6.名前
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「りっくん、ちょっといい?」
「ん?どうした?」
「明日お出掛けするから、服を選んでほしくて」
「別にいいけど…男じゃないだろうな?」
「まさか!ほら、この前一緒にいた摩季ちゃんだよ」
「ああ。例のあの子か」
「摩季ちゃん綺麗だし、お休みの日くらいオシャレしたいなって思って…」
「よし!なら花音をとびっきり可愛くしてやるよ!」
「やったー!りっくんありがとう!大好き!」
「ん、知ってる」
ぎゅっと抱き着くと、優しく抱き締め返してくれた。やっぱり、りっくんは頼りになる!
それから彼はクローゼットの中から色々チョイスして、朝も髪を巻いてくれた。たくさん似合ってるって褒めてもらったし、今日は素敵な一日になりそうだ。そう思いながら、お出掛け用のバックを持って待ち合わせ場所に向かった。
*****
「えええ!?来れない!?」
『ごっめ~ん。寝坊しちゃってーメイクするの時間掛かるし~また今度でもいい?』
「う、うん。わかった」
『マジごめんー今度なんか奢るから~』
摩季ちゃんはルーズなだけで悪気があったわけじゃない…と思うけど、どうしても溜息が漏れてしまう。結構楽しみにしてたんだけどな。珍しく早起きして手伝ってくれたりっくんには申し訳ないけど、他に予定もないしこのまま帰ろうかな。
「…水瀬?」
「え?筧、くん?」
「一瞬気付かなかった。可愛い格好、してるな」
「あ、ありがとう。筧くんもカッコイイよ」
「えっ、あ、ああ。サンキュ」
いきなり声を掛けられて驚いた。まさかこんなところで筧くんに会うなんて思わなかった。ラフながらお洒落な格好で彼によく似合ってるし、制服やユニフォーム姿と違って新鮮だ。そんな筧くんにお世辞とはいえ褒められると照れてしまう。
かくいう筧くんも少し照れて赤くなってる。普段はカッコイイのに、ちょっと可愛いかも。そのまま2人赤くなったまま固まっていると、筧くんが頭を掻きながらこちらを見つめてきた。
「そういや、今日渋谷と出掛けるっていってなかったか?」
「それが、さっき起きてメイク間に合わないからまた今度〜って」
「ドタキャンされたのか…」
ホントにアイツは、と溜息をつく筧くん。なんだか慣れてますって感じだ。でも前は二日に一回しか学校来てないし、彼の苦労もなんとなくわかる気がする。
「筧くんも、何処かにお出掛け?」
「ん、雑誌買いにちょっとな」
「月刊アメフト?」
「ああ」
「そうなんだ」
「……え、と」
「あ、あの…」
どうしよう。会話が続かない。そもそも選択授業が何個か被ってるだけで、私はそんなに筧くんと仲良くない気がする。でも、筧くんからわざわざ声を掛けてくれたんだから、一応友達だと思ってくれてるはず!たくさん優しくしてくれたし、知り合いよりはちょっとだけ上の位置はず!だけど、なんでモゴモゴするんだろう。私相手だと気まずいのかな。
「あーその、水瀬。この後の予定って決めたか?」
「え?まだだけど」
「丁度昼時だし、良かったら一緒に飯食わねぇか?そのまま雑誌見て敵情視察も出来るし」
「いいの?」
「俺は適当に食って帰るとこだったから。迷惑じゃなければ…」
「ううん、誘ってくれて嬉しいよ!えっと、よろしくお願いします…!」
「…クス。よろしく」
ぺこりとお辞儀をすると、クスクス笑われた。「変なこといった?」と聞くと、「なんでもねぇよ」といいつつ、軽く頭をぽんぽん撫でられた。…やっぱり筧くんみたいな人から見ると子供に見られてるのかな、と思うとちょっと複雑だった。確かに筧くんは大人っぽいし、しっかりしてるけど。
「何処のお店がいいかな?」
「いや、水瀬に合わせるけど」
「わ、私に?」
「俺は基本なんでも食えるから、好きなとこでいい」
いつも人に合わせてばかりだし、まだこの辺に詳しくないから、すごく戸惑った。でも近くにりっくんと行ったパスタ専門店があったことを思い出し、とりあえずそこに入ることにした。うーん…今日はどうしよう。あ、この海鮮パスタってなんだろう。新メニューかな。
「決まったか?」
「ん、と…カルボナーラにしようかな。でも海鮮パスタも美味しそう」
「どっちのほうが好きなんだ?」
「いつもはカルボナーラなんだけど、冒険したい気もして」
「じゃあ俺が海鮮にするから、カルボナーラにしろよ。少し分けてやるから」
「うん。ありがとう!」
筧くんがテキパキと注文を取ってから、アメフト雑誌を開いて私にもわかりやすいように説明してくれた。でもところどころ「ウチの敵じゃねぇな」なんて自信満々で、微笑ましかった。本当に巨深のみんなが大好きなんだってわかって嬉しい。途中で何笑ってんだよ、って突っ込まれてしまったけど。
それから少し話を脱線して、アメフト以外の話もした。
「そういえば、マネージャーになる時に初めて会ったと思ってるかもしれないけどね」
「違うのか?」
「うん。覚えてるかな。受験の面接の後、迷ってたところを助けてもらったの」
「あ…そうか。でも制服も髪型も違ったよな」
「その時に筧先生ーって呼ばれてたから、つい勘違いしちゃったんだよ」
「…俺、そんな老けて見えるか?」
「大人っぽいっていうんだよ」
「物はいいようだよな」
「ふふ、そんなに拗ねないで」
その途中でスパゲティが届いてからは一旦中断して、私達は黙々と食べ進めた。筧くん、綺麗に食べるなぁ…なんて思いながら見つめていると、「食うか?」といいつつお皿を差し出された。く、食い意地張ってるように見えたかな?不安になりつつも、一口いただきますと断ってから口に運んだ。
うん、これも美味しい!言葉に出さずとも表情で伝わったのか、筧くんは優しく微笑んだ。思わずドキッとするくらい、優しい顔だった。
「本当に美味そうに食うな」
「だ、だって美味しいんだもん」
「お前それ、全部食えるか?」
「うーん。難しい、かも」
「食えなくなったら俺が食うから、無理すんなよ」
「ありがとう」
りっくんと同じこというんだな。食欲によっては、最悪半分くらい食べてもらうこともあるし。それからなんとか頑張ってみたものの3分の2くらいが限界で、残りは筧くんに渡した。彼は相変わらず黙々と食べ、綺麗に完食した。
その様子をじっと見つめていたらバチッと目が合って「なんだよ」とそっけなく返されたから、「なんでもないよ」って笑い返した。筧くんって見た目はちょっと怖いけど、気遣いの出来る優しい人だな。
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