08:酒に飲まれる系女子
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その後、チャットを使って全員集まった俺たちは、ノートンのスカーフで目隠しされたままの【名前】を取り囲みながら唸り声をあげていた。
「で?結局どうするよ?」
そう言うとその場の全員が静まり返った。そんな状況を打破したのは意外にもイソップだった。
「…ハンターに、投降してもらえるようにお願いできないものでしょうか。」
その提案に一同はあっと納得する。
というのも、白無常はいけ好かねぇ野郎だと思ってたが、【名前】がああなってからずっと俺たちと一緒に行動していた。あの分じゃゲームにならねぇから投降するよう言ったら投降してくれそうだ。
そう考えた矢先、タイミングよく傘が俺たちのところへ飛んでき……
………って、ちょっと待て。
「あ、ちょうどいいところに!ねぇ白いの…」
デミは何か言葉を発しようとしたが言葉に詰まったのが見て取れる。それもそのはずだ。白無常の状態から飛んでやって来たんだから現れるのは当然黒無常の方なわけで。
そしてこの黒無常は白無常と全然性格が違う。
なんつーか…、こいつは、うん…。
話が通じねぇ…。
「フン…。滑稽なサバイバーどもだ。いきなり必安を抱きしめるような淫乱女、この俺が今すぐ吊ってや……ーーグハッ!」
やって来て早々調子に乗ったことを言ってきた黒無常に苛立った俺は、持ってた信号銃を容赦なくぶっ放した。それにより黒無常は悶え苦しんでるわけだが…、前から思ってたけどこいつリアクションオーバーなんだよな。
「傭兵貴様…!」
「なんでてめぇが出てくんだ。」
「そうだよ!白いのに代わんな!」
「なんだ貴様ら揃いも揃って!」
「でしたら無咎さん、投降をお願いできませんか?」
「するわけないだろう阿呆が!」
投降しろと責め立ててくるサバイバーに青筋を何個もビキビキと浮かべながらキレてる黒無常を見て、やっぱハンターってろくな奴いねぇななんて呆れ顔で思った。
だが、【名前】には目隠しこそしていたが、さすがにかわいそうだということで手足の拘束はしていなかった。だからこの騒ぎが何なのか気になったんだろう。【名前】は目隠しをするりと解くと、あろうことか黒無常の顔をじっと見る。その視線に気付いた黒無常が【名前】の顔を見た瞬間、俺たちは全員「あ…」と声を漏らしながら固まった。
「しゅきれしゅ…。」
状況の掴めていない黒無常は「は?」と声を漏らすと、目を点にしながらその場で固まっている。だが露わになった虚ろなその瞳で黒無常の目を捉えた【名前】は、おもむろに立ち上がりながら欲情したような顔をすると、両手を前に伸ばしてひしっと黒無常へ走って向かっていった。
「しゅきれしゅぅぅーっ!!!」
そうして黒無常の元まで辿り着いた【名前】は黒無常に抱きつくとそのまま押し倒した。一方固まった状態でそれを見ていた俺たちはみんな一斉に白目をむいた。
「あーーっ!!ひどいっ!【名前】ちゃんの浮気者ーっ!!」
「よ…、よりにもよって今度は黒いのに惚れちまったよあのバカ…!」
「やめとけ【名前】ーっ!そいつも笑い声きめぇぞ!!」
白目をむいたまま口々にそう叫ぶが、ああなった【名前】の耳には届かない。それどころか、「【名前】はあなたがしゅき」だの「あなたにならもうめちゃくちゃにしゃれたい」だのと欲情したかのようなあの顔で、舌足らずになったあの声で甘い言葉を囁いている。
「な…っ!?何をする淫乱女…っ!?とち狂ったかっ!?」
一方、いきなり押し倒された黒無常は戸惑いつつも【名前】を引き離そうと必死……
…って、待て。
なんだこの状況。結局【名前】は俺以外の男全員に惚れ回ってんじゃねぇか。俺はあいつの為にずっと走りっぱなしだったってのに。
別に俺にも惚れろとかそんなわけじゃねぇ。…ああ、そんなわけじゃねぇ。断じて違ぇ。だが俺は…ーー
ーーなんだかイライラすんだがっ!?
「どいつもこいつも発情期かってぐらい目の前でイチャイチャイチャイチャしやがってチクショー…」
側にいる奴に聞こえるか聞こえないかぐらいの声でそう悪態を吐く。だが俺のイラつきはそれどころじゃ止まらねぇ。「よ~し野郎ども~」なんて言いながら懐から信号銃を取り出すと、野郎どもの方へ向き直った。
「スタン道具の準備はできたか~?」
「おうよ!ボールまだ残ってんぞ!」
「硫酸ナトリウムならあるよ?」
「相棒による攻撃でもいいですか?」
「あ、誰か割れた酒瓶使うかい?」
「待て貴様らっ!
まず傭兵!貴様既に肘当てを持っているというのに信号銃を何個持っているっ!?そして何人か道具の使い方を間違っている者がいるんだがっ!?」
黒無常は青筋を何個も浮かべながらそう叫んでいるが、冷や汗を大量に流している辺りサバイバーの一斉攻撃に内心さすがに怯んているらしい。だが俺たちは構わず黒無常に詰め寄っていっ…ーー
「どういうことなん…。」
女の、そんな低い声がした。だから全員一斉に声の方へ向き直ると、「美人相」のくせに背筋に悪寒が走るほどの雰囲気を纏った芸者の姿がそこにあった。
「げ…!」
「芸者の美智子…!」
「もう一人のハンターは美智子だったのかい!」
芸者のただならぬ雰囲気に俺たちサバイバーは全員冷や汗を垂らした。
だが、ここで俺は違和感を感じ取った。確か【名前】と芸者は同郷で、ゲームで【名前】とかぶれば必ず優鬼をするほど大変気に入っている。つまりあのただならぬ雰囲気は俺たちに向けられたものではなく…ーー
「初心な【名前】ちゃんに何しとんのんや無咎はん…っ!!」
そう言っていつもより禍々しい般若相になった芸者が黒無常に襲い掛かるを見て、俺はなぜか溜飲が下がった。
【傭兵はキレた】