ブルーロック夢
四月一日なんて、嫌いだ。
毎年ターゲットにされる自分の情けなさも嫌だし、嘘のネタに幼馴染であり彼女である里穂子が使われることも……嫌だ。
「俺さ、時光の彼女と付き合う事になったんだ」
「げ、お前それ! 俺が言おうと思ってたのに!」
狭い部室の中で、シュートが決まったときよりも嬉しそうに笑っているチームメイトたち。
息が詰まりそうだ。
明らかに嘘だと分かる嘘を吐かれても、青志はいつものように笑うことは出来なかった。
「すまん、冗談だって! 今日はエイプリルフールだろ?」
ニヤニヤ笑いながら気持ちの籠っていない謝罪を投げかけられても許せるわけがない。
けれど口を開いて何か言い返そうものならばもっと酷い嘘が飛んでくるかもしれないと、何も言わずじっと耐えた。
部活が終わった帰り道に、里穂子とばったり出会った。
「青ちゃんおかえり! 今部活終わったの? ラッキー!えへへ、私も今図書館から帰ってきたところでね……」
表裏なく笑う里穂子が、いつも以上に可愛く見えて。
息苦しさが無くなった心からひとつ、感情が零れ落ちた。
「里穂ちゃん。抱きしめてほしい」
無意識だった。言い換えるとすれば、本能か。
声にしてから後悔した。唐突すぎた。
そもそも幼馴染に何を言っているんだろうか。
「ああほら今日はエイプリルフールだか、らぁっ……!?」
頬を膨らませムスッとしている里穂子が青志の胸の中に飛び込んできた。思い切り抱きしめたら折れてしまいそうなその背中に、手を回そうか迷ってしまう。
「えー。青ちゃんひどい」
……そうだ。散々チームメイトにからかわれて嫌だったのに、同じことをしてしまった。
「ごめん。俺、最低なこと言って……」
「そうじゃなくて『抱きしめてほしい』は本当に嘘なの?」
「……嘘じゃないって言っても、嫌いにならない?」
「うん、好きだよ」
そう言う里穂子の唇はニヤついていて、瞳はあちこち泳いでいる。これは明らかに――
「あぁ嘘吐いてる、やっぱりこんな俺のことなんて」
溜めていたネガティブが溢れ出そうになった瞬間、里穂子の唇が重なった。
「好き、じゃなくて。私、青ちゃんのこと大好きだもん!」