11:特殊マッチしちゃってる系女子
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「え…?あ、あのカールさん…?」
そう呼びかけながら再びゆっくりゆっくりと顔の向きを正面に戻した私は引き攣った顔でカールさんの顔を見る。だけどその顔は俯いていてどんな表情をしているのか見えなかった。だけどそれがこの今の状況においては余計に恐怖を感じさせてくる…。
「うーん…。これは嫌な予感がするんだが…。」
そう言ったバルサーさんは相変わらずいつもの薄ら笑みを浮かべているけど、その顔には冷や汗を浮かべているのが見て取れる。
…まあ、無理もない…。だってバルサーさんのその「嫌な予感」と言うのは当たっていそうだもん。なぜなら、ゆっくりと顔を上げたカールさんはいつも以上にゴミを見るような目をしているからだ…!!
「ヒイイイィィィィーッ!!?」
「お前もかああああ!!!」
「んんんンんーっ!!!」
「逃げるぞ!」
バルサーさんの声でみんな一斉に逃げ出したけれど、ここは厨房奥の小部屋。身を潜めるにはもってこいだけど、決してチェイスをすべき場所ではないわけで…。出遅れた私は首根っこを掴まれてそのまま首に腕を回されたやすく捕まってしまった。
「…なんで逃げるんですか【名前】さん。」
「ヒイイイィィィィーッ!!?」
真横に現れたカールさんの血の通っていないような端正な顔に恐怖する。だけどそんな私を更に追い込むかのようにカールさんは取り出した注射器を私の目の前に持ってきた。
「…僕は、医師として入念に何度も脱走を企てた結果行きついた考えがあるんです。
この世から脱走してしまうことがこのイカれた精神病院から手っ取り早く脱走する方法だと。」
そう言いながらカールさんが注射器を少しだけ押すと、針の先端からは明らかに身の危険を感じさせる色をした液体が出てきて……
……ってえええ!!?
「なななな何ですかその液体はあああーっ!!?」
もしこれに刺されてしまったら命の保証がないことは目に見えている…!だからもう恐怖でいっぱいになった私は白目をむいている目から涙をどばーっと流しながら無様に叫んでいた。
そんな私の耳に「バウ!」と聞き慣れた声がする。それから間もなくカールさんが「くっ!」と何かに耐えるような声を漏らしたと同時に腕の力が緩んだので、首に回されていた腕をどうにか解くことに成功した。そしてなんとなくカールさんの足元を見てみると、ウィック君がカールさんに噛みついてくれてるのが目に入った。
「んンんんーんっ!!」
続いて聞こえてきたくぐもった声の方へ顔を向けると、こちらに大きく手招きしているグランツさんの姿が目に入る。そしてその後ろにはクレスさんとバルサーさんの姿も見える。皆さん私が捕まってしまったというのに恐らく私のことを見捨てずに待っていてくれたんだろう…。そう思うと白目をむいた目にありがたさから涙が滲んでくる…!だからカールさんに噛みついているウィック君を急いで抱きかかえると、自慢の韋駄天走りで3人の元まで走った。
「ありがどうございまず…!ありがどうございまず…っ!!」
「んンんっ!」
もはや崩壊しているような顔のまま濁点が付いているような汚い声でお礼を言うも、グランツさんはいつもと変わらない笑顔で笑いかけてくれた。
……のも束の間、私とグランツさんの間をものすごい勢いで注射器が通り抜けていく。だから二人してゆっくり振り向いてみると…、
両手に注射器を持ちながらゴミを見るような目でこっちを見ているカールさんがゆっくりこっちに近付いてきてるんですけどぉぉっ!!!
「僕が逃がしてあげますよ。」
そしてそう言いながら注射器を飛ばしてくるんだけど!言ってることとやってることが違い過ぎる!
「キャアアアァァァァーッ!!!」
「んンんんーっ!!」
「バウバウ!」
「大丈夫か!?」
「こっちだ早く来いっ!」
口々に叫びながら私たちは逃げ出した。
とりあえず逃げた!
とにかく逃げた!
逃げて逃げて逃げまくった…!
その結果…、カールさんを撒くことはできた。
だけど…、私は今…、一人ピアノの下にうずくまっている。…
「が…、がむしゃらに走りすぎて……、はぐれちゃった……」
白目をむきながら涙を垂れ流しビクビクと震える私の耳に、不気味に鳴り響くピアノの音が入ってきた…。
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【名前】「抱きかかえてたはずのウィック君もいつの間にかいなくなってるんだけど…」