09:謝罪しまくる系女子
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「これでも飲んで落ち着いてください。」
「あ…、ありがとうございます…。」
いつも通りの微笑みを浮かべながらクラークさんが差し出してくれたのはホットミルク。それをお礼を言いながら受け取ると一口口に含んだ。ほのかに甘いそれのおかげで少し心が落ち着いて、思わずホッとため息が出てくる。
「………お…、お騒がせ…しました…。」
「ホントにな。」
「何事かと思いました。」
「ドゲザなんて初めて見た。」
「女性のそれは見てられなかったです。」
う…。皆さんがどこか呆れた目で私を見てる気がする…。よほど見苦しかったんだろなぁ…。
「ご…、ごめんなさい…。焦っちゃって気が動転した結果、気が付けば土下座してまして…」
「気が動転してドゲザってどういうこと?」
「そんなんだから悪い男に騙されたんだよ。」
う…っ!!!めっちゃキツイ一言が飛んできてそのまま胸に刺さる…!
声の主を見るとなんだかちょっと機嫌の悪そうなキャンベルさんが目に入った…。
そういやデミがキャンベルさんは終始機嫌が悪かったって言ってたな…。ホント私何やらかしたんだろ…。
というか…、キャンベルさんに限らず皆さんにはそれぞれやらかしたんだから、ひとまとめに土下座して事を済まそうとするのではなく各々にきちんと謝った方がいいよね…。
………だけど、それってものすごくハードルが高くないかな、なんてことに気付いてしまった私は、体全身がガタガタと震え出してせっかく淹れてくれたホットミルクをビチャビチャとあっちこちに溢しまくっていた。
「わああ!【名前】さん!?」
「何考えたらそうなっちまったんだっ!?」
「きっとノートンのせいだぁ!ノートンがそんな怖い顔で【名前】ちゃんにあんなこと言うから!」
そしてモートンさんがそうやって煽るから、更にキャンベルさんの機嫌が悪くなってる気がする…!つまり更に謝りにくくなってないかなこれ…!?
更にそんなことに気付いたもんだから、震えが治まらないままついには黒目が瞼の裏側に行ってしまった。
「ったく。落ち着けって【名前】」
少し苛立ったような声がしたかと思いきや、横からやってきた大きな手に腕をガッと掴まれて無理矢理立たされた。横を向くとサベダーさんの顔が目に入る。その顔には呆れももちろんあるだろうけど…、なんだか声色と一緒で少しばかりの苛立ちが含まれてるような…。
「もうお前寝てこい。お前が気にするほどここにいる連中は気にしてないから。むしろ、イライは鼻血垂らしてたし、マイクは既成事実作ろうとしてたしな。」
「なっ!?」
「わー。イライ君ったらやらしい。」
「マ、マイクには言われたくありません!」
…モ、モートンさんが作ろうとしていたという既成事実が気になるのはもちろんだけど、なんでクラークさんは鼻血を垂らしてたんだろう…?
……もしや、私ったら酔った勢いでついに顔面にグーパンチでもしてしまったんだろうか……!? だとしたら、めちゃくちゃ申し訳なくてまた震えが……。
「ホ…、ホント私…、何やらかして……──」
「気にすんなっつってんだろ。だからもう部屋に戻って寝てろ。お前バカみてぇに頭から河に落っこちたんだから。」
バ……、バカって……。
なんだかサベダーさん、いつもより言い方に棘がある気がする……。
………って!
そうだ!河っ!
私河に落っこちて、助けてくれたのはサベダーさんだともデミが言ってた!
ってことはそれに対してもちゃんと謝んな……きゃ……………
……
……
………今更ですが、思いっきり触ってる上に近くないですか?
「キャアアアァァァァーッ!!!」
今の自分の状況に気付いてしまったは私は、河に落ちた際に助けてもらったお礼を言うどころか、持っていたマグカップでサベダーさんの顔面を殴りつけてしまった。それによりマグカップが顔面にめり込んだサベダーさんは牛乳まみれになりながら背後へとぶっ飛んでいってしまう。そしてそのままドシャアァァという音と共に床に伏せたサベダーさんは……、ピクリとも動かなかった………
……………って……、
………ってえぇぇ!!
「キャアアアァァァァーッ!!!サベダーさアアァァァん!!!」
「大丈夫ですかナワーブ!?」
「ダメだ!“頑強”なはずなのに気絶してる!」
床に伏せているサベダーさんに駆け寄ったクラークさんとエリスさんは少し慌てながらそう言う。それを聞いた私はまた罪を重ねてしまったと思って、白目をむきながら全身をガタガタと震わせた。
だけど、そんな私の肩を誰かがポンと叩いてきた。ゆっくりゆっくり振り向くと真横には満面の笑みのモートンさんがいた。
「【名前】ちゃん、ナイスパンチ☆」
なぜか親指を立てて「グー」のポーズをしながらそんなことを言ってくる……。
絶対ナイスでもグーでもない…!
やらかしてしまったという気持ちと恐怖とで震えながらもそう思った私だったけど、程なくして強制的に部屋に帰された。