01:暴走しちゃう系女子
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ア~ハッハッハッ!!」
殺風景な廊下にそんな甲高い笑い声が響いた。その笑い声の主が今私の真横でお腹を抱えながら大笑いをしている踊り子のマル姐だなんてことは言うまでもないだろう。でもなんでマル姐が大爆笑をしているのかというと今朝の出来事を話したからだ。
というのも、ゲームへの参加要請があったからゲームステージへと続くこの長くて殺風景な廊下をとぼとぼと歩いていると、後ろから不意に肩を叩かれた。だから振り向いてみると、そこには心配そうな顔をしたマル姐がいて「どうしたの【名前】?」と声をかけてくれた。
マル姐は男性で手痛い目に遭った私をどうにも放っておけなかったらしく、私がこの荘園に来た当初から仲良くしてくれていた。私もそんなマル姐のことが大好きで常日頃から何かと頼りにさせてもらっている。だからそんなマル姐が声をかけてくれたことにより安堵した私は、情けなくも思わず涙をうるうると滲ませると今朝の出来事を話したのだ。
……だけど、全て話し終わるな否やプッと吹き出したマル姐は、そのままこうして大爆笑をし始めたわけだ…。
「ひどいよマル姐っ!」
「仕方ないじゃない。すっごくおもしろいんだもの。」
目に涙を滲ませたまま白目をむいた私が抗議したものの、マル姐はヒィヒィ言いながらお腹を抱えている。
ぐぬぬ…、ひどいなもう…。私は重大戦力である3人を寝込ませてしまってどうしようもない程テンパってるというのに笑い話として受け止めるだなんて。そんなことを思いながら口を尖らせてると、それぞれのゲームステージにつながる待機室の扉が連なる廊下に辿り着いた。
「あー笑った笑った。今日のゲームやる気出なかったんだけど、ゲーム前にこんなおもしろい話聞いたらゲームがんばれそうだわ。ありがとう。」
ご機嫌な様子でそう言ったマル姐は笑い過ぎたことにより滲み出てきたんだろう涙を拭うと、「じゃあね~♪」とご機嫌な様子で手をひらひらと振りながら扉を開いた。そしてそのままその中へ入っていったのだけど…、そのゲームステージは「ホワイトサンド精神病院」だった。
……確かに、ホワイトサンド精神病院ってやりにくいにも程があるステージだよね。だからやる気出なかったのか。それなら私の話のおかげでやる気出てよかった……ーー
ーー……わけはないっ!
一人でそう自分にツッコミを入れた私は、罪悪感の消化不良によりとほほ…とうなだれながら参加要請をされた赤の協会の待機室の前に立つ。
「女の子いるかなぁ…。」
そしてぽつりとそう言うと扉を少し開けてその隙間から中を覗いてみる。すると中には…ーー
ーー………納棺師のカールさんと曲芸師のモートンさんが居た。
私はそっとドアを閉めた。
ドアを閉めると同時に頭を抱えながらその場にしゃがみこんだ。
というのも、カールさんは社交恐怖らしく会話が成り立たないし、たまにゴミを見るような目で見てくるから辛い…。
そしてモートンさんはとびきり明るくていつの間にか距離を詰められることがあって辛い…。
要するに二人とも辛いのだ…っ!!
今更ゲームを辞退なんてできるわけもないんだからどうしようもない。だけどどうしようってテンパってしゃがみこんだまま頭を掻きむしっていると、「オイ」と低い声がした。だから恐る恐る後ろを見上げると…、
「退いてくれねぇか。」
鋭い目付きをした傭兵のサベダーさんが背後に立っていた。私は、そんなサベダーさんを見るや否やテンパって冷や汗が止めどなく流れ出てきた…。
…いや、サベダーさんは非常にいい人だ。率先して救助に行くし身を挺してまで人を庇うし、私自身何度も助けてもらってるし…。
だけど……、何をされたわけでもないけど、その鋭い目がすごく怖いんです…っ!
「もしかして【名前】も赤の協会か?ならとっとと入んぞ。」
だけど、そんな失礼な事を言えるはずもないからサベダーさんは私がそんなことを思っているだなんて知らないわけだ。だから私の二の腕を掴むと無理矢理立ち上がらせた。それに伴い、目の前にサベダーさんの顔がやってきた。
こんな至近距離でその鋭い目で見据えられては蛇に睨まれた蛙のような気分になってしまって汗が止まらなくなる…!だから一刻も早く離れてほしい…っ!
だけどそんな私の願いは通じず、サベダーさんは怪訝な顔で尚も私の顔を見据えてきていた。
「……なんだよその汗?」
「……イ…、イ、イイ…
イヤアアアァァァァーッ!!!」
ついに限界を迎えた私は私の中で何かが爆発した。そしてその勢いでサベダーさんに退魔護符を大量に投げつけてしまったのは…、言うまでもないだろう。