ここまでのあらすじ：
【名前】さんが新しく荘園にやって来たモブ男さんと付き合うことになった…とのこと。



「…そうですか。」


そんなことを聞いた僕はあっさりとそう答え、その場を去った。

去りながら聞こえた。今晩、彼らは中庭で恋人として話をするそうだ。



----------


「え……、ど…っ、ういうこと…？」


地面に横たわるモブ男さんを見て、【名前】さんはわけがわからないといった顔をしている。

…まあ、気配を殺してあなたたちに近付き、モブ男さんに注射したから当然か…。【名前】さんにとってはいきなりモブ男さんが倒れたかと思えば僕が立ってるんだから。


相変わらず【名前】さんが困惑していることをいいことに、僕は２本目の注射器を取り出し、【名前】さんの首筋にプスリと刺した。その瞬間、【名前】さんからは「あ…」と声が漏れる。


「安心してください。あなたたちに刺したのは筋弛緩薬。
…筋弛緩薬にも種類があります。その種類や打つ場所によって効果が異なります。彼には眠ってもらいましたが、【名前】さんに打ったのは動けなくなる程度のものです。
体が言うことを聞かなくなってきたでしょう？」

「な……んで…？」


動かない体をプルプル震わせる【名前】さんは顔に恐怖の色を浮かべながらそう言う。だけど、その質問には答えず、僕は僕の言いたいことを言う。


「さっき、筋弛緩薬にも種類があると言いました。もちろん注入すれば死ぬものもあります。」


そう言うと３本目の注射器を取り出し、モブ男さんに針を向けた。ただその動作をしただけなのに、【名前】さんは目の色を変えて焦り出した。


「や、めて…っ！」

「…確かに。僕としてもやめておきたいです。もし僕がここで彼にこれを注入すれば彼は死に、傍にいる【名前】さんに殺人の疑いが降りかかってしまうんですから。」


「……………え…？」


【名前】さんは目を大きく見開いて固まっていた。そんな彼女に僕は続ける。


「【名前】さん、言い忘れてましたが、あなたに打った薬が解けるのは朝方、ウッズさんが庭の手入れをしに来る頃でしょう。そしてウッズさんが冷たく固くなって横たわるモブ男さん、そんなモブ男さんを青ざめた顔で震えながら見ている【名前】さん、更に【名前】さんの近くに転がっている注射器を見たらどう思うでしょう？」


そこまで言うとさすがに【名前】さんも状況が掴めたらしい。はっ、はっ、と呼吸の仕方を忘れたかのような浅い呼吸をし始めながらただただ僕を見上げてきた。


「【名前】さん、あなたが独りに戻ることでこの最悪の結末は避けられますよ。モブ男さんは生き、【名前】さんは殺人者になんてならなくて済む。

…僕もそれがいいと思います。」


そう言ってあげると、冷や汗をたらたら流している【名前】さんはゆっくり頷いた。


「モブ男さんには『話し中に急に眠るなんてどうかしてる』とでも言っておきましょう。そう言って怒れば納得してくれますよ。」


そんなアドバイスをしながら動けない【名前】さんを抱き上げた。





程なくして、モブ男さんは【名前】さんにフラれてしまったとのこと。



----------

結論：イソップ・カールは提案した。