10:ぶち壊し系女子
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「ほほほ発作だとはいえ!刺そうとしてしまって本当にごめんなさいッ!!そして私は【名前】と言います!職業は退魔師です!!」
どもりながらも深々と頭を下げて叫ぶようにそう言い切った私は、言い終わるなり肩を大きく揺らしながらゼェゼェと呼吸した。そんな私を見たトレイシーは何かツボにはまったのかお腹を抱えながらゲラゲラと笑っている。一方で当のバルサーさんはというと、しばらく私のことをぽかんと見ていたけれど程なくしてハハっと笑いを零した。
「まあ【名前】君、そう必死になって謝らなくても私は全く気にしていない。」
「ななな!?何を仰ってるんですか!? バルサーさんは危うく私に殺されかけたんですよッ!?」
「いや、自業自得だぞそいつ。」
許してはいけないところで許そうとしてくれているバルサーさんの心の広さに焦っていると、クレスさんが唐突にそう口を開いた。そんなクレスさんを見てみると相変わらず呆れたような変な顔をしている。そしてその隣にいるグランツさんが苦笑いを浮かべながら私に近付いてきたかと思いきや、なにやらメモを手渡してきた。
「え…?えっと……、
“【名前】さんの発作がどれほどのものなのかという妙な興味を持ってわざと【名前】さんに接触したようです”……?」
それを読んだ私はなんとも言えない気持ちになった。だからなんなとくバルサーさんに顔を向けてみたものの、当のバルサーさんはなんだか楽しそうに笑っている…?
「僕やビクターが散々説明したというのに。僕なんて捨て身で説明したのに…!」
「ンー……」
「いやー、すまないすまない。触ったら攻撃されるなんてそんな三流小説みたいなこと現実にあるのかと思ってしまってな。本当だったどころか刺されそうになるとは思わなかったが。」
そう言ったバルサーさんはハハハと声を出しながらやっぱり楽しそうに笑っている……。
……………なんだこの人?
白目をむいたまま私は率直そう思った。だって、刺されかけたのに笑ってすまそうとしてくれている…? いや、違う。危険だと教えられた人物にわざと接触してこようとした…?
え……? 大丈夫この人……?
なんだか心配になってきた私は相変わらず白目をむいたままわなわなと震え出してしまった。それどころか、この人のこの感じにどう対応したらいいのかわからなくなってきて頭の中がぐるぐるしてきてしまった。
「………と、とりあえず……、許していただけて…ありがとう、ございます……?」
「だからお前!罪悪感を感じるな!」
え?いいの?
正解がわからない私は白目をむきながら震えたまま疑問符を頭に浮かべまくる。そんな時、「まあまあ」と言いながらバルサーさんが近付いてきた。
「悪かったよ【名前】君。防御反応による発作なわけだから君も好きで暴行してるわけじゃないのにな。私も十分に気を付けるようにするさ。」
そう言いながら握手を求めてきたバルサーさんにやっぱりこの人はいい人なんだと思った。それに初対面でここまで理解を示してくれるのはありがたい話だ、そうも思った私はその差し出された手を掴んで握……
……
……
………って……、しまった……?
「キャアアアァァァァーッ!!?」
「ドゥフッ!!」
顔面を蒼白とさせた私は咄嗟にバルサ―さんのお腹目掛けて退魔護符を投げつける。すると奇妙なうめき声をあげたバルサーさんはお決まりの如く軽く後ろへ吹っ飛んでしまった。
「ごごごごごめんなさいバルサーさあああん!!!」
「な…、なんだこれ……? 腹が痛いというより内臓が痺れる……。いや……、内臓の更に内側が苦しい……。結局痛いのにどこが痛いのかわからない……。面白い……。」
「何だお前!?気持ち悪ッ!!」
私も正直、クレスさんと同じく少し引いた。だってバルサーさん、痛みに悶えるようにプルプルとは震えているものの笑顔でそんなことを言ってるんだもん…!
