11:特殊マッチしちゃってる系女子
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「待って~っ?待って【名前】~?あ~そ~ぼおお~っ!!?」
「うわあああぁぁぁぁん!!信じてたのにトレイシいいぃぃぃっ!!」
私は白目をむいた目から涙を流しながら後ろから追いかけてくるトレイシーにそう叫んだ。
…これにはわけがある。
あの後、どうにか隙をついた私はトレイシーの手を掴んでバルクさんとジョゼフさんから逃げ出すことに成功した。だけど、なぜかトレイシーはずっと不気味な笑みを浮かべたままバルクさんとジョゼフさんを呼び続けていた。そのせいでまたバルクさんとジョゼフさんに追われる羽目になった。しかもなぜかトレイシーは狙われず私ばっかり…!
つ…、つまりこれ…っ、トレイシーが利敵してるってことだよね!?
「な…、なんであのトレイシーが利敵してるのか謎だけど…っ、…とっ、とりあえずトレイシーから逃げ切って、どこか物陰にでも隠れて改めて状況を整理し…ーーっ!!?」
こんがらがる頭を整理するようにそんなことを口に出しながら走っていると突然横へと引っ張られた。本当に突然だったもんだからその力に逆うことができなかった私は、そのままどこかの部屋の中に引きずり込まれることとなった。驚いて反射的に叫ぼうとするも強い力で口を塞がれ、暴れようにも背後から抱きつかれるように押さえつけれているため動くこともできない…。だからくぐもった声を出しながらただただ身を捩っていた。
「しっ、静かにしろ…っ!しーっ!」
焦りを含みつつ、でも私を落ち着かせるように静かにその声はそう言った。そんなその声にはなんだか聞き覚えがあった。だけど誰だかわからなくてこんがらがっている頭をフル回転させながらその声と一致する声の人を頭の中で探していると、「ウキャ!ウキャ!」という声と共にトレイシーがドタドタと足音を鳴らしながら部屋の前を通り過ぎていった。
「ぼっ、僕だ…っ!アンドルー・クレスだ…っ!……いっ、今から離れてやる…!…ぜ、絶対に暴れるなよ?」
トレイシーの声がほぼほぼ聞こえなくなった頃、耳元でそう囁かれる。それで合点がいった私はその言葉に同意するようにうん、うん、と激しく首を上下させた。そんな私の様子を確認しただろうクレスさんは私の口に当てていた手をゆっくりと離して叫ばないことを確認すると、ゆっくりと私の体から体を離した。それによりクレスさんから解放された私は、全身から力が抜けて思わずはあ、と息を漏らす。そして徐々に冷静になってきた私はクレスさんが私を助けようとしてあのような行動に出たんだと気付きお礼を言おうと振り向くと……
……
……
………思ったより距離感が近くて真後ろにいた。
……と、というか私…、さっきこの人に後ろから抱きしめられてたんだよね…。
改めてそう考えたらいっきに顔に熱が集まってくる。だけど次の瞬間にはそれが一気に引いて顔から血の気が消えた。
「~~~~~~~~~~っ!!!」
「あ・ば・れ・る・なああ~…っ!!!」
男性不信の発作のせいで我を失った私は白目を向きながら声にならない悲鳴をあげ、本能的な望遠本能が発動して退魔護符を今にも投げつけんばかりに振りかざしていた。そんな私の手首をクレスさんはギリギリと押さえる。
この攻防は少しの間続くことになった。
「ほ…、本当にごめんなさい…。」
「本当にだ…っ!お前に関わるとロクなことがない…っ!」
あの後、あの攻防にクレスさんが勝ってくれたおかげで大事には至らなかった。でも、逆に言えばもし私が攻防に勝っていたら大事になっていたわけで…。だからクレスさんは青筋を浮かべながらギリギリと歯を食い縛りながら私を睨みつけていた。…ごもっともです。
「大体…!大体だ…っ!この状況はなんだ!?協力狩りなのになんで僕は精神病院にいるっ!?」
「わ、わかりませ……というかクレスさん、声が…」
「しかも機械技師はどうしたっ!?なんであんな頭がおかしくなってるんだっ!?」
「私にもわからなくて…、というかクレスさん…、声が…」
「しかもっ!僕も追いかけ回されたぞっ!頭がおかしくなっている占い師になっ!!ベルト付きの拘束着を着た占い師が『あははは~』と笑いながらぴょんぴょん跳ねて追いかけてきたぞっ!」
「う…っ!それも随分と恐ろし……………いんですが、……クレスさん…、声が「こんなところにいたのか【名前】君。」
頭のおかしくなったクラークさんに出会い、頭のおかしくなったトレイシーを見かけ、男性不信を発動させた私に襲われかけ…、そんなことが立て続けにクレスさんを襲っていたせいだろう。ついに冷静さを欠いたクレスさんが興奮して徐々に大声を出した結果、嫌な予感を感じざるを得ない声がする。……ぞわぞわする…。
「おやおや、アンドルー君も一緒か。なら二人ともこっちに来たまえ。
二人ともちゃ~んとお部屋でいい子に過ごせるよう先生がおまじないをかけてあげよう…。」
そんな言葉を聞きながらクレスさんと二人でゆっくりと声の方を向いてみる。すると指先でサーベルを撫でながらニタァと艶がありつつも不気味な笑みを浮かべているジョゼフさんがそこにいて………
「ギャアアアァァァァーッ!!!」
「キャアアアァァァァーッ!!!」
どちらともなく二人揃ってそう叫ぶ。そしてこれまたどちらともなく同時に駆け出した。
「おおおおお前のせいだっ!!」
「わわわわ私のせいですかっ!?」
「おおおおお前が大声なんて出すから見つかったんだろっ!ホホホホホントお前に関わるとロクなことにならないっ!!」
それは理不尽だよクレスさん…っ!