02 こんにちは、初めまして
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ノイズと握手を交わすと、彼の言う“縁”が繋がったのか繋いだ手から淡い白色の光が溢れだした。驚きつつ、ゆっくりと手を離す。
光は段々と小さくなり…ころん、と小振りながら艶のある白い宝石のイヤリングがミヤビの手の平に残っていた。
『…これは?』
「ムーンストーンですね。
これから行くガイアで貴女を見つけられるよう、縁を繋いでおきました」
『んと…お守り、みたいなもん?』
「ええ、肌身離さずお持ち下さい。帰る時の導(しるべ)としても必要ですからね。」
『あ、ありがとう…てか、さっきから魔法チートすぎへんか…』
無から有を創り出してみせたノイズに驚きを隠せない。
彼だからなのか、魔法だからなのか分からないが自分がいた世界ではまずあり得ない。
驚きと憧れ、恐れもあったが失くさぬよう両耳にイヤリングをつけた。
そして不安を振り切るように、ノイズへ一歩大きく歩み寄る。
揺れた際にムーンストーンが金具とこすれたのか、チリンと小さく耳元で揺れ動き、きらりと光を反射する。こういったオシャレはしてこなかった事もあり、小さな機微にも心が弾む。
この輝きが、これからの旅立ちが良いものになると応援してくれている様な気になってくる。
『よし、これでだいじょぶ!』
「準備は整いましたか?」
『うん、いつでもええよ』
「それでは…始めます。
…乞い願う、彼の地へ向かう迷い子を
導き給え精霊の歌、響け時渡る鐘の音と共に」
先ほど水球を現した時のように詩のようなノイズの呪文。
呟かれた言葉に呼応するように彼の瞳と同じ青緑色の術式がミヤビの足元に構築されていく。何重にも複雑に組み込まれていくほどに、だんだんと乳白色の風が強く吹く。
気づけばミヤビを中心に青緑色の魔法の船が出来上がっているが、
それよりも船が完成しても止まらず勢いを増す風が気になる…。
『な、なぁ!これはなにー!!』
「“タイムシップベル”時を超えていく渡し船です、
船体ができましたから、間もなく帆を張りガイアへ向かいます。
ムーンストーンに宿る力をお借りしたので
少々悪戯好きな方ではありますが、風に身を任せれば良い方角へ導いてくれますよ」
『えぇっ!?なんてー!?
ごめ、ごめんやけど、全然聞こえんよーーー!』
「あぁ~…。
ごほん、ミヤビ様~!!
風に乗っていけば大丈夫!これからガイアへ行きますよ~!」
『ほ、ほんまに、このまま風に巻き込まれて!?
ほんまに【ガイア】につくんよね!?ねえ!?
っと、待って待って浮いたぁぁあああ!ノイズさあああん!』
「あ!ノイズで結構ですよ~!」
『今ぁ!?』
「貴女なら!その風も、想いの力も、すぐに使いこなせますから!ご自身を信じて下さい!」
ノイズの声が届いたと同刻、バサッと背後の帆が下りる。
帆が強烈な風を受けて感じたこともない速度で動き出し、身体が慣性の法則で後ろへ揺られ身体が一瞬浮く。すでに船体は中空にあるので自分の身体は文字通り宙に浮いているのだ。体感は落下直後のジェットコースターそのもの。縋りつくものがなく行き場を失った両手はとっさに船縁を力の限り掴み、ぎゅっと目を瞑る。
ノイズが励ましてくれた言葉は耳に届いていたが、もう一切の自信が持てない。
むしろ先ほどまで何とかなるだろうと楽観的な自分自身を再度説得したい。
このっ、浮遊感はっ、アカン…!!!
(これは……酔う…!!!)
実は、乗り物酔いがひどいタイプなのだが
正直こんな非現実的な場面で再自覚したくなかった。
せめて船体から落ちないよう、掴んだ船縁に身を寄せて縮こまる。
瞬間、一層強く吹いた風、そして耳に届いたのは1度聞いたあの鐘の音。
ゴーン、と聞こえた時にはミヤビはノイズの目の前から消えていた。
世界を超え対象者を送る魔法【タイムシップベル】はノイズの言う通り発動した。
再び、静寂を取り戻した【白の世界】
先ほどミヤビが旅立った場所をみて
この短時間に見た様々なミヤビの表情を思い出し、自然と微笑むノイズ。
静寂の中だというのに、あの賑やかな声が聞こえてきそうだ。
そのまなざしはとても穏やかなもので慈しむ想いが溢れていた。
が、すぐに哀しく伏せられる。
「……これで、本当に良かったのでしょうか?
