16.夏祭り
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「はい!完璧!」
「ありがとうございます。わー浴衣久しぶりです」
「ほほほ…花音ちゃんは可愛いから、着付け甲斐があったわ~彼氏さんによろしくねぇ」
「お、お友達と行くんです!」
引っ越しする時に浴衣も持ってきていたから、それを大家さんに着付けてもらった。空き箱や使わなかった飾りを片づけていると、その途中でインターホンが鳴り、大家さんが代わりに出てくれた。でも、その直後に玄関先から悲鳴に似た声が響いた。な、なに!?不審な人でもいたの!?
「やだイケメン!はっ、花音ちゃんの彼氏!?そうね!わかったわ!おばちゃんわかっちゃったわ!」
「お、おい花音!誰だこの人!」
「大家さんだけど。あ、ホントだー!駿くん浴衣似合うね!」
「…っ!?」
背が高いし、元々切れ長でカッコいいから、シンプルな浴衣がよく似合ってる。少しだけ着流してるのがオシャレな感じ。モデルさんみたいだ。そんな駿くんはというと、何故か真っ赤になって私を見つめているけど。
「か、かかか…っ」
「蚊?あ、スプレー持ってかなきゃ」
「むふふ、可愛いわよねぇ。ちゃ~んと言ってあげるのよ!あとは若い子だけでどーぞ!」
「な、なんっ」
「お待たせしました。行こっか」
「あ、ああ。可愛い、んじゃないか」
「ふふ、ありがとう。浴衣可愛いよね」
「…お前がだよバカ」
でもさっきから目線を逸らされてるんだけど、なんでだろう。別に普通の浴衣だし、あとは髪をアレンジしてもらったくらいだ。よっぽど前を歩くお姉さんのほうが露出高いのに、何か変なのかな。ちゃんと鏡見てないからわからないや。
「健悟くん達とは現地集合だっ、け!?」
「ああ。こけるとは思ってたけど。ほら、手」
「あ、ありがと。久々に下駄履いたから慣れなくて」
「下駄じゃなくても、よくこけそうになってるけどな」
「それは、えっと…たまたま履き慣れない靴だったからだよ!」
「わかったわかった。そういうことにしておいてやるよ」
「ううう…」
そのまま手を引かれながら、待ち合わせ場所まで一緒に歩いた。同じように男女で浴衣着た人もいるけど、べたべたくっついてるからカップルなのかな。私と駿くんも知らない人から見たら、そう見えるのかな。
周りにチラチラ見られてる気がするけど、駿くんがカッコイイからだよね。こんなのが隣にいてごめんなさい。甘い関係とかではなく、彼曰く私の保護者らしいです。
「ンハッ!!花音ちゃんちょーかわいー!!」
「「花音(ちゃん/さん)お美しい!そして筧先生もお似合いです!」」
「おおー!ワイカー!超ワイカー!んでもって筧とカップルっぽく見えてビビったー!!」
「ちょ、筧どーいうことよ!花音独り占めとか何なの!?」
「早速こけそうだったから、エスコートしてもらってました。あ、摩季ちゃんは浴衣じゃないんだね」
「だって着るのめんどいもん~でも花音は超可愛い!超似合ってる!」
「ありがとう。摩季ちゃんも私服可愛いよ」
摩季ちゃん以外では、2m超え二人も特注なのが大変で持ってないらしい。健悟くんと小判鮫先輩は甚平だ。よく似合ってるし可愛いな。
今回は1年生メンバーだけじゃなく、小判鮫先輩が保護者として来てくれた。やっぱり先輩がいるほうがいつもより落ち着いてるような、そうでもないような…
「何して遊ぶ!?やっぱ金魚すくい!?それともなんか食う!?」
「金魚はウチだと飼えないから。食べ物だと何がいいかな?」
「綿あめ!!」
「りんご飴ですね!!」
「チョコバナナだろ!!」
「なんだこのデジャヴ…」
「俺はまぁ、後輩優先でいいよー保護者だし!うん!好きなとこ行こう!」
