銃弾飛び交う世界を愛す
時計に書いてあるのは数字でなくてはいけない。
時間は一定の周期でなくてはいけない。
私は何ひとつ不自由のない平和な暮らしをさせてもらっていた様に思う。一般家庭より少し裕福な家庭に生を授かり、飢えを経験したことがなく、教養を身につけることも許されていた。家族関係も十分良好であったと言える。本当に良い家庭に生まれた。本当に。ただ私が本当にやりたいことはこの法律で縛られすぎている世界で、自由に生きれないことが苦しかった。
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(あれ?こんな所に穴なんてあったっけ?)
見覚えがなく、底が見えない大きな穴。誰かの悪戯かなんて思いながらも私はどうしてかその穴から目が離せなかった。
《穴があったのなら、飛び込まなくては!》
頭の中に不思議な、それでいてとても劇的な言葉が聞こえてきた。たしかに、穴は何のためにあるのかと問われれば飛び込むためというのもひとつの立派な答えだと思う、なんて頭に響いた言葉について冷静に思考しながら、気づけば私は、穴の中に軽やかに飛び込んだ。
穴に飛び込み、暫く落ち続けているがまだ底にたどり着く気配がない。というか底に着いてしまったら私は衝撃であっけなく死ぬ。
私は自殺願望なんてない。死ぬためにこの穴に入ったのではない。…では一体、何を期待し穴に飛び込んだのか。
それは、日常からの脱却の為。いつもなら不自然な穴を見つけたりしても飛び込むことはおろか、近づこうとすらしないだろう。だからこそ、そこから逃げ出したくなった。もしこのまま落ち続けて死んでも構わない。それは私が平凡に抗えた証明であるからして、後悔することはない。
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