いや、彼女なら、ミヤビ様ならきっと…。
それに進むと決めたのは、紛れもなく彼女自身。それに応える事が私に今できる事だ。
…せめて彼の元へと導かれますように……」
一方、
ひゅるると風が先ほどよりも優しく、船体全体を球体のように包み込んでいる。
身体を船に預け、押し寄せる意識のぐらつきをなんとか飲み込んで、意識を保つ事に集中するミヤビ。
先ほどまでの船酔いを超える睡魔の波が繰り返し彼女へ襲い来る。
寝てはいけないと思うのに、眠気に抗えない…。
(小さい頃から不思議だった)
誰も知らないあの歌の全てがわかる世界。
(知りたい、知らなくちゃいけない)
そう、あたしは、
(あたしに関わるすべてを……)
意識を手放しかける直前、またゴーン、ゴーンと鐘の音が9つ聞こえた。
到着を知らせる船の汽笛の如く、高らかに響く音を聞きながら
抵抗むなしくミヤビは眠りについた。
………
……
…
「どうしよう~…」
「あのぉー、お姉さーん…だめね、起きそうにないわ…」
「このままじゃロウェル様に会えないし…かと言って日も暮れてきて放ってもおくわけにもいかないし…ううっ」
「お困りかな?お嬢さん」
「えっ? えぇ…まあ」
「それならこのオレに任せ「本当!? それじゃあこの子お願い!私たちのロウェル様が待ってるから、頼んだわ~じゃあねぇ~!!」……えっ、あ!!…あぁ~…ロウェル様、ね」
「クックック、ざまあねえなジタン」
「…足音消して盗み見てんじゃねえよ、
趣味悪いぜブランク」
「生憎、染みついた習慣なんでな。
それで、なんでこんなとこで倒れてんだ」
こいつは、と夕陽をあびてやや赤茶色に染まった黒髪の毛束を軽くひっぱる。その勢いで結んでいたリボンがはらりと解けて地面に落ち、結われていた髪も解けてしまった。
その手を遮るようにジタンが間に入る。
「こらレディに乱暴するなよ、
なんで倒れているのかは知らないが可愛い顔してるんだし、追われてたのかもしれないぜ。
それにオレ達のアジトの前で倒れてるんだ。
誰かを助けるのに理由なんているかい?」
「はいはい、名台詞いただきましたっと。
………ったく厄介なことにならなきゃいいけどな」
「は~、自分だって放っておけないくせによく言うぜ。
とはいえもう出発の時間だ、ひとまずボスに頼んでこの子も乗せてもらおう。」
「仕方ねえな。ジタン手伝え、ほら、おぶらせろ。」
「えっ、いいよ。オレがお姫様抱っこしていくよ」
「ちゃっかり荷物運びから逃れようとしてんの見え見えなんだよバカ!早くしろ」
「ちぇ…」
「よっ…と、……しかし、妙な恰好の女だな…。…?……これは…。」
「おーい見とれてないで丁重にお運びしろー!ほらこれも忘れてる!」
「…このリボン…ムーンストーンの飾り……いや、まさかな……」
「さっきから独り言多いなブランク。さては一目ぼれか?
けど眠るレディへの手出しは紳士的じゃないぜ?人として“無し”だ。」
「てめぇ…なんでドン引きしてんだよ!しねえよ!行くぞ!」
橙に染まるレンガ造りの建物、夕日が反射するエアキャブのガラス、
澄んだ鐘の音が高らかに鳴り響く。そんな、とある黄昏時のリンドブルム。
意識を失ったミヤビを背に抱えた青年ブランクと、
金色の尻尾を左右に振り歩く少年ジタンは一つの劇場艇へ乗り込んで行った。
その艇の名は…劇場艇プリマビスタ。
劇団タンタラスの所有する劇場艇である。
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