「あ、射的があるー」
「…若干一名は、マイペースすぎるし」
3人が揉めてる間に、射的を発見。この前キッドさんに教えてもらったから、上手に出来るか試してみたい。とりあえず、一回分のお金を払って挑戦することにした。3発、か。何を狙おうかな…あ、いい的があった。
「ショット・ガン!」
「えええええ一発!?ゴイスー!!マジでゴイスー!!」
「ショットガンは戦術だろ。で、なんでペンギンにした」
「なんとなく!」
それから、同じく海の仲間シリーズでサメとカメもゲットした。よし、お土産が確保出来た。また先輩がいいって言ってくれたら、部室に置かせてもらおうかな。TVの横とかにあったら可愛いし。
「はい!もう部室にはサメがいるから、これは小判鮫先輩にあげますね!」
「え、マジで!?おおー!ありがとね!」
「今日付き添ってくれたお礼です。あと、結局何食べるんだっけ?」
「綿あめ!!」
「りんご飴!!」
「チョコバナナ!!」
「いい加減一つにまとめろって」
「花音ー暑いし、かき氷食べない?」
「うん。そうだね」
「「「…!!!」」」
それからみんなで、かき氷を食べた。私がイチゴで、駿くんがブルーハワイ。健悟くんはレモン。大平くんがコーラで、大西くんがラムネ。小判鮫先輩がメロン。摩季ちゃんがマンゴー…とみんな見事にバラバラだった。
「へぇーマンゴー味とかあるんだ」
「んー?食べる?」
「うん。ちょっと食べたい」
「ほら、あーん」
「あーん」
「「「「「………」」」」」
「…あれ?マンゴーじゃない」
「きゃはは!そりゃそうっしょ!」
着色料とか使ってるだろうし、何処となく不思議な味がした。特に駿くんのブルーハワイとか青々しくて、一体何?何の青なの?って毎回不思議だし。あれはあれで美味しいんだけど。
「いーなぁ~俺もあーんってしたーい」
「女性ならではの特権、か」
「俺もしたい!したいが…くうう!」
「女の子達はワイカーだねぇ」
「………」
「…?みんなどうしたの?」
「花音ちゃん、スプーン貸して!俺のレモンあげる!あーん!」
「あ、あーん?」
「っ!ぼ、僕のラムネも是非!」
「おおお俺のコーラを!!」
「そ、そんなに食べられないんだけど」
何故か一回ずつあーんってされて、更にガッツポーズされた。おどおどしながら小判鮫先輩までも。駿くんは私とブルーハワイを交互に見つめてるけど…なんなんだろう。みんなで餌付け作戦?
「花音…く、食うか?」
「というか、私お腹いっぱいなんだけど…逆に食べてもらっていい?」
「は?」
「はい、あーん」
スプーンを借りて若干溶け始めたかき氷を掬って口元へ運ぶと、そのいちごシロップと同じくらい駿くんが赤くなった。後ろですごいブーイングしてるけど、駿くんは無視して食べてくれた。口を押さえながら目が泳いでるけど、大丈夫かな。イチゴ苦手だったのかな。
「なら俺だって、逆あーんが良かったー!」
「くっ、流石筧先生!美味しいとこ取りですか!尊敬はしていますが、ズルイと思いますよ!」
「まるで初々しいカップルのような!羨ましい!」
「うーん…硬派の勝利なのかね~」
「ちょっとー!ゴミ捨ててる間に何があったのよ!花音になんかしてないでしょうね!?」
「「「「「し、してない…」」」」」
「…ねえ、花音。なんかしたー?」
「へ?一口もらったり、あげたりしただけだよ」
「だーかーら~そーいうのは男にするなってのよ、この天然娘ーー!!」
「い、いひゃいお、まひひゃん…!」
戻ってきた摩季ちゃんに、頬を引っ張られながら怒られた。だ、だって…嫌ですなんて言えないし!友達だからいいんじゃないの!人目も気にせずお説教されて、私のテンションは50下がりました。うう…ほっぺ痛い…
