27.天才の支え
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「健悟くーん!」
「…!花音ちゃん!」
「ごめんね。ちょっと早く来たつもりだったんだけど」
「大丈夫!俺も今来たとこだから!」
「その割に、頭にたくさん葉っぱが乗ってるような…」
「き、気のせいじゃね!?」
どーも俺です!水町健悟です!一応彼女は2人いたことあるけど何故か自然消滅したし、その子らよりずーーーっと大好きな女の子と今日は初めてのデート!…じゃなくてお出掛け!昨日は全然寝れなくて、結局約束の2時間前から待ってた。可愛い私服で来てくれると、マジでデートみたいで嬉しい。楽しみにしてた甲斐があった!
「まず何処に行っ、で!!」
「もう、前見ないと当たっちゃうよ」
「てて、つい…」
「よくぶつけるよね。駿くんはちゃんと見てるみたいだけど」
浮かれすぎたのか、ついつい看板に頭ぶつけちまった。でも、なんでそこで筧が出てくんの!?折角花音ちゃんと二人きりなのに!ぶーっと膨れ顔で見つめても、花音ちゃんは不思議そうに小首を傾げるだけだった。いいけど!可愛いから許すけど!
「お買い物したいなって思ったんだけど、オススメある?」
「ん~…女の子の店とかわかんねぇかも」
「あ、プレゼント買いたいから男の人が行くお店でいいよ」
「…ぷれぜんと?」
「もうすぐキッドさんの誕生日なの」
…うん、いいんだ。花音ちゃんは優しいから、よくプレゼントあげてるの知ってるし、俺はまだ誕生日来てないだけじゃん。無理矢理納得は出来ても、やっぱりショックだった。別に彼氏って訳じゃねぇけど、テンション下がんなぁ…
「キッドさんの部屋は寂しいから、インテリア系がいいかな」
「えっ、キッドさんの部屋行ったことあんの?」
「うん。りっくんと一緒に勉強教えてもらったりするから」
マジで!俺の部屋とか一回もないのに!そりゃ散らかってっから、案内しづらいけど…!花音ちゃんの部屋もなかったよな。玄関先くらいで別れた気がする。ってことは俺、筧どころかキッドさんにも負けてんの!?同じ学校通ってんのにヤバイじゃん!
慌てている俺とは対照に、花音ちゃんはのんびりとインテリアコーナーを見ていた。確かにそういう大人っぽいの合いそう。ふと、この子の仲良い人がみんな俺より大人だと気付かされた。でもいきなりなれ、って言われても無理だ。俺は俺なりにアピールしてかねぇと!
「確か、小さい時計しかなかった気がするから…こういうのがいいかな」
「花音ちゃーん!見てみてこれ!」
「わ、可愛い!ここが顔になってるんだ!」
「へへっ、面白いっしょ!」
「うん!」
俺は面白い雑貨を探して、いっぱい驚かせてみた。あと例のインディアンのお面みたいなのもあったから真似してみたけど、今度は失敗した。ちょっと自慢げに「もう騙されないからね!」って言う花音ちゃんはむちゃくちゃ可愛い。
ちぇーこれはもう効かねぇか。あっ、手品グッズとかこの辺なら遊べるし、喜んでくれるかも!なんて、夢中で見ているうちに…
「…あれ?」
花音ちゃんがいなくなってた。一旦持っていたものを置いて、近くの店や同じところを何度も見回した。でも、全然見つからない。な、なんで?何処行っちまったんだよ!焦っていくうちに、嫌な予感がしてきた。ここまで探していないってことは、帰っちゃったのか。
俺が買い物の邪魔してたから?俺に愛想尽かしたから?俺のこと、嫌いになったから…?
「お前はおかしいよ」
「はっきりいって、ついていけねぇ…」
なんで今…昔のこと思い出すんだよ。花音ちゃんはそんなことしない。俺のこと、見捨てたりしない。嫌いになったりしない。しない。しない。しない、で…!
