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ブルーロック夢



君は幸せそうにその人に寄り添い、艶めく唇で愛を囁く。
俺に気づくことなく、君は笑う。
可愛いと言うよりも、綺麗だ。いつになく。
どうして? ああそっか――君の隣に居るそいつのせいなんだね。
もう二度と俺を見てくれないのも、きっとそうだ。

観客もポップコーンもない、真っ暗な映画館でひとり。
やめてと叫ぼうが嫌だと言おうが、止まることはない。
愛しい彼女が運命の人と未来へ歩いていく――吐き気がするほど美しいフィルムを見せられている。
そんな感覚だった。

頬を流れるぬるい涙の気持ち悪さに、目を覚ました。
時間を確認するために手にしたスマートフォンには「青ちゃん、おやすみ」と一言。
あれは夢か。夢で良かった。
君の世界にそいつは居ない。
君を誑かすそいつは存在しない。
「……ちが、う」
そいつのせいじゃない。俺のせいだ、俺がこんなにカッコ悪くて弱くていつまでも自信がなくて、いつまでも頼りないからこんなにもみっともない夢を見て、居もしない存在に怯えて。それでも良いと、そんな青ちゃんだから好きなんだと笑ってくれる君に安心し、甘え続けている。自惚れて少し背筋を伸ばした自分が嫌だ。いつまでも俺を愛してくれる証なんてどこにもないのに。
ああ。嫌だ。嫌いだ。こんな自分が大嫌いだ。

それでも。
『青ちゃん、大好き!』
それでも彼女は誰にも渡したくない。
「好きだよ。里穂ちゃん……」
爪を噛む。涙を拭って立ち上がる。
自信が欲しい。強さが欲しい。
転がる鉄の塊に手を伸ばす。いくら鍛えても何をしていても、それらが満ちることはないと分かっていても。
ごめん。ごめんね。こんな俺だけど、里穂ちゃんの隣に居たいんだ。

「わっ青ちゃん!? おはよう、どうしたのこんな朝早く……え、怖い夢を見たの? なーんだ、呼んでくれたらすぐ駆けつけたのに。ほんと、青ちゃんは優しいね」

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