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棘田キリオの憂鬱(全5種)




「おいバカ女ァ!」

「あ、イバラキさん」

「い・ば・ら・だ!!」

「『イバラダキリオ』なら、略してイバラキでいいと思います」

「良くねぇよ!いい加減にしろよテメェ!!」

「それより、どうしてこちらにいるんですか?」

「感謝の日とかいう訳わかんねぇプレゼントの礼しに来たんだよ!有難く思え!」

「そんなに踏ん反り返られても感謝しにくいし、怪し過ぎるんですけど」

「いいから食え!当たりを引くまでな!」

「当たり?もしかしてロシアンルーレット系の…成程。これ、1つだけ食べてもらっていいですか?」

「ああ?まぁ、普通に食うだけじゃつまんねぇよな。いいぜ。1つだけな」

「この右上のでお願いします。…この手のゲームを私に持ちかけるなんて、命知らずな人」




Melancholy of IBARADA・KIRIO
~棘田キリオの憂鬱~




「ゲッ!!まっず!!うえええ!!」

「残りは全部美味しいんですよね。大事に食べさせてもらいます」

「ちょ、待て!!帰ろうとすんな!!」

「当たりはすぐわかるけど、私からしたらあれはハズレだもんなぁ。お茶菓子用に摩季ちゃんに分けてあげよっと」

「待てっていってんだろバカ女ーー!!覚えてろよォオオ!!」






「この前はよくもやってくれたなバカ女!」

「ほとんど出番がないまま引退したから暇なのかもしれませんけど、私は結構忙しいんですよ」

「うるせぇ!!テメェに仕返ししねぇと腹の虫が収まらねぇんだよ!!

「ロシアンルーレットの件を根に持ってるなら、今度は激辛わさびが出るまでやりましょうか」

「おう、いいぜ!やってやろーじゃねぇか!!」




Melancholy of IBARADA・KIRIO
~棘田キリオの憂鬱~




「……全くと言っていいほど出てこねぇな」

「知念先輩は優しい人ですから、激辛わさびなんて入れませんよ」

「なんだそれは!先に言え!」

「急に怒鳴ってどうしたの?美味しくなかった、かな?」

「いえ、とっても美味しいですよ。ね!イバラキさん!」

「棘田だっていってんだろバカ女!!味はその…まぁまぁ、だな。強いて言うなら軍艦のバランスがなってねぇよ!具を多く盛りすぎだろ!米の良さ殺してんじゃねぇよ!」

「わ、わかった!気を付けてみるよ!」

「アドバイス貰えて良かったですね。先輩」

「うん。早く一人前になって、卒業までにみんなを招待してあげたいよ。二人とも手伝ってくれてありがとう」

「…ウチにもこういう害のないチームメイトがほしかった」

「帝黒は全体的に濃いですからね。でも、ハッキリとダメ出ししてくれる人が見つかって良かった。知り合いだと気を遣っちゃうし、私一人だけだとすぐお腹いっぱいになっちゃうし…少し早いけどご馳走様でした」

