の間、暗号機近くに赤い亀裂が見えてリッパーが瞬間移動をして来たらしい。

「カート、後は頼んだよ!!リッパー、可愛い[#dn=1#]はこっちだよ〜」

叫び散らして、とりあえずボールを使ってアスレへ逃げ道のある船の近くまで距離をとった。

「……ええ、言われなくても…。誰かさんのせいでゲームになりませんからね。

丁度良かったですよ、[#dn=1#]さんで。」

ハンターが近くに居るチャットをうち、船の上の枠に待機して、乗り越え加速のタイミングを見計らう事にした。
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