11:特殊マッチしちゃってる系女子
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ジョゼフさんに退魔護符を投げつけることでどうにか逃げ切ることができた私とクレスさんは病院の端まで逃げてくることに成功した。そして連なっている牢獄のような病室の一室の隅に隠れながら息を整えていた。
「…ま、撒いたか…?」
「お…、恐らく…。」
「…というか、協力狩りなのになぜ写真家がいるんだ?」
「さ…、さあ…?」
そんな会話をする中、ふと以前ジョゼフさんに退魔護符を投げつけたり木の板をぶつけたりとスタンさせまくったことを思い出した。今回もまた遠慮なく退魔護符を投げ付けてしまったのだけど……ーー
「ーー大丈夫でしょうか…?」
「…何がだ?」
「ジョゼフさんに退魔護符を投げ付けちゃったことです。そのせいでスタンしちゃったので…。」
「それがお前の能力だろう?」
「そ、そうなんですが…、以前ジョゼフさんとチェイスしててスタンを決めまくった結果、脳震盪にさせてしまったことがあって…ーー」
そう言いながらクレスさんの顔を見上げた私は思わず言葉に詰まり肩をビクッと震わせた。……な、なぜなら…、クレスさんが目を細めながら眉をひそめて歯を食い縛っているという絶妙に変な顔をしていたからだ…。
「…な……、何ですかその顔っ!?」
「見ての通りだ。お前に引いているんだ。」
「え!?あ…、な…なるほど!?なんだかごめんなさい!」
たぶんクレスさんが私に引いてるのって…、私がご老人相手でも男性であれば容赦できないからなんだろう…。そう納得したのとテンパったのとで咄嗟に謝ったものの、クレスさんのその微妙な変な顔は元に戻らない。それどころかその変な顔のまま呆れたように、はあ…とため息を吐いている。
「僕が言うのも何なんだが、お前バカだろう?そんなのでよくこの荘園でゲームに参加しようと思えたな。」
「へ!?あ…っ、へっ!?」
「正常者がお前だけじゃ心許ない。他の正常者を探さなければ…」
その変な顔のままくるりと反転したクレスさんは、そう言いながらすくっと立ち上がるとスタスタと歩いていってしまった。
……い、以前から思っていたけどクレスさんは私への当たりがキツイような…。
まあ、無理もないよね…。初対面の日からずっと退魔護符投げつけたりひっぱたいちゃったりしてるわけだし…。未だに埋められてないだけ全然マシだよ…。それにクレスさんの言う通り、次から次へと男性に騙されるようなバカだし私…。男性不信なんてものを患ってるけどこのバカさ加減を治さない限りまた男性に騙されるんだろうなぁ…トホホ…。
そんな自虐をしながら白目を浮かべている内にクレスさんの背中は小さくなっていた。だから私はハッと我に返って「待ってください!」と小さく叫ぶと、その背中を急いで追いかけた。
それから幾分か経ち、長い廊下までやって来た私たちは周りをしっかり確認しながら身を潜めて進んでいた。そしてようやく正面玄関のゲートに差し掛かった。
「……ハ、ハンターも異常者もいないな?」
「い…いなさそ…ーー」
私がゲート側を確認しながらそう口を開いた瞬間、ゲートから何かが飛び出してきた。そしてその何かに驚いて思わず固まっていると、その何かは私の胸に飛び込んでくる。それによって私はコテンと後ろに転んでしまい、その拍子に軽く後頭部をぶつけてしまった。
「お、お前何やって……ーー」
クレスさんのそんな声を耳にしながらいたた…、と頭を擦って起き上がった私が胸に飛び込んできた何かを確認してみると…、
「ーー…ウィ、ウィック君!?」
「バウ!」
そう。私の胸にいたのは、へっへっと舌を出しながらしっぽを振るウィック君だった。
……ということは、つまり…、
私がそう考えるより早く何か気付いたように目を少し見開かせたクレスさんがウィック君がやって来た方向へと向かう。私もそれを追いかけるようについて行くと…、カウンターに身を潜めているグランツさんがそこにいた。
「ビ、ビクター…!」
肩を大きくビクつかせるも、その声が仲のいいクレスさんの声だと気付いたグランツさんは勢いよくこちらを見る。そしてクレスさんの姿を見たことで次第に安心感に包まれていったらしく、いつものようにニッコリと微笑んだ。
「よ、よかった…。ビクターは正常なんだな?」
「ウィック君、通りかかった私たちにグランツさんがいること教えてくれたんだね。ありがとう。」
そう言いながらウィックさんの頭を撫でてあげると、ウィックさんは「バウ!」と誇らしげな顔をした。そしてそんなウィックさんを抱きかかえると、グランツさんに手渡………
……
……
………ち、近い……
「~~~~~~~っっ!!!」
「お、お前から近付いたんだろうが…!!」
「んーっ!!?」
「バウバウ!」
思ったより至近距離に近付いてしまって驚いた私は、無意識の内にグランツさんをひっぱたこうとしていたらしい。だから声にならない悲鳴をあげながら暴れる私を再びクレスさんはギリギリと押さえつける羽目になったのだった…。