5.友達
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なんか休んでたうちに、新しくマネージャーが入ったっぽい。金曜休んで、土日は遊んでたし、なんやかんや行かなかった日もあったけど、その間に早速仕事してくれたとか。先輩達がデレデレするくらい可愛くて、料理から雑用からなんでも出来て、更に分析力があるとか完璧すぎて何それ当て付け?って感じ。
それに加えて…
「水瀬可愛いよな~!一年の…何組だっけ?」
「水町GJすぎんだろ!渋谷全然来ねーし、あー代わりに毎日来てくれりゃいいのに!」
「確かに!もう水瀬一人でいいんじゃね?」
「…へーえ?」
「「げっ、渋谷!?」」
「あーはいはい。わかりました~そこまでいうならぁ…辞めまーす」
これだよ?ああもう、ブチっと来て退部届け出してやったね!ふざけんな!もう勝手にしろ!それから何回かメール来たけど全部拒否した。学校も全部嫌になって3日くらい休んだ。
でも、流石に先生からお怒りの電話が来て、放課後にプリントだけ取りに来た。あー超めんどかった。さっさと帰ろうと下駄箱へ向かうと、筧と水町が女子を引き止めているのが見えて咄嗟に隠れた。「ドリンクだけでいいから!」「洗濯だけでいいから!」って超必死に。ってことは、あの子が水瀬さん?え…代わりに仕事やってくれてんじゃないの?
「嫌・で・す。先輩達が渋谷さんに謝るまでやりません」
「いや、先輩達も悪いと思ってるよ?でもさー学校来てくれないとさぁ」
「もしこのまま来なくて退学します、とか言い出したらどうするの?責任取れるの?」
「そ、それは…」
「確かに先輩達は言い過ぎたかもしれねぇけど、水瀬まで休まれると困るんだよ」
「自分達のことは、自分達でなんとかしてください」
「花音ちゃん怒ってる…チョー怒ってる」
「当たり前だよ」
ぶっちゃけ、なんでこんなに水瀬さんが怒ってるかわからない。一度も話したことないし、タイプも違う。あんなに真面目ならアタシみたいなタイプは嫌いそうなのに肩入れするとか、意味わかんないよ。
「大体二人とも、どうして毎日毎日休み時間や放課後に頼みにきてるかわかってる?」
「そりゃあ、洗濯もドリンク作りも片付けも人足りなくて…」
「それを二日に一回だって、今まで渋谷さんがやってたんだよ?それを何、私一人でやればいいって…大事な仲間を簡単に捨てていいの!?たかが雑用たかがマネージャーならこっちだって願い下げだよ!」
「そんなこと思ってねぇよ」
「そうそう。つーか、俺らはいってないし」
「連帯責任」
「…ハイ」
「………」
驚いた。大人しいタイプだと思ったのに、あの筧すらたじろってる。それになんか、嬉しかった。会ったこともないアタシのこと、すごい見てくれてるっていうか…そういって褒めてくれる人なんて、今までいなかったから。
「私は渋谷さんの家に行ってみるから、二人ともちゃんと練習してね」
「はぁ~い」
「悪い、水瀬。頼んだ」
「……水瀬、さん」
「わっ!え、っと?」
「あの、アタシ渋谷摩季っていうんだけど」
「貴女が渋谷さん!?良かったー!学校来てたんだね!」
「まぁ、うん」
なんだ。やっぱ顔も知らないんじゃん。てか何この子、間近で見るとめちゃくちゃ可愛い。全然メイクした様子もないのにまつ毛長いし、目大きいし、肌もキレーだし。あながち騒いでたのは間違いじゃなかったんだ。でもすっぴんでこれとか、メイクに6時間かけてるアタシって一体…
「もしかして、話聞いてた?」
「…うん。少し」
「な、なんかお節介焼いてごめんね?つい許せなくて」
「いや、別にいいよ」
「マネージャーって思った以上に大変なんだね。たくさん飲み物作らなきゃいけないし、洗濯物も片付けるものもいっぱいあって、覚えることもかなりあるし」
「そうなんだよ。マジだるい。超疲れる」
「渋谷さんがいない日にって頼まれたけど、すぐにへこたれそうだったよ」
水瀬さんは思ったより話しやすかった。っていうか癒しオーラぱない。ふわふわしてて超女の子だし、ほっそいし、可愛いし。何?一体何食べてんの?何で出来てんの?