「えーと、大丈夫?平気?」
「はい。大丈夫れふ…」
「ね!ね!花音ちゃん、べーってして!」
「…?べー」
「ンハッ!超真っ赤ー!俺はねーんべっ、黄色~!」
「ホントだーってことは…一番変になってるのは、小判鮫先輩と駿くん!」
「お、俺?べー…緑んなってる?」
「おおー!超緑ッス!」
「…俺はやらねぇからな」
「駿くんもべーってしてよー!」
「ノリ悪ィーぞ筧~!」
「絶対やらん!」
その後はわたがしや焼きそば、たこ焼きを食べたりして、みんなで夏祭りを楽しんだ。190cm超えが4人もいるから、見失わなくて助かる。でも、さっきから足が痛いというか、そろそろ切れそうな…
「っ、やっぱり…!」
鼻緒が切れてしまったらしい。ど、どうしよう。みんな先に進んでしまって、声も届かない。とりあえず邪魔にならないようにお店の影まで移動したけど、これってどう直したらいいんだろう。
「キミ可愛いね~一人?」
「え?」
「もしかしてはぐれちゃったとかー?んじゃ、俺らと遊ぼうよ」
典型的なナンパ、ってやつだろうか。しかも柄が悪そうな2人組。これは非常にマズイ。浴衣だから動きにくいし、足袋のまま走っても限界があるだろうし…
「あの、大丈夫です。お気になさらず」
「いやいや、遊ぼうっていってるだけじゃーん」
「そーだよ、怖がらなくても何もしないって」
じゃあ、なんでそんなに迫ってくるんだろう。いきなり肩まで抱いて、言ってることとやってることが違うと思う。こういう時はりっくんがいつも助けてくれた。「俺の彼女なんだけど」って嘘ついて、一緒に逃げてくれた。でも今は、その頼りになるお兄ちゃんはいない。
…どう、しよう。あんまり知らない人に、これ以上触られたくない。
「アンタら何してんだい」
「げっ!露峰さん!?」
「合宿サボってナンパなんて、いい度胸だね」
「す、すみません!今すぐ戻ります!!」
「…後で締め上げるから覚悟しな」
「「は、はい!!」」
その人達の知り合いらしい、綺麗なお姉さんが助けてくれた。露峰さん…っていうのかな。なんで竹刀を持ってるんだろう。不良の姐御って感じだけど、剣道部だったりするのかな。
「ウチのが悪かったね。あとで締めとくから、許してくれるかい」
「いえ、あの」
「ん?」
「助けていただいてありがとうございます。でも、タバコは良くないですよ。女の人は特に」
すごく気になったのが、タバコを吸っていること。未成年のうちに慣れてしまうのは良くない。特に女性は今後妊娠する可能性もあるし、もっと自分の体を大事にしないと!
でも、あまりに正直に注意したせいか睨まれてしまった。ご、ごめんなさい!怒らないでください!
「ああ、わかってはいるんだけど。クセなんだよ」
「そうなんですか。でも、気を付けてくださいね」
「…アンタはなんか、真っ白な子だね。少し羨ましいよ」
「いえ、そんな…いたっ」
「なんだ。鼻緒が切れてるから歩けないのか。ちょっと待ってな」
そういってポケットからスカーフを取り出して、足に巻いてくれた。多分制服のスカーフだと思うんだけど、いいのかな。そんな風に巻いたら汚れちゃうのに。
「これで歩けるだろ」
「ごめんなさい!洗ってお返します!」
「いいよ。どうせスカーフは似合わなくて付けてないし。ウチのが迷惑掛けたお詫びだと思って」
「でも「素直にお礼言って戻らないと、一発お見舞するよ」
「…ありがとうございます。もしまたお会いする機会があったら、お礼します」
「はぁ。律儀な子だね」
もう一度頭を下げてお礼を言ってから、屋台のある通りへ戻った。強面に見えて優しい…って誰かに似てると思ったら、駿くんだった。露峰さんも優しい人で良かった。
1/2ページ