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幼稚園パロディ




酷い雨音に紛れ、雷の音が微かにするーー誰もが寝ている空間でひとり起きてしまったアルフレッド。
先生や友達を起こす訳にもいかず、けれど再び寝ようとしても怖くて眠れない。
雷はどんどん近付いてくる。
ぽた、とひとつ涙が零れた時に隣の布団がもぞもぞと動いた。
「アルくんどしたの」
「リツカちゃん……なんでも、ないよ」
やっとのことで勝ち取った好きな子の隣で寝る権利。
カッコ悪い姿なんか見せるものか、と小さなプライドが邪魔した。
けれどそんなちっぽけなものは眩く光った雷にすぐ消される。
「わああっ!」
アルフレッドは情けない声を上げながら布団に潜り込む。
どぉん。
大きな音がした。近くに落ちたんじゃないか。
「アルくん。かみなり、こわい?」
リツカは布団を覗いてきた。暗くてよく分からないが、動じていなさそうだ。
「こわくない」
「ほんと?」
再びぴかっと外が光る。その時見えたリツカの顔はとても曇っていた。雷が怖いのではなく、心配してくれているんだろう。
ふたつめの涙と一緒に、本当の気持ちが零れ落ちた。
「……ほんとは、こわい」
「じゃあアルくんがこわくなくなるまで、リツカがそばにいるよ」
ためらいなくリツカはアルフレッドの布団に入った。
「へへ、なんかどきどきするね」
向かい合わせ、息がかかるくらいの距離。
もう雨の音も、雷もみんな消えてしまった。リツカだけがアルフレッドの世界いっぱいに広がっていく。
「……ありがと、リツカちゃん」
「も、こわくない?」
怖くないよ、と言おうとしたがリツカの言葉を思い出した。
怖くなくなるまでそばに居る、と。
「……ううん。まだ」
もうちょっと、もうちょっとだけこうしていたいから。アルフレッドは嘘をついた。
「そっかあ」
知ってか知らずか、にっこりと笑ってリツカはアルフレッドの手を握ってくれた。
そのあたたかさとリツカの優しさで、アルフレッドはゆっくりと眠りに落ちていった。

翌朝先生達には驚かれ、友達みんなに冷やかされたのは言うまでもない。


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