マルコくんの妹の場合。
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「愛ーちょっとこれ「イヤー!令兄のバカー!!」
「あだだっ!痛いっちゅーにー!」
「ノックもせずに入るってどういうこと!?サイテー!この似非イタリアン!」
「いや、ハーフなだけじゃね!?なら愛もイタリアンじゃね!?」
「うっさいバカ!そんなんだから氷室先輩に振られんのよ!」
「うわーそこ抉るとか!こんな子に育てた覚えはないっちゅう話だよ…顔は断トツで可愛いのに」
そういってよよよ、と涙を拭う…不服ながらも私の兄である円子令司。円子という女みたいな名字を気にしていて、みんなからマルコって片仮名表記で呼ばれている。まぁ私も円子だから、私は令司の令を取って、令兄って呼んでるけど。
異様に下まつ毛が長くてコーラが好き。暇さえあればコーラを飲んでる。多分体がコーラで出来てる。そして氷室先輩が大好きだけど、私のことも大好きだ。前に「私と氷室先輩が崖から落ちたらどっち助ける?」って冗談で聞いたら「どんな手を使ってでも両方助ける」と真顔で答えた。そういう男だ、この人は。
「っていうか、何の用なのよ」
「ああ、ちょっとボタン取れてさ。付けてほしいっちゅう話」
「えーめんどくさーい」
「ハー・ゲン・ダッ・ツ」
「しょうがないなぁもー!この優し~妹がつけてあげるんだからー!」
「はいはい、お願いします」
アイスの王様に買収され、私はお裁縫箱を出して丁寧にボタンを付け始めた。裁縫の腕はファッションデザイナーであるママ譲りだ。たまに真似をして服や小物も作る。
令兄のネクタイも私が作ったもの。恐竜柄なんて珍しい、と白秋に入った記念に作ったら「俺の妹は世界一すごい!超愛されてる!」と絶賛して毎日付けてくれてる。あまりにも大事にしてるから、予備も何個か作ってあげたんだけど。令兄のこういうとこは結構好き。本人には絶対言わないけど。
「はい。出来たよ」
「おー流石!完璧じゃん!」
「当たり前じゃない。もうさっさと出てってよ」
「…ね、愛」
「何?」
「そのぬいぐるみ、この前なかったよな?」
そういいながら、令兄は寒気がしそうなくらい冷たく笑った。笑顔なのにめちゃくちゃ怖いってどういうことなの。ホントに勘がいいというか、なんで覚えてんのよって感じだけど、昔からこういう人だから仕方ない。
「も、もらったの」
「だ・れ・に?」
「え、と…峨王さん」
「……は?」
峨王さんは令兄のチームメイトらしい。めちゃくちゃ大きくて、野獣みたいな人だ。前に仕方なく、ホント~に仕方なく令兄の忘れ物を届けに行った時に初めて会った。なんかもう、怖いし、泣きたいし。でも足動かないし。何これ人間なのこわぁあ!誰か助けてぇええ!!
「その肉」
「は、はい…!」
「腹が減っている。寄越せ」
「はい!!喜んでー!!」
だから殺さないでー!と半泣きで、ママに頼まれて買ったお肉を渡してしまった。っていうか生だけどいいのかな、という不安も何のその。がつがつ召し上がっておりました。
それから気に入られたようで、UFOキャッチャーを壊してしまって出てきたというぬいぐるみをお礼に貰った。なんだかんだいい人…なのかな?
「チッ…峨王はノーマークだったな。天狗ちゃん達抜けるし、来年は大分敵が減ると思ってたのに」
「令兄…?」
「いやいや、こっちの話。で?白秋受かりそうな訳?」
「や、ギリギリかもって…他の学校にしようかと「俺が教えるから問題なし」
「は?」
「下手な家庭教師より、白秋の問題パターンわかってるし。首席を舐めてもらっちゃ困るね」
「いや、でも令兄は部活で忙しいし…」
「愛のためなら、いくらでも時間割けるっちゅう話だよ」
でもこういうところは本当に優しいし、頼りになるんだ。令兄と違ってそこまで頭もよくないけど、頑張ってみようかな。お礼の意味を込めて、私はそっと令兄の持っていたコーラを奪い取った。
「令兄…その、コーラ開けてあげる」
「ああああ愛のデレとか!!超可愛い!さすが俺の妹!マイ・エンジェル!」
「ぎゃあああ!!キスするなバカーーー!!」
でも令兄と同じ学校に入ったら、いつまでもベタベタされそう。彼氏なんてもってのほかだ。っていうか、来年じゃ氷室先輩いなくなっちゃうじゃない!やっぱり白秋受けるのやめたいけど、このバカ兄が絶対に許す訳がない。ああ、さよなら私の高校生活…
「あと、来年はマネージャー任せるよ」
「えーそこまで私がしなきゃダメなのー?」
「ちゅーかよ、マリア抜けて愛まで応援してくんなかったら俺死ぬよ…」
「ああ、うん。わかったから。死なないで令兄…」
私の兄は好きな人と比べられないくらい私が好きで、どんな手を使ってでもとパパに似てえぐいくせに、ホントは結構情けない人。仕方がないから氷室先輩に見捨てられても、私だけはこのバカな兄を愛してあげようと思うのです。
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