巡り巡ってスタート地点
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
舞台裏で聞く歓声ほど
役者の心を揺さぶるものは無い。
それは体内に燻る焦りを、高揚感を、緊張を、
最高潮に昂らせるからだ。
それは、濁流と言っても差し支えない程の勢い
役者の中には飲み込まれ、
思うように身動きが取れなくなる者もいる。
オレのように場数を踏めば
その流れをいなす事も、
流れに乗ることもできるが
………今回ばかりは正直お手上げだ。
「はぁ…緊張する…」
気休め程度の深呼吸をし、ジタンは舞台袖まで歩み寄る
チラリ、とアレクサンドリア城内のロイヤルシートを見上げると
そこでは柔く微笑むガーネットが観劇していた
時折、表情を曇らせながら観る彼女の表情は
出逢ったあの日を思い出させる
ーいますぐ、私を
誘拐してくださらないかしら?
(…あの日から、すべてが始まったんだ)
最初は彼女をリンドブルムへ誘拐するだけでよかった
出逢った仲間たちと旅をする中で
それぞれの抱える運命に立ち向かい、
最後には世界の命運を賭けて戦った。
(最後に会ったのはクジャを助ける為、
飛空艇でダガーや仲間たちと別れた時
泣かないよう堪えながら、
それでも凛とした表情で
見送ってくれたことを今でも覚えているよ)
無事、イーファの樹の暴走から脱出し暫くした後
彼女に報せは出さず、
隠れるようにタンタラスの元へ帰った。
その事をタンタラスの面々には叱られたが、
オレが無事だと分かれば
一国の女王から1人の女性に戻ってしまうだろう。
オレにとっては願ってもない幸福なのだが、
様々な争いで疲弊したアレクサンドリアには
"女王のガーネット"が必要だ。
…………と、
まあ、そんな感じに
タンタラスの面々に打ち明けたのがまずかった。
ルビィを筆頭にブランク、マーカスらが
「この腹立つ自惚れ格好つけ野郎にピッタリの再会を」と愛情と悪知恵が捻り出された結果、
ガーネット姫の誕生日に演じる劇への出演が
即日決まり、開演まで日がない中、
鬼のタンタラス流稽古強化週間が始まった
(身内ながら、稽古となると本当に容赦ないぜ…ま、それもアイツららしいんだけど)
タンタラスの仲間たちらしい激励に
つい憎まれ口を叩きつつも口元は綻んだ
回想にふけっていると
ひときわ高い歓声が聞こえた。
恐らくはルビィ演じるコーネリアの腹部をブランクが殴り気絶させたシーンだろう。
さあ、ここからはオレの舞台だ。
演じるのは、コーネリアと駆け落ちを決意し
明朝、港で彼女を待つ主人公のマーカス。
だが、陰謀によりコーネリアは現れない。
愛を誓った彼女が必ず来ると信じて
東の空が明るくなるまで待ち続けるシーンだ。
フードを深く被り、
暗転の間にスポットライトの下へ歩む。
(……緊張で喉が萎縮しそうだ)
再会を、喜んでくれるだろうか
今までどんな風に声を掛けていただろうか
また、笑ってくれるだろうか
…
………
ーーージタン、だいじょうぶだよーー
「………ビビ?」
風の中、聞こえた小さな囁き
空へ記憶を預けにいった彼の声に背中を押され
つい目頭が熱くなる
瞬間、
スポットライトが点灯し
全ての視線が集まったのをフード越しに肌で感じた
台詞を口にしながら、彼女に届けと想いを込める
これは劇中の台詞だがオレ自身の強い想いでもある
「信じるんだ!」
「信じれば、願いは必ずかなう!」
「太陽が祝福してくれぬのなら
ふたつの月に語りかけよう!」
「おお、月の光よ、
どうか私の願いを届けてくれ!」
「会わせてくれ、愛しのダガーに!!」
「巡り巡ってスタート地点」
ここから新しい物語が始まる
FF9 20周年おめでとう
2020.7/7
2025.1/15ガーネット誕生日に再掲
いつまでも色褪せない物語をありがとう
役者の心を揺さぶるものは無い。
それは体内に燻る焦りを、高揚感を、緊張を、
最高潮に昂らせるからだ。
それは、濁流と言っても差し支えない程の勢い
役者の中には飲み込まれ、
思うように身動きが取れなくなる者もいる。
オレのように場数を踏めば
その流れをいなす事も、
流れに乗ることもできるが
………今回ばかりは正直お手上げだ。
「はぁ…緊張する…」
気休め程度の深呼吸をし、ジタンは舞台袖まで歩み寄る
チラリ、とアレクサンドリア城内のロイヤルシートを見上げると
そこでは柔く微笑むガーネットが観劇していた
時折、表情を曇らせながら観る彼女の表情は
出逢ったあの日を思い出させる
ーいますぐ、私を
誘拐してくださらないかしら?
