INTRODUCTION
〜はじめに〜
AlchymiAは、喫茶店アルキュミアをとりまく人々の緩やかな生活を垣間見ることができるサイトです。
都心から少し離れた小さな街で、閑古鳥の鳴く喫茶店を営むマスターと、同居している住人、冷やかし……特にこれといって事件が起こるわけではありません、彼らは今日も慎ましやかに生活しています。
__この世界には、隠された姿が存在する。
血脈に記された素質を持つ人間だけが、裏側へと辿り着くことができるという。機を伺うだけの者、富と権力を持ってして経済界へ介入する者、口を閉ざした者__思惑と因縁、愛憎が交差する。月の裏側とは、そのような世界だ。
沈んだ楽園、失われた技術、残り香__
「かつての僕を取り戻すことは、真実必要な事だろうか。知らないことを……覚えていないのに、思い出すことを頭が拒絶するんだ。まるで、空っぽの引き出しに鍵がかかっているみたいに」
「愛しているんだ、今でも。心を押し潰される程に。生きている限り君の事が頭から離れないんだ。どうか、私を赦してくれ__エカテリーナ。」
「あなたが憎いのに! 殺したい程嫌っているのに! 目を閉じるといつも頭痛がする。乖離していく自分が怖くて仕方ないのに……それでも、それでもわたしが殺さないのはどうして! わたしが、この日々を、心地よいと感じるのは、どうして……」
「還りたい。身体の全部が溶けてしまって、なくなりたい。私が望むのは、たったそれだけ__」
STORY
アルキュミアの軌跡
ウェステリアから故郷へと戻った棗は、念願であった喫茶店の経営を始める事にした。曰く付きと名高い物件を購入し、飲食店に必要な許可を取り、明日からの開店に備え掃除をしていた所、扉の窓から必死に覗き見る少女を見つける。
「お嬢さん、開店は明日からなんだ。ごめんね」
「ごめんなさい、つい気になっちゃって。ここって、何のお店なの?」
ある日、砂糖がなくなりかけている事に気づいた棗は、買い物に出かける。棚に残り一つとなった砂糖に手を伸ばすと、他人の手とぶつかってしまった。振り向くとそれはよく見知った__毎朝鏡で見る自分によく似た人間が、目の前に立っていた。
「……な、」
「なんということだ……」
ミスティは過去の自分が起こした失敗そのものであり、自身の生き写しのような存在だという。ウェステリアに来るまでの記憶の大部分を失っていた棗は、ホテル暮らしのユイをひとまず住まわせる事にするが……
錬金術師ミスティの軌跡
ある秋の日、研究所での一仕事を終えたミスティは、少しの休息をとる事にした。生まれの地へ帰り、できれば昔の家を買い戻し、眠る__人工の身体と魂を休眠状態に陥らせること__等、兎に角、何もかもを後回しにして眠りたかった。“おまけ”も付いてきたが、さしたる問題はない。
しかし、道中立ち寄ったビジネスホテルで、偶然主人のいない残り香を発見する。それが“いりこさん”こと“イリス・コンフェット・サンデー(自称)”だ。
「お、お前、私を捕まえる気か!?」
「私は何も言っていない!」
残り香いりこさんの片割れを見つけてやるという約束をしてしまった彼は、その晩一通の手紙を受け取る。差出人欄に“魔術師 クラウス・ヴァン・マーネン”と書かれたその封筒は、見覚えのある、母校からのものだった。
「トリスメギストスの客員教授として、どうぞ生徒達に貴方様の知恵をご教授ください。御礼として、貴方様の望む物を御用意しております。どうか、良い返事をお待ちしています」
故郷へ帰ってきたはいいものの、屋敷には住んでいる人がいるという。であれば、買い戻すことも難しい。どうしたものか……宿泊地を探しつつ、連れであるイルとイラは観光を楽しんでいた。雑貨屋の外で二人の用が済むのを待っていると、ひとりの少女がこちらに向かって歩いてくるのが見えた。
見間違いじゃない。あれほど会いたかったエカテリーナが、目の前に現れたのだ。
「エーカ……?」
「……は?」
エカテリーナ。錬金術師■■■■がミスティとして人工の身体を手にした要因の一つである。彼が肌身離さず持ち歩いているモーニングブローチには、彼女が記録されている。
エカテリーナにそっくりの彼女は、人違いだと言い店の中に逃げ込んで行った。その時から、ミスティの脳内は彼女で一杯になってしまった。
その一週間後、二人はアルキュミアで再会することになる。
WORLD
“大都会”
都心部「ルミノックス」には近代的な建物が多く立ち並ぶ。タワーマンション「ツリーオブライフ」を始め、富裕層の箱庭である。
“月の裏側”
“錬金術師”
“前時代の残滓”
前時代技術の残滓__それらは残り香と呼ばれる。処分したいなら、白い海に投げ捨てることだ。
大企業と魔術師