よく筧達誘ったなっていうくらい、ひ弱な感じなのに…
「…辞めたく、なんない?」
「どうして?」
「いや、アタシ結構入ったの後悔したけど」
「んー…私ね、最初はチアの先輩に憧れてこの学校に入ったんだけど、仮入部した時に倒れちゃって。保護者にも怒られて結局入らなかったの」
「そりゃ、辞めた方がいいでしょ…」
「でも、元々頑張ってる人を応援するのが好きで、従兄がアメフト始めてからずっと応援してて。敵になっちゃうからアメフト部だけは関わらないようにと思ってたんだけど…筧くん達が真剣に夢を追ってたから。出来る限りのことなら手伝いたいなって思ったの」
「…何。超いい子」
「いい子じゃないよ。3日もサボっちゃったし」
そういってへらっと笑うけど、アタシのためじゃん。どんだけいい子だよ。それから立ち話もなんだし、ってワックに行ってダベることにした。「余所余所しいから摩季でいいよ」っていったら「じゃあ摩季ちゃん、って呼ぶね」ってふんわり笑われて。何なのこの子ホント可愛い。
代わりに花音って呼ぶことになったけど、花音はどんな話してもニコニコ笑ってた。やっぱいい子だ。
「…ん?花音、携帯鳴ってない?」
「あっ!そういえば連絡してなかった!」
「親?怖いなら出たら?」
「いや、ちょっとごめんね?…はい。ごめん、ちょっと友達とワックで話してたら…違うよ男の人じゃないよ!え?いいよそんな、りっく……あ、切れちゃった」
「…彼氏?」
「いや、保護者っていうか…従兄っていうか」
「怒ってたの?」
「それより遅いし迎えに行く、って聞かなくて。摩季ちゃんは家近いの?」
「まぁ、商店街の方歩いて10分くらいかな」
「じゃあ、送ってくね」
「いや迎え来るならアタシは別に…」
「そんなこといわずに「花音!」
「あ、りっくん」
電話して5分くらいしか経ってないのにもう来た従兄。っていうか…えっ、イケメンなんですけど。背はあんま変わらないけど、顔整ってるし、銀髪で緑目だし。何?美少女の身内ともなれば、やっぱイケメンは確定なの?
「同じマネージャーで、お友達になった摩季ちゃんだよ。商店街の方まで一緒していい?」
「ああ。もう20時過ぎだしな」
「いや、そんないいです」
「女の子なんだから危ないだろ。花音の友達に何かあったら嫌だし」
「そうだよ摩季ちゃん。遠慮しないで」
「う、うん」
従兄くん、マジ心もイケメン。っていうかこの子がいい子だから、従兄もいい人なのか。アタシ生きるの辛いわホント。
それから近いからここでいいよ、っていうと花音は従兄くんの手を握りながら、空いた方の手を振って笑った。
「摩季ちゃんと友達になれて良かった。もし明日来れたら、学校来てね!」
…こんなこといわれて、行かないって選択肢ある?その日は珍しく早く寝て、次の日学校へ行った。一応来たよって花音にメールしたら『一緒にお昼ごはん食べない?』って可愛い絵文字付きで返信が来た。マジ女子力高すぎて泣けてくる。
ご飯を食べた後、放課後に先輩達に謝らせるから一緒に部室行こうっていわれて、正直複雑だったけど、花音がそういうから渋々向かった。そして中に入ってすぐ、例の先輩らが正座させられていた。
「渋谷。その、言い過ぎた。悪かった」
「お前の大切さが…マネージャーがどれだけ大変かよ~~くわかった」
「…何この異臭。汗クサ」
「洗濯物が溜まっちゃってるんだね」
「水瀬もいい加減帰ってきてくれ頼むぅうう!!」
「俺達反省した!すっげー反省してる!!」
「…二度目はないと思ってくださいね。先輩」
「「は、はい…!」」
普段怒らなさそうな子に限って怒ると怖いっていうのは、マジだった。…アタシも気をつけよう。
それから花音と二人で洗濯と掃除を始めた。どうしたら3、4日でこんな汚くなるわけ!?溜息を付きながらだるいだるい言ってる間、花音は掃除と片付けに励んでいた。ホント、筧と並ぶ真面目さだわ。
「ンッハー!!花音ちゃんおかえりーー!!」
「きゃあ!?」
「摩季ちゃんもおかえり!!」
「ついでかアタシは」
「二人とも、帰ってきてくれてありがとな」
「おおおお!!すごく綺麗になってる!!」
「やはり、マネージャーは必要不可欠だね」
それからデカすぎる一年がわいわいやってきて、特に水町はわかりやすいくらい花音に構ってた。そっか、好きなんだ。まぁ、花音は可愛いもんね。大平・大西も結構好意抱いてるっぽいし、筧は…どうだろ?ポーカーフェイス過ぎてわかんないけど、花音は危なっかしいから、気にかけてるのは確かかな。
「じゃあ摩季ちゃん&花音ちゃんおかえり会を始めまーす!」
「えー折角綺麗にしたのに」
「ホント水町は空気読めないわー」
「ンハッ!知ってまーす!」
「ふふ、知ってたんだ」
「花音ちゃん何気に酷い!」
…なんだろ。この子が増えたからかな。周りも明るく楽しくなった気がする。確かに花音がいるからアタシも笑えてる気がするし、こうしてここにいるのも花音のお蔭だ。
「…出来るだけ、午後から来ようかな」
「え?ホント?」
「花音を見守りつつお茶会してあげる」
「ありがとう。楽しみにしてるね!」
ドリンク作るの上手いし、料理も上手いし、掃除もテキパキ。勉強出来るしいい子だし完璧超人。でもなんか頑張りすぎて心配だし、花音は危なっかしいから、アタシが見ててあげないとね。
それにこんなにダメなアタシのこと庇ってくれて、友達だっていってくれて、そんな花音のためにアタシも精一杯頑張ってみるよ。恥ずかしくて口には出せないけど…友達になってくれてありがとね。
「花音~土曜日って部活休みじゃん?一緒に遊びに行こうよ」
「え?うん。何処行こっか」
「まずは買い物してーそっからね~…」
「「「「(羨ましい…)」」」」
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