10:ぶち壊し系女子
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今日はあの忌まわしい協力狩りの日から2日後である。
そして現在、………朝の5時前である。
「……………。眠れない……。」
あの次の日、やっぱり釈然としなかった私はデミにも男性方にも再度謝った。モートンさんは愉しそうに「いつかあの約束果たしてね」なんて言ってくるし、カールさんは不気味に目を歪めながら「辛くなったら頼ってくださいね」なんて言うし、キャンベルさんは「ちゃんと部屋の鍵閉めときなよ」なんて不穏なことを言ってきたけれど、皆さん優しいことに気にしないでと言ってくれた。
だけど、ただ一人まだ謝れていない人物がいる…。
………サベダーさんだ。
なぜだか焦ったあまり顔面を殴ってしまったし牛乳まみれにしてしまったし……、サベダーさんには一番迷惑をかけていたと思われる。だから早急に謝らなければならないというのに、なぜだかこの2日間サベダーさんに会えないのだ…!なんやかんやで今までは1日に1回は顔を合わしていたような気がするのに……!
そんなことを考えてるせいだろう、この2日間スッキリ寝れていない……。
「……もう起きとこっと…。」
そんなわけで今日も早くに目が覚めた私は、浴衣を脱いで商売着に着替えると軽く身支度を済ませて自室を出てみた。
当たり前だけど廊下には誰もいない。でもってやることもない。とりあえずみんなが使う食堂の机や備品でもピカピカに拭いておこうと考えながら食堂に入ったその時──、
「あぶっ」
不意に何かにぶつかってしまった。なんだろうと前を見たその瞬間、私の顔からはみるみる血の気が引いていった。
目の前に居たのは珍しく髪を下ろしてるサベダーさんで、共用のシャワールームでシャワーでも浴びたんだろうか…? 下ろしてる髪は濡れてるし…、上半身が……、裸………
「……悪ィ【名前】。誰もいないと思ってた。」
「…………。
キャアアアァァァァーッ!!!」
私は顔面を蒼白としながら右手を大きく開きながら構えた…。
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「本当に、本当にごめんなさ……──」
「やめろ!ドゲザしようとすんな!」
とにかく謝らなくちゃと思った私は、ほっぺたを赤く腫れ上がらせているサベダーさんに土下座しようした。だけど、かなり慌てた様子のサベダーさんにすごい勢いで止められてしまった。それにより手持ち無沙汰のような状態になった私はわたわたと焦っていた。
だって、こんな朝に会ってしまったのがよりによってサベダーさんなんてすごい偶然なんだもん…!おかげですごく気まずい…!めちゃくちゃ気まずい…!!謝らなきゃと思うのに体がめちゃくちゃ震えて声が出ない…っ!!
瞳をぐるぐるとさせながら涙を滲ませてぷるぷると震えてる私はきっとすごく情けない姿をしてるんだと思う。現にサベダーさんは私を見てものすごい呆れ顔をしているもん…!
「とりあえず水でも飲め。」
呆れ顔のサベダーさんは、とりあえず私を椅子に座らせてからそう言うと水を差し出してくれた。なので、震える手でそれを受け取ってみる。だけど、手が震えているせいでせっかく入れてくれた水をそこら中にびちゃびちゃと飛び散らせながらこぼしていた。
「何やってんだよ【名前】。」
相変わらず呆れ顔のサベダーさんはそう言うと、私からコップを取り上げて代わりにタオルを渡してくる。私は咄嗟にそれを受け取ったけれど、こんなやらかしまくりの私がサベダーさんのタオルを図々しく使ってもいいんだろうかなんて考えてしまい、その好意を受け取れずにオドオドとしていた。
そんな私の様子を見たサベダーさんはハァ…とため息を吐くと、しゃがみ込んでから私を見上げてきた。
「【名前】、まだ協力狩りのこと気にしてんのか?」
「……ご、ごめんなさい…!本当に申し訳なくて…。」
「気にすんなって言っただろ。」
「で…っ、でも……っ!私、酔っ払ってあちこちに迷惑かけまくってたのをサベダーさんがどうにかしようとしてくれてたって…。おまけに河に落っこちたのをサベダーさんが助けてくれたっていうのにまともにお礼も言えてないし…。それどころかマグカップで顔面ぶん殴っちゃったし、今日も出会い頭にひっぱたいちゃったし……」
オドオドしながらもそう言うと、サベダーさんは再び深くため息を吐く。今更とでも思われたんだろうか……、そんな不安を頭によぎらせたもののサベダーさんの口からは意外な言葉が出てきた。
「……別に、【名前】なら許せる。」
「え……?」
「そもそも河に落ちた奴が居たとして、それをわざわざ助けに行くほど俺はお人好しじゃない。」
……それってつまり…、怒ってはいないということだろうか…? それどころか、こんな酷いことばかりする私だというのに嫌われてもないのだろうか…?
そんなことを考えてみたけれど、サベダーさんは指先で頭を掻きながら眉間にシワを寄せて目を固く瞑っているだけでそれ以上は何も言ってはくれなかった。だけど、私の心の中はなんだかじわりじわりと温かさが滲んできて、思わずほっぺたの筋肉が緩んでしまった。
「………ありがとう、ございます。」
はにかんだ私がおずおずとそう言うと、サベダーさんは「おぅ」と簡単な返事をしながらそっぽを向いてしまった。
「そんなことよりお前、顔拭いとけよ。風邪引くだろ。」
そっぽを向いたままそんなことを言うサベダーさんに、内心これごときで風邪は引かないなんて思いつつも思わず微笑んでしまった。そして言葉に甘えて貸してもらったタオルで顔を拭かせてもらうことにした。
既に濡れているタオルからは少し汗の臭いがする。そういえばサベダーさん、朝から共用のシャワールームを使っていたようだった。そこから推察するに、もしかしてこんな朝早くからトレーニングでもしてたんだろうか…? そんなことを考えていると、幾度となく肉壁してくれた時の光景がふと蘇ってくる。毎回ゲームで結果を残してくれるこの人は、裏で密かに努力してるのかななんて考えると改めて尊敬に値するなぁと思って、思わずフフッと笑ってしまった。
「何笑ってんだよ。」
そう言ったサベダーさんの言葉に思わずギクリと肩を震わせた私はサベダーさんの顔を見る。そしてなぜだか照れ臭そうにしているサベダーさんの表情にハッとした。……だって今の私、タオルの臭いを嗅いで笑うような気持ち悪い奴になっているのでは…? だとしたら誤解を解かねばとわたわたと焦り出す。
「ちちちち…っ、違うんですっ!別にタオルの臭いを嗅いで笑ったとか、そんなわけじゃありませんよ!?」
「………ああ悪ィ、汗臭かったか?」
「ああああ!!そういうわけでは…!!
と、というか!むしろ私が汚しちゃったと思うので、洗って返しますね!」
「そんなもん気にしてねェよ。」
そう言ったサベダーさんは私からタオルを取り上げようと手を伸ばしてきた。だけどその伸ばされた手の指先が……私の手に………当たった……………──
「ヒイイイィィィィーッ!!!」
せっかく仲良くなれたと思ったのに、私のこの発作は容赦がなかった。
……つまり、このあと私が再びサベダーさんのほっぺたをひっぱたいてしまったなんてことは……言うまでもない………。