21.再会と温もり
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りっくんに散々怒られた後、夏休みの時のようにいなかった間の話をお互いにし合った。私は主にお父さんのことだけど、パンサーくん達のことは内緒にしておいた。いつも男の人といるだけで怒られるから、おばあちゃんがいたとはいえ、お泊りしたことがバレたらもっと怒られるに決まってる。
「え!?セナくんに会ったの!?」
「そう、泥門にセナがいたんだよ。あとまも姉も」
「まもりお姉ちゃんも!?」
りっくん側の話には、驚かされてばかりだった。やっぱりこの前見かけたのはセナくんだったんだ。でも、パンサーくんがいってたSENAっていう人はアイシールド21で…そうそう同じ名前の人がいるなんてことないよね。もしかしてセナくんが、アイシールド21ってこと?
「それで、明日泥門の体育祭に偵察行くんだけど、花音も来るか?」
「明日って、そっか。体育の日でお休みだね」
「ああ。キッドさん達も心配してたし、俺も…」
「…うん。大丈夫そうだったら行く。私もりっくんの傍にいたいよ」
「…!花音っ、おかえり!」
「ふふ、ただいま。もう5回目だよー」
「いいだろ抱き締めさせろ!俺はずっと寝坊して、怒られてばっかだったんだぞ!」
「もー明日からちゃんと起こしてあげるからね」
珍しくりっくんからたくさん抱き締めてくれて嬉しかった。合宿の時と違って急な話だったし、すごく心配してくれてたもんね。私も不安だったし、寂しかったよ…
そんな感じでしばらく抱き着いていたものの、やっぱり胸の奥がもやもやして、考えていたことを口に出すことにした。
「あの、ね」
「ん?」
「な、情けないぞ!って怒ってくれる?」
「は?さっき散々言っただろ?」
「じゃなくて、えーと…夢を諦めそうになって、たくさん迷惑を掛けた私に対してです!」
さっき駿くんの前で泣いた上、愚痴って励ましてもらったというかなり情けない状態なんだ。いつもみたいにビシッと叱ってもらって、気持ちを切り替えたい。
ぎゅっと目を瞑りながら構えていると、りっくんは何故か怒る前にデコピンしてきた。うう、痛い。恐る恐る目を開けると、彼は少し呆れた顔で私を見つめていた。
「花音、情けないぞ」
「うん…ひゃっ!冷たっ!」
「折角の可愛い顔が台無しだ。ちゃんと目冷やして寝ろよ」
「え、と…?」
「頑張ってるのは、俺が一番見てきたんだ。だから大丈夫。俺はどんなことになっても、応援するよ」
「っ、り、陸ぅうう…!!」
「あーもう泣くな!折角泣き止んだのに、情けないぞ!」
「知ってるもん…私は情けないよぉっ」
りっくんは、留学したいってことしか知らない。そのためだけに頑張ってると思ってる。でも、辛さや弱さには敏感で、いつもこうして温かい言葉をくれる。優しいお兄ちゃんや友達を持って、私は本当に幸せ者だと思う。
良かった。やっぱり、日本に帰ってきて良かった…
「いっぱい心配とか、迷惑掛けてごめんね」
「気にすんな。俺はお前の兄貴なんだから、こういう時は頼っていいんだ。それこそ、普通は筧より俺だよな!!なぁ!!」
「う、ううう…でも、駿くんも私と一緒だったから、元気貰ったし…」
「…あいつらだって色々あったし、筧に言っただけでも良しとするか。最悪、俺が何言っても絶対弱音吐かないからな」
「ごめん、なさい」
「謝るくらいなら、もっと俺に甘えろ」
もう十分なくらい甘えてるって、気付いてないのかな。情けないぞって怒る以上に、心配して励ましてくれる。ぎゅって抱き着くたびに、たくさん元気を貰ってる。りっくんがいたから、どんなに辛いことも耐えられたんだよ。寂しくなかったんだよ。
…なんて言ったら離してくれないだろうな。言うタイミングは考えよう。
「ほら。泣いてないで、いい加減寝るぞ」
「ん…ぐすっ」
「本当に花音は泣き虫だな。無理に理由は聞かないけど、辛い中よく頑張った。偉いぞ」
「う、うえええん!陸ーーっ!」
「なんでまた泣くんだ!どうしたらいいんだ俺ー!」
りっくんの言葉には、散々泣かされた。あれだけ泣いたのに涙が止まらない。わんわん泣いてしまった私を見て、りっくんはかなり戸惑っていた。結局何も言わない方がいいと考えたのか、最終的には無言で手を握りながら頭を撫でてくれた。それはそれで落ち着いて、だんだん眠たくなってきた。
「おやすみ、花音。明日はセナやまも姉に会うんだって、楽しいこと考えるんだ」
「う、ん」
「それでも怖い夢見たら、おいで。俺が守ってやる」
「ありがと…りく」
「…もう涙が出ないように、おまじないしとくよ」
怖い夢を見たとき、寂しいときや辛いとき、毎回こうして額にキスしてくれた。冷えたタオルが乗ってるから、顔は見えないけど…いつもみたいに優しい顔をしてると思う。そんな安心感のお蔭か、すぐに眠りに付けた。
―…その間、懐かしい夢を見た。りっくんとセナくんが走りの練習をしていて、それをまもりお姉ちゃんと眺めていた。一緒にお菓子を作ると、二人とも美味しそうに食べてくれて。それからかな。お菓子を作るのが好きになったのは。
「僕、花音ちゃんのお菓子好きだよ。すごくおいしい」
「ホント?ありがとう、セナくん!また作ってくるね!」
「う、うん!こちらこそ、ありがとう!」
「セナ!俺はお前の兄貴は名乗っても、義兄にはならないからな!」
「ええええ!?なんでそんな話になってるの!!?」
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