ホントにこの人大丈夫か…!? 何がツボにハマったのかゲラゲラと笑っているトレイシーの隣でそんなことを考えた私は、また白目をむきながらわなわなと震え出してしまった。だけど、そんな私に構うことのないバルサーさんは深呼吸をしてむくりと起き上がると、あろうことか再び私に近付いてきた。
「ちなみに君はいつからその症状に悩まされている? そういや恐怖症やそう言ったものにはあえてその恐怖の対象と触れ合ってみるという荒治療があるらしいぞ。もちろん私は専門外だが…、ああ確かこの荘園には医者の先生が……」
「ヒイイイィィィィーッ!!?」
この人絶対変な人だ……!そう思った私は涙をちょちょぎらせながら肩を大きく振るわせた。私からバルサーさんを遠ざけるべく間に入ってくれたクレスさんとグランツさんのおかげでどうにか距離を取れたけど、こうして毎回近付いてこられたらいつかとんでもないことをしでかしてしまいそうだ…! そう思った私は、この人のためにもこの人には近付かないようにしなくてはと白目をむきながら考えた。
だけどこの間に、また私が騒ぎを起こしてると思われたらしい。
「おいおい!?何の騒ぎだ!?」
「【名前】がルカをぶっ飛ばしちゃった~!」
「おいお前ら、まさか【名前】に酒飲ませてねぇだろうな。」
「ンんん!」
「それならよかった。」
エリスさんにサベダーさんにクラークさんに既にすっかりいい顔色になっているピアソンさん、おまけに「なになに?楽しそ~☆」なんて言いながらモートンさんまでやって来る。なんでよりにもよって男性ばかり集まってくるの……!?
「【名前】ちゃんはお酒飲んでる~?」
「い…、いや…あの……飲んでませんよ…?」
「あ、そっか~!【名前】ちゃんは飲んじゃダメなんだったね。じゃあこれどうぞ☆」
そう言ったモートンさんはオレンジ色の液体が入ってるコップを渡してくる。色も匂いもオレンジジュースではありそうだけどなんだか怪しい……。そうは思ったけど、ズイズイと差し出してくるそれを断り切れなくておずおずと受け取ろうとした。
だけど手に取ろうとしたその瞬間、顔の横からぬっと伸びてきた手によって回収される。恐る恐るその手を辿っていくと、苦虫を噛み潰したような顔をしながら既に中身のなくなったコップに「甘っ!」と文句を言っているキャンベルさんの顔に辿り着く。
「あ…、あの……」
「へぇ…、【名前】さん酒飲もうとしてたんだ?」
そう言いながら私の顔を見据えたキャンベルさんは、いつもより無表情…というよりももはや目が据わってる……。そんな目で見据えらては恐怖でしかない……!
「ヒイイイ!ちちちちっ、ちが…ます……ッ!!」
「もう!ノートン邪魔しないでよね!」
「まあ飲んでもいいけど、それで酔っ払って部屋の鍵でも閉め忘れてようもんなら、その時は覚悟しときなよ?」
「ちょっと!聞いてんのデカトン!」
「【名前】どうしたの~?今度は誰ぶっ飛ばしたの~?」
目を据わらせたまま禍々しいオーラを放っているキャンベルさんに、白目のまま思わず震えあがる。一応許してはもらえたものの、私はあの協力狩りの日、本当に何をしでかしたんだ…!? 震えあがりながらそんなことを考えている内にすぐそこでバルサーさんやサベダーさんたちと話していたはずのトレイシーが楽しそうにニヤニヤと笑いながら私の方へやってきた。
……そ…、それだけならいいものの……、すぐそこにいた男性たちもなぜだかトレイシーに追随するように私の元へとやって来る……!
「ちぇー!誰も殴られてないじゃん!【名前】無双見たいのに~。」
「機械技師お前…!殴られるこっちの身にもなってみろ!」
「ねぇ【名前】ちゃ~ん!ノートン酷いよね!僕のこと無視したし!」
「【名前】さんから離てあげてください。白目むいてますから。」
「ゥンン!」
「【名前】ー!?大丈夫か!?どうした!?チェイサーいるか!?」
「げ!?飲んだのか【名前】!?」
「あ、もしかして、【名前】君は相当弱いクチか?」
「……弱いなんてもんじゃない。」
口々にそう言っている皆さんは、なぜだか私を取り囲んでいる…。だから私の周りは現在男性密度がめちゃくちゃ高い…!そんな言葉があるのか知らないけど、とりあえず私の精神はこの男性密度の高さにより徐々に削がれていく……!!
ただでさえそんな状態だというのに、なぜか酔っ払ったピアソンさんが突然肩を組んできた。
「なあ退魔師~、お前ウッズさんと仲いいならウッズさんのパンツの一枚や二枚盗んできてくれないかぁ~?できたら脱ぎたてのやつ!」
いやらしい目付きと声色のピアソンさんにそう言われて、私は背筋がゾクゾクして全身に鳥肌が立った。だから、無意識の内に震える手で手持ちの御札全部退魔護符に変えていた。
「イヤアアアアアァァァァァァーッ!!!!!」
いつもより少し長く叫ぶと、その退魔護符全てをその場にいる人たちに投げつける。そしてそれらが全て見事にヒットして、男性たちはその場にのたうち回る羽目になった…。
それにより歓迎会が一時中断したのは言うまでもない…。
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【名前】「ちなみにトレイシーはモートンさんと先に逃げ出してたらしい。……よかったんだけど、モートンさんってホント侮れない…。」