バカな俺はパニックを起こしそうだった。君に嫌われたらと思うだけで、死にそうなほど苦しくなる。だって花音ちゃんは、俺にとって大切な…
「健悟くん!」
「っ!花音ちゃん!」
「ごめんね。遅くなっ、きゃあ!?」
「花音ちゃん…花音ちゃん…っ」
人目も気にせず、姿を見つけて真っ先に抱き締めた。やっぱすっげーちっせぇ。いい匂いするし、温かい。安心しきってる間にぽかぽか叩かれて、渋々離すと耳まで真っ赤になってた。あ、ヤバイ。超怒ってる。
「もー!お店の前で何するの!」
「だって、花音ちゃんどっか行っちまうし…」
「迷子の子を預けてくるねって、さっき声掛けたのに」
「…マジ?」
「マジです。戻ったらさっきのお店にいなかったから、ビックリしたよ」
彼女は目の前にいるのに、まだ胸の奥がモヤモヤした。本当に、いなくならないよな。俺のこと嫌いになってないよな。俺の不安げな様子に気付いたのか、花音ちゃんは一旦ベンチに座るように促してくれた。
「大丈夫だよ」
「…何、が?」
「ちゃんと傍にいるからね」
そういいながら、俺のボサボサの頭を撫でてくれた。何も言ってないのに、なんでわかるんだろう。嬉しくて嬉しくて、心臓がぎゅーっと苦しくなった。そんな気持ちに耐え切れず、思わず彼女の小さな手を握り締めながら、ポツポツと自分の気持ちを語った。
「嫌われたかと、思った…」
「…どうして?」
「買い物の邪魔してたし。うざかったのかなって」
「そんなこと思わないよ」
「でも俺全部口に出るし、すぐ騙されるしバカだし、脱ぎ癖も抱き着き癖も治らねーし!」
「ふふ、自覚あったんだ」
「散々怒られてりゃわかるって!やっぱ俺おかし「笑わないよ。おかしくなんかない。頑張りすぎちゃうくらい真っすぐな貴方は素敵だと思う」
「…っ」
「覚えてるかな?その気持ちは今も変わらないよ」
忘れる訳ない。その言葉がずっと俺を支えてくれた。あの時みたいに、苦しかったモヤモヤを一気に晴らしてくれた。水泳が好きだった。みんなと頑張りたかった。その気持ちまで全部汲み取って、君は俺を励ましてくれた。
「…花音ちゃんは、すげぇよな。魔法使いなんじゃねぇの?」
「え?」
「いつも温かい気持ちにしてくれる。花音ちゃんと友達になって良かった」
「っ、私も…ありがとう。後押しして、連れ出してくれて」
「だってさーすぐ我慢するし、オニーサンとか筧が止めるから、行きたいとこいけないっしょ?」
「そういうことも、あるかな」
「だから、俺が連れてってあげる!どっか行きたいとこあったら言って!」
そういうと、かなり驚いた顔をされた。最初の頃、色んな噂のせいで辛い顔ばっかしてたけど、俺が声を掛けると無理してでも笑ってくれた。なんか出来ないかなって、アメフト部に入った記念に屋上まで連れてったら、キラキラした顔で星空を眺めていた。ありがとう、って笑った顔が忘れられなかった。
あ、俺…この子のこと好きだなって。もっとその本当の笑顔を見せてくれればいいのに、って思ったんだ。筧にいいとこ全部取られちゃったけどさ。俺にとっても大事な友達だから、どうこう言うつもりはねぇけど。
「ふふ、健悟くんのほうが魔法使いみたいだよ。あ、ピーターパンかな?」
「ンハッ!マジで!?じゃあ俺、花音ちゃんのピーターパンになる!」
「私のというか、みんなのというか…本当になれちゃいそうだね」
「ARE!?冗談だったの!?」
「半分くらいかな」
「半分も!?」
騙されやすい俺は、すぐに信じ込んでしまう。でも、いいんだ。花音ちゃんが楽しそうだから、なんでも許す。もっと大きな嘘付いてる気がするけど、何隠してんの?なんて聞けないから騙されたままにしとく。傷つけることはしたくねぇもん。
「でっ!何処行きたいの!?」
「んー…じゃあ、公園?」
「んなのいつでも行けんじゃん!」
「そろそろお昼だから。秋とはいえ、早めに食べないと腐っちゃうし…」
「も、もしかして弁当作ってきてくれたのっ!?」
「大したものじゃないんだけどね」
「うおっしゃー!!やったー!!」
謙虚な割にすっげー美味そうで、勢いよく食べて喉に詰まらせた。花音ちゃんが渡してくれてたお茶を一気に飲み干すと、なんか苦笑いされちゃった。でもでも!こんな美味いの全部食っていいとか夢みたいだ!いつものお菓子も好きだけど、この弁当なら毎日食いたい!
「ごっそーさんでした!!みんな美味しかったです!!」
「ふふ、良かった。お粗末様でした」
「あれ?そういや花音ちゃん食ってた?」
「うん。食べてたよ」
「…じーーっ」
「ち、近い!近いってば!」
絶対食ってない!だってほとんど俺が食ってたもん!ってことで、弁当のお礼にドーナツを奢ってあげることにした。でも、なんで1個で足りんの?普通5個くらい食わない??
「そんなにたくさん食べられないよ。これで十分だから、ありがとう」
「でもさー!もっと食べないと大きくなんねぇよ!」
「…微妙に説得力あるなぁ」
そう言いつつちまちま食う花音ちゃんは、ハムスターみたいで可愛かった。勝手に写メったら怒られたけど。なんでダメなんだろ?記念が好きなら、俺とのデート記念ってことで許してくれたっていいのに。あれ?それだと俺が写ってねぇや。後で一緒に撮れないかな。
「ご馳走様でした。私もう買い物済んだから、健悟くんに合わせるよ」
「ンハッ!マジで!?じゃあねーアイス食お!」
「うん。イチゴとチョコにしようかな」
「んじゃ俺トリプルー!」
そっから花音ちゃんと一緒にアイス食べて、人が増えてきたから手を繋いで歩いた。この前よりも、更にカップルっぽい!なんて浮かれていると、花音ちゃんはじっと一つの店を凝視していた。視線の先には、いかにも好きそうなマリンテイストなショップがあった。
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