再開発地区G
AlchymiAは、喫茶店アルキュミアをとりまく人々の緩やかな生活を垣間見ることができるサイトです。
都心から少し離れた小さな街で、閑古鳥の鳴く喫茶店を営むマスターと、同居している住人、冷やかし……特にこれといって事件が起こるわけではありません、彼らは今日も慎ましやかに生活しています。
__この世界には、隠された姿が存在する。
血脈に記された素質を持つ人間だけが、裏側へと辿り着くことができるという。機を伺うだけの者、富と権力を持ってして経済界へ介入する者、口を閉ざした者__思惑と因縁、愛憎が交差する。月の裏側とは、そのような世界だ。
沈んだ楽園、失われた技術、残り香__
「かつての僕を取り戻すことは、真実必要な事だろうか。知らないことを……覚えていないのに、思い出すことを頭が拒絶するんだ。まるで、空っぽの引き出しに鍵がかかっているみたいに」
「愛しているんだ、今でも。心を押し潰される程に。生きている限り君の事が頭から離れないんだ。どうか、私を赦してくれ__エカテリーナ。」
「あなたが憎いのに! 殺したい程嫌っているのに! 目を閉じるといつも頭痛がする。乖離していく自分が怖くて仕方ないのに……それでも、それでもわたしが殺さないのはどうして! わたしが、この日々を、心地よいと感じるのは、どうして……」
「還りたい。身体の全部が溶けてしまって、なくなりたい。私が望むのは、たったそれだけ__」
STORY
アルキュミアの軌跡
ウェステリアから故郷へと戻った棗は、念願であった喫茶店の経営を始める事にした。曰く付きと名高い物件を購入し、飲食店に必要な許可を取り、明日からの開店に備え掃除をしていた所、扉の窓から必死に覗き見る少女を見つける。
「お嬢さん、開店は明日からなんだ。ごめんね」
「ごめんなさい、つい気になっちゃって。ここって、何のお店なの?」
ある日、砂糖がなくなりかけている事に気づいた棗は、買い物に出かける。棚に残り一つとなった砂糖に手を伸ばすと、他人の手とぶつかってしまった。振り向くとそれはよく見知った__毎朝鏡で見る自分によく似た人間が、目の前に立っていた。
「……な、」
「なんということだ……」
ミスティは過去の自分が起こした失敗そのものであり、自身の生き写しのような存在だという。ウェステリアに来るまでの記憶の大部分を失っていた棗は、ホテル暮らしのユイをひとまず住まわせる事にするが……
錬金術師ミスティの軌跡
ある秋の日、研究所での一仕事を終えたミスティは、少しの休息をとる事にした。生まれの地へ帰り、できれば昔の家を買い戻し、眠る__人工の身体と魂を休眠状態に陥らせること__等、兎に角、何もかもを後回しにして眠りたかった。“おまけ”も付いてきたが、さしたる問題はない。
しかし、道中立ち寄ったビジネスホテルで、偶然主人のいない残り香を発見する。それが“いりこさん”こと“イリス・コンフェット・サンデー(自称)”だ。
「お、お前、私を捕まえる気か!?」
「私は何も言っていない!」
残り香いりこさんの片割れを見つけてやるという約束をしてしまった彼は、その晩一通の手紙を受け取る。差出人欄に“魔術師 クラウス・ヴァン・マーネン”と書かれたその封筒は、見覚えのある、母校からのものだった。
「トリスメギストスの客員教授として、どうぞ生徒達に貴方様の知恵をご教授ください。御礼として、貴方様の望む物を御用意しております。どうか、良い返事をお待ちしています」
故郷へ帰ってきたはいいものの、屋敷には住んでいる人がいるという。であれば、買い戻すことも難しい。どうしたものか……宿泊地を探しつつ、連れであるイルとイラは観光を楽しんでいた。雑貨屋の外で二人の用が済むのを待っていると、ひとりの少女がこちらに向かって歩いてくるのが見えた。
見間違いじゃない。あれほど会いたかったエカテリーナが、目の前に現れたのだ。
「エーカ……?」
「……は?」
エカテリーナ。錬金術師■■■■がミスティとして人工の身体を手にした要因の一つである。彼が肌身離さず持ち歩いているモーニングブローチには、彼女が記録されている。
エカテリーナにそっくりの彼女は、人違いだと言い店の中に逃げ込んで行った。その時から、ミスティの脳内は彼女で一杯になってしまった。
その一週間後、二人はアルキュミアで再会することになる。
WORLD
“大都会”
都心部「ルミノックス」には近代的な建物が多く立ち並ぶ。タワーマンション「ツリーオブライフ」を始め、富裕層の箱庭である。
“月の裏側”
“錬金術師”
“前時代の残滓”
前時代技術の残滓__それらは残り香と呼ばれる。処分したいなら、白い海に投げ捨てることだ。
大企業と魔術師
再開発地区G