02:逃げるのに必死系女子
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「ホントにごめんなさい…。」
「絶対に許さない…!」
あの後、ジョゼフさんに執拗に追いかけられた私は奮闘したもののむなしく捕まってしまった。
「僕はね、場面場面でいちいち決め台詞を考えているんだ…!だというのに君はことごとく聞かなかっただけでなく、言ってる途中でも構わずにスタンを何回も決め込んできて…!」
ジョゼフさんはものすごくご立腹だ…。だから扱いもなんだかぞんざいで、荒々しくイスに座らされた。
それにしても…、どうにか3台分のチェイスはできてよかった。これなら許してもらえ……
……
……
………え?許してもらえるよね?
ああ!でも墓場の板全部使っちゃったぁぁっ!!おかげで墓場がもう弱ポジ化しちゃってるんだった!
もしセカンドチェイスが私以外になった場合、あそこではもうチェイスできない…!ってなったら私恨まれちゃうんじゃ!?それでもしゲームが負けになってしまったら墓場を弱ポジ化した私のせいだとか言われたりして…!!?そして、あることないこと言いふらされたくなかったら言うことを聞けとか言って無理難題を言われたりして…!
今までの経験上からそんな被害妄想が次々と溢れ出てくる。それにより恐怖した私がまたプルプルと体を震わせながら白目をむいていたその時、体が突然ドロドロと溶け出した。そしてハッと気が付けばいつの間にか棺の中にいた。
「…って、この能力はカールさんの…?」
そんな独り言を言いながらゆっくり棺から出てみる。ここはちょうど墓場の真反対に位置する北壁の…ーー
「ーー大丈夫ですか?」
「キャアアアァァァァーッ!!!」
突然横から誰かにそう声をかけられたもんだから、私は咄嗟にバチンと平手打ちをかましてしまった。だけどすぐに我に返って平手打ちをしてしまった相手を確認する。すると地面にピクピク震えながら白目で横たわってるカールさんがいた…!
「ってカールさん!!?」
「つ……、ついに…退魔護符すら使わなくなったんですね……」
あああああ!私ったらなんてことを…!
「ごごご…、ごめんなさいっ!!!まさかカールさんだったとは思わず…!いや!誰にでも平手打ちなんてダメですよね!ホントにごめんなさ…
……ひっ!」
必死になって謝ってると、やっぱりゴミを見るような目をしたカールさんが近付いてきたもんだから反射的にに頭を抱えてうずくまる。そして来るだろう痛みを覚悟して身を構えたけれど、覚悟していた痛みは一向にやってこなかった。だから恐る恐る目を開けると、恐る恐る私の前に注射器を置いてるカールさんと目が合ってお互い軽く肩を揺らす。
「……よ、よかったら使ってください。置いておくので。」
「え…?………あ…。…ありがとうございます…?」
………えっと…、どういうことか状況が掴めませんが…?
「僕も気持ちはわかります。治療受けるのって人と至近距離で接しなければならないので辛いですよね。」
そう言いながら何かを思い出したのだろうか、カールさんはぐっと目を細めながら遠くを見ている。というかその目は、なんだか死んだ魚のような目をしているような…。……な、何があったんだろう…?
………って!そんなことより!
……ま、まさか…、自身が過去に味わった経験から注射器を渡してくれたの?そう考えたら涙が滲んでくる程その優しさが胸にジーンと沁みるんだけど…!
「わかります…!すごくわかります…!辛いですよね…!」
だから気付けば私は譲り受けた注射器を胸の前で大事に握り締めながらそう同調していた。そういえばカールさんも社交恐怖というものを持っていて対人関係に難のある人なんだった。だから私の辛さも理解してくれたのかな。だとしたら本当にありがたい…!
………あ。でも…ーー
「ーーカールさん、そういえばせっかく見つけられた注射器だというのに譲り受けてしまってもいいんですか?」
「はい。【名前】さんに渡すつもりだったので。」
わわ!心配になったから聞いてみると更にありがたい返事が返ってきた。まさか私のために探してきてくれたとか?
……………そ……、それはさすがに自惚れすぎだよ私…。たぶん自分用に見つけてたけど使う必要なさそうだからってことでしょ。つまりしっかりチェイスしろってことなんだろう…ーー
「ーーここに居たのか【名前】。」
カールさんの粋な気遣いにうっかり自惚れそうになった自分を戒めたその時、息を切らしながらサベダーさんが現れた。そしてサベダーさんはそのまま私に近付いてくると私の手首をひょいっと掴み上げ……
……
……
……………って!!?
「ちょっとケガ見せ…」
「イヤアアアァァァァーッ!!!」
この断末魔のような悲鳴と共に、またサベダーさんに思い切り平手打ちをかましてしまったのは言うまでもない…。