(…あの日から、すべてが始まったんだ)
最初は彼女をリンドブルムへ誘拐するだけでよかった
出逢った仲間たちと旅をする中で
それぞれの抱える運命に立ち向かい、
最後には世界の命運を賭けて戦った。
(最後に会ったのはクジャを助ける為、
飛空艇でダガーや仲間たちと別れた時
泣かないよう堪えながら、
それでも凛とした表情で
見送ってくれたことを今でも覚えているよ)
無事、イーファの樹の暴走から脱出し暫くした後
彼女に報せは出さず、
隠れるようにタンタラスの元へ帰った。
その事をタンタラスの面々には叱られたが、
オレが無事だと分かれば
一国の女王から1人の女性に戻ってしまうだろう。
オレにとっては願ってもない幸福なのだが、
様々な争いで疲弊したアレクサンドリアには
"女王のガーネット"が必要だ。
…………と、
まあ、そんな感じに
タンタラスの面々に打ち明けたのがまずかった。
ルビィを筆頭にブランク、マーカスらが
「この腹立つ自惚れ格好つけ野郎にピッタリの再会を」と愛情と悪知恵が捻り出された結果、
ガーネット姫の誕生日に演じる劇への出演が
即日決まり、開演まで日がない中、
鬼のタンタラス流稽古強化週間が始まった
(身内ながら、稽古となると本当に容赦ないぜ…ま、それもアイツららしいんだけど)
タンタラスの仲間たちらしい激励に
つい憎まれ口を叩きつつも口元は綻んだ
回想にふけっていると
ひときわ高い歓声が聞こえた。
恐らくはルビィ演じるコーネリアの腹部をブランクが殴り気絶させたシーンだろう。
さあ、ここからはオレの舞台だ。
演じるのは、コーネリアと駆け落ちを決意し
明朝、港で彼女を待つ主人公のマーカス。
だが、陰謀によりコーネリアは現れない。
愛を誓った彼女が必ず来ると信じて
東の空が明るくなるまで待ち続けるシーンだ。
フードを深く被り、
暗転の間にスポットライトの下へ歩む。
(……緊張で喉が萎縮しそうだ)
再会を、喜んでくれるだろうか
今までどんな風に声を掛けていただろうか
また、笑ってくれるだろうか
…
………
ーーージタン、だいじょうぶだよーー
「………ビビ?」
風の中、聞こえた小さな囁き
空へ記憶を預けにいった彼の声に背中を押され
つい目頭が熱くなる
瞬間、
スポットライトが点灯し
全ての視線が集まったのをフード越しに肌で感じた
台詞を口にしながら、彼女に届けと想いを込める
これは劇中の台詞だがオレ自身の強い想いでもある
「信じるんだ!」
「信じれば、願いは必ずかなう!」
「太陽が祝福してくれぬのなら
ふたつの月に語りかけよう!」
「おお、月の光よ、
どうか私の願いを届けてくれ!」
「会わせてくれ、愛しのダガーに!!」
「巡り巡ってスタート地点」
ここから新しい物語が始まる
FF9 20周年おめでとう
2020.7/7
2025.1/15ガーネット誕生日に再掲
いつまでも色褪せない物語をありがとう
1/1ページ