10:ぶち壊し系女子
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「本当にごめんなさい!!」
「お前は何回同じ事をするんだっ!?」
もはや恒例となりつつある謝罪を深々としたものの、クレスさんはおでこにピキーッと青筋を浮かべさせながらご立腹の様子である。
……当然だ。クレスさんはこの荘園に来て間もないというのになんだかたくさんの退魔護符を投げ付けてしまっているし……。この人にこそそろそろ埋められそうだ……。
そんなことを考えてたら白目をむいた目にまた涙が滲んでくる…!すると、こんな情けない私を見兼ねたらしいグランツさんが「ん!ん!」と苦笑いを浮かべながら慌ててクレスさんをなだめてくれていた。
「この見た目とは裏腹に凶暴なお嬢さんは?」
グランツさんになんて優しい人なんだろうとは思いつついたたまれない気持ちになっていると、そんな言葉が耳に入ってきた。
………狂暴って…。ショックだけど確かにその通りだ……。
初対面の人にそんな印象を持たれてしまったとは…と悲しいやら情けないやらという気持ちに陥った私は、ハハハと泣きながら苦笑いをした………
……
……
………って、アレ?
初対面の人……?
そう思うと同時にハッとした。そうだ、見たことのない男性が居たんだった、そんなことを思い出した私は改めてその人物を見てみる。
この左目の痣が特徴的なこの人はもしかして……
「………あ、あの……、もしかしてあなたは……?」
「ああ、申し遅れてしまったな。
私はルカ・バルサー、「囚人」だ。今日からよろしく頼む。」
そう言うと、囚人ことバルサーさんは右手をそっと私の胸の前へと差し出して握手を求めてくる。なので私も反射的に手を差し出そうとしたものの、出した手はクレスさんによって押さえられてしまった。
「どうした、墓守のクレス君? まさかヤキモチか?」
「そそそ…っ、そんなわけないだろう!ババババカか!バカなのかお前は!?
というか!さっきの僕を見てなかったのか──」
「──キャアアアァァァァーッ!!!」
「ブフッ!」
クレスさんが何かをしゃべっている途中だったと言うのに例の衝動に耐えれなかった私は、咄嗟にクレスさんのほっぺたをひっぱたく。それによりベチーンという乾いた音と共にクレスさんは鈍い声を出した。
「ヒイイ!クレスさん!!ごめんなさい!!」
「こうなるからだ!わかったか「囚人」!」
「いや、全然意味がわからないんだが?」
「そしてお前はせめて手加減をしろ!この暴力女めッ!」
「ごめんなさいッ!!!本当にっ!!」
突然クレスさんをひっぱたいたかと思いきや深々と謝罪する私、そしてそんな私をガミガミと怒るクレスさん。結局この光景が何を意味するのかわかっていないバルサーさんが頭に疑問符を浮かべまくっているのが視界の端に入ってくる。クレスさんに必死に謝罪しながらもこれをどう説明すればいいんだなんて考えていると、苦笑いを浮かべたグランツさんがバルサーさんに何かのメモを渡していた。
「なになに?
“彼女は男性不信のため、男性に触れると防御反応の発作が出てしまいます。”?」
「ンンー」
「うーん…。
“ですが、彼女は決して悪い人ではありません。むしろ優しい人です。暴力行為だってあくまで防御反応なので、彼女自身暴力行為をしたいわけではありません。なので、彼女を刺激しないようにしてあげてください。”
なるほど。よくわからないがよくわかった。」
「どっちだ!?」
クレスさんがバルサーさんに勢いよくツッコんでいる横で私はあわあわと焦りながらグランツさんを見る。そんな私の視線に気付いたらしいグランツさんは、ニッコリと微笑んでくれると親指と人差し指で輪っかを作ってハンドサインを送ってきてくれた。
……グランツさんは本当に優しい…!こんな私にも優しくしてくれるなんて…!
そう思った私は両手を祈るように握り締めると涙を流らしながら拝んだ。
「まあ、彼女が男性不信に陥っているということは分かった。あと、彼女に触れると痛い目に遭うこともな。」
「まあそれがわかっていればいいだろう。」
そんな折、そんな会話が聞こえてきてハッと我に返る。
……そうだ…。私はそもそも果物ナイフを取りにここに寄っただけで、元々こんな暴力女はここにお呼びではなかったんだった……。
そんなことを考えながらトホホ…とうなだれると、こそこそと動きながら包丁があるだろう場所へと行く。そして目的の果物ナイフを手に取ったその瞬間、突然後ろから肩をトントンと叩かれた。ん?と思いながら後ろを振り向くと、満面の笑みのバルサーさんがいる……。
「それで、暴力的な君の名前は何というんだ? あと職業も知りたい。それからこれはただの個人的興味だが、君はもしかしてアジア圏の出身か? そうだなァ…、私の予想では日本国だ。その羽織の派手な柄は日本国特有の柄だと思われる。」
バルサーさんは満面の笑みのままそんなことをズイズイと迫りながら言ってくる……
……
……
………ち…、近い……っ!!!
「バカかお前はーーーッッ!!?」
「ンんンンーーーッ!!?」
かなり焦ったクレスさんとグランツさんが同時にそう叫ぶ。でも、私はお決まりの「キャアアアァァァァーッ!!!」という悲鳴をあげると、持っていたナイフをバルサーさん目掛けて掲げた。それが振り下ろされる前になんとか駆けつけたクレスさんとグランツさんが間に入ってくれたおかげでで大事には至らなかったけど…、
「な、なんでよりによってナイフを持っているんだお前っ!?」
「んンんんんんンんーっ!!!」
そう言いながら羽交い締めにされたもんだから、恐怖した私は泡を吹きながら気絶した…。
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ビクター「ンンっ!?」
アンドルー「し、しし、しっかりしろ暴力女っ!!なんてことをしてくれたんだ「囚人」お前エェェ!!」
ルカ「すまない。だがちょっとおもしろかった。」
アンドルー「反省をしろこの野郎ッ!!」