「ところで彼のいってるバカ女って、もしかして…」

「私のことみたいです」

「僕達の大事なマネージャーをバカ女呼ばわりするなんて…っ!へいお待ち!」

「おお。次はどう…かっら!!ここに来て激辛出すんじゃねぇーーー!!」






「よぉ、バカ女」

「こんにちは。こんなに何度も会いに来てくれるなんて、よっぽど私のことが好きなんですね」

「んな訳ねぇだろ!!気色悪いこというんじゃねぇ!!大学の説明会に来たついでだよ!!」

「大学は関東のほうにするんですか。でも、そこの大学ってそんなに偏差値高くないのに、バカ女っていわれるのは心外です」

「俺だってイバラキと無関係だっつーのにイバラキ呼ばわりされたかねぇけどなァ!!」

「だから『イバラダキリオ』の略で…まぁいいや。別に来るのはいいんですけど、大阪から何度も私に会いに来てる=大和くんだと思って、若干一名が暴走し掛けてまして」

「んなもん知ったこっちゃねぇよ!今度こそお前に「おい」

「ぐえっ!!なんだテメェ!!」

「そりゃこっちの台詞だ。その制服、帝黒のだな。大和の代わりにコイツを攫いに来たのか」

「何を訳のわからねぇ…くっそ、どんだけ力あんだコイツ!」

「フー…聞き覚えのある不協和音だと思ったら、やはり彼だったか」

「棘田ァア!スマートじゃねぇ真似はやめてもらうぜ!!」

「赤羽さんにコータローさん?どうされたんですか?」

「君がストーカー被害に遭っていると聞いて、心配で見に来たんだ」

「ああ!?ふざけんな!!俺だって相手くらい選ぶわ!!」

「少なくともコイツのほうがお前より人間出来てんだよ!!表に出ろやコラァ!!」

「校門の前で揉めないでください!せめて場所を移動してから…っ」




Melancholy of IBARADA・KIRIO
~棘田キリオの憂鬱~




「うん、雰囲気があっていい店だね。気に入ったよ」

「なんで過程すっ飛ばして当然のように大和が増えてんだよ」

「棘田氏が抜け駆けしてると聞いたからね!いてもたってもいられずに来てしまったよ!」

「だから違ぇっつーの!そもそもお前らと茶ァ飲む気なんてねぇんだよ!」

「僕の天使がいるのなら、音楽性の合わない相手が何人同席しようと構わないが」

「ムカつくけど右に同じくってヤツだな!俺の場合は妹分だけどな!」

「俺はコイツが無事であればそれでいい。で、どれにするんだ」

「これ!私、この新作のイチゴタルトが食べたいです!イバラキさん!」

「俺の奢りみてぇに頼んでくるんじゃねぇ!!自分で払え!!」

「君の分は僕が持つよ。一番先輩だというのに、この程度も奢れないような男に頼む必要はない」

「んだとコラァ!いいぜ!好きなモン頼めよ!先輩だからな!」

「いいんですか!?んー…じゃあ、パフェに替えようかなぁ」

「おーっし!んじゃ、一番高いステーキセット!」

「では、僕は一番高いコーヒーを」

「サイタマが払うならこれにしろよ。巨深タワー風パンケーキ」

「イバラキだし別人だよ先生。それって50cmくらいあるやつでしょ?一度食べてみたかったんだー!」

「はは、折角だから一通り頼めばいいじゃないか。ここからここまでください」

「~~~っ、男共は自分で払え!!やっぱテメェらなんか大っ嫌いだァアア!!」






「じゃあ、また明日な」

「うん。バイバイ」

「…バカ女」

「っ!?きゃ「騒ぐな!俺だ!」

「ぷはっ!イバラキさん!?どうして家のほうに?本当にストーカーみたいで怖いんですけど」

「アイツらにまで奢る羽目になって帰る金がねぇんだよ!!なんとかしろ!!」

「ええっ!?私よりも大和くんや赤羽さん達のほうが親しいじゃないですか!」

「大和にも赤羽にも借り作りたくねぇし、何より怖いっつーの!アイツらがどんな人間かわかってねぇだろ!!」

「は、はぁ…確かに私も調子に乗っちゃってすみません。でも、生活費を貰う前で今あまり持ち合わせがなくて。従兄も男性を泊まらせるっていったら怒ると思います」

「……つまり、俺にこの寒空の下で野宿でもしろってか?」

「そういう訳じゃ「あーあーテメェらがバカスカ頼むからこんな羽目になったんだよなぁ~どうしてくれんだかな~」

「ううっ!確かにそうですけど!でも「女の子をイジメるような男にロクな奴はいないよ」

「キッドさん!」

「やぁ。陸が部室に携帯を起きっぱなしで帰っちゃってね。念のため届けにきたら、こんなところで君がイジメられてるもんだから驚いたよ」

「コイツ確か、花梨が声掛けてた西部の…って、怖ェよ!なんだよその銃!」

「悪いけど一発撃たせてもらっていい?汚れた手でお姫様に触れた挙句、脅しながら迫った罪は重いんじゃないかな」

「それよりキッドさんの気持ちのほうが重いので、それ以上はやめてあげてください」




Melancholy of IBARADA・KIRIO
~棘田キリオの憂鬱~




「…で、この前の寿司屋の息子に世話になるとはな」

「僕だってまだマネージャーの件は怒ってるけど、彼女が困っているから仕方なくね!」

「へいへい。みーんな可愛いマネージャーちゃんにお熱でウラヤマシイぜ」

「それだけじゃなくて、すっごくいい子なんだよ。君を泊めるのも風邪を引いたら可哀想だから、って一生懸命頼んできたから親にも説得したんだし」

「…ふーん」

「でも好きになると大変だよ。特にウチの筧と水町は本気だし、一途だから…」

「はあ!?誰があんなバカ女を「もう一度バカ女っていったら出ていってもらうから」

「……スミマセンデシタ」






「おはようございます」

「…んだよ朝から」

「駅まで送ろうかと思って。あと、おばさんにお金を前借りしたので、これを交通費に使ってください」

「お、おう。悪いな」

「ちゃんと借用書を書かせろよ。万単位の金を素性も知らない相手に貸すんだから」

「うん。ここに文面を書いたので、お名前とサインを貰えますか?」

「いや、それよりなんだよそのチビ」

「アンタがストーカーしていた妹の従兄ですが何か?」

「ストーカーじゃねェっつーの!!お前も否定しろよ!!」

「毎回アポなしで私を待っていたので、強ち間違いじゃないかなって」

「そりゃテメェの学校と名前しか知らねェからだよ!!」

「俺はそんな相手と喋るのも許したくないっていうのに…とにかく、もう二度とコイツに会いに来ないでください」

「こっちだって願い下げだ!!兄のほうも妹に似て可愛くねェな!!」

「俺はともかく、妹は世界一可愛いに決まってんでしょう!!」

「しかもシスコンかよ!!マトモな奴がいねぇ!!」




Melancholy of IBARADA・KIRIO
~棘田キリオの憂鬱~




「は~~もう東京来たくねぇ。でも大学こっちだった。マジ憂鬱だわ」

「そういわずに、はい。どうぞ」

「ん?なんだこれ」

「お弁当です。容器は捨てられるものなので、途中で捨ててください」

「…変なもの入れてねぇだろうな」

「そう思うのなら食べなくて結構です。あと、赤羽さん達にも奢ってあげてたので、盤戸の件は少しだけ許してあげます」

「なんでお前そんな上から「棘田さん」

「だからイバラキって…あ?合ってんのか」

「大学でもアメフト続けてくださいね」

「……まぁ、そうだな。続けてるかもな」

「私のチームメイトがぶっ潰すので、精々それまで偉そうにしていてください」

「やっっぱ可愛くねぇなお前!!こんな弁当なんざ捨ててやるよバーーカッ!」





「…………無駄にうめぇ。くっそ、バカ女のくせにバカ女のくせに…っ」


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