bnyr!
「広大な地下の中にはただ一つだけ、厳重に鍵のかかった部屋があるんですよ」
「そうそう!その部屋には大切に守られた……葵陽くんがいる!」
ユキホと翼は地下施設の話で盛り上がっていたのだが、何故か話は地下に閉じ込められたFairyAprilのボーカルである鳳葵陽に変わっていた。当の本人は全く気にしていない、というよりメンバーとの会話に夢中で聞いていないようだ。
「葵陽さんの格好はどうしましょう……ここはやはり汚れたワンピースでしょうか……」
「いや、あえてロリータファッションで拘束もいいよ」
「まあ!ロリータ服を着て椅子に縛られる葵陽さん……可愛いです!」
ユキホが目を閉じて葵陽のロリータ姿を想像する。その後、翼は何か思いついたのか、確信した顔で言った。
「待てよ……そしたら着物でもいいかも……」
「なるほど……世界観としては、葵陽さんは身売りを強制されて……といったところでしょうか」
「そこに大金を払って助けるのが俺ってことだね」
「ちょっと何言ってるか分からないです」
キリッという効果音が聞こえそうなくらいの決めポーズを決めた翼。しかし、ユキホはそれを冷めた目で見る。
「葵陽さんを助けるのは誰がどう見てもこの私です。野蛮な男達に嬲られた葵陽さんに手を差し伸べる……その私の姿はなんて凛々しいでしょう……」
「あーでもなんか分かるかもなー……今回は譲るよ」
「ふふっ、勝ちました」
「あ!翼くん、ユキホちゃん!二人だけで何の話?」
「天使……間違えました葵陽さん」
「何だ、ただの妖精さんか」
会話が気になったのだろうか、葵陽が二人のもとに走ってきた。その際に聞こえた天使だの妖精だのといった単語は聞こえていなかったらしく葵陽にはスルーされた。
「いや、地下に閉じ込めるなら誰だろうね?って話してたんだよ」
「何で閉じ込めるの!?」
「あれですよ、綺麗なものは仕舞っておきましょうってことです」
「そ、そういうことなの?……綺麗なら、ユキホちゃんとか?閉じ込められても一真くんが助けに来てくれるよ!」
「いいですそういうのは。私達は葵陽さんを閉じ込めたいんですよ」
「お、オレ!?」
名前が上がるとは思っていなかった葵陽は驚き、目を瞬かせる。
「当然です、青と紫色の着物を着て牢に閉じ込めておきたいです。あと手首に枷を嵌めるのもいいですね」
「えっ!?」
「いいや!葵陽くんにはロリータ服を着せて拘束でしょ!手首に枷はいい案だけどね」
「そ、そこじゃない……」
ユキホと翼が服装や設定で言い合っている中、葵陽は二人の言う格好を想像してしまう。「あう……」などの声にならない母音を出しながら顔を赤く染め、頭の中にある着物姿やロリータ姿を消し去ろうと頭を横に振る。そんな葵陽を見た、その場の全員の心は一緒だ。
(鳳葵陽マジフェアリー)
「おっ、オレ男だし……そんなの合わないって……」
「そんなことありませんよ。葵陽さんは顔が綺麗で可愛いじゃないですか」
「そうだな!アサっちゃん女顔?というか可愛い顔してるもんな!」
「ええ、体格は置いといて、顔だけ見ればとても可愛いわ」
ユキホ、レイ、シェリーがそれぞれ葵陽を綺麗だ可愛いだのと褒め讃えた。可愛いと言われたことに納得出来ないのか、葵陽はでも……と言いながら綺麗だと褒められたことに関しては嬉しいようだ。
「さっきも言ったけどオレは男……」
「それならボク達だって男だよ?正確には男の娘だけどねー!」
「葵陽!もう男の娘になればいいんじゃないか!?」
「何言ってんだアンタ!」
「男の娘じゃなくて女の子でもいいぞ!そしたら俺達に囲まれる葵陽は逆ハーレムってやつだな!」
「おいBLASTのボーカル……いいこと言うな。それなら俺と葵陽が晴れて世間から歓迎されるような本物の恋人同士になれるな」
「一真くん何言ってるの?葵陽と幼馴染みのこの僕が恋人になるに決まってるでしょ」
「そうだぞかずまっち。ここは一番葵陽を助けられる俺に預けてくれ」
「ちょっとみんな!?」
FairyApril内では誰が葵陽の恋人になるかという言い合いを始めてしまい、葵陽は三人を止めようと輪の中に入ろうとする。そんな葵陽を後ろから抱き締めるように止めたのは、宗介だった。
「どうしたんだ、宗介?宗介も葵陽が好きなのか?」
「好きじゃねぇ」
「そうだよ大和くん、宗介くんがオレのこと好きなわけ」
「好きじゃ表せないくらい愛してんだよ。なぁ葵陽、付き合いを前提に結婚しろ」
「へっ!?」
「何で命令してんだよ!?」
「いやそもそも前提が逆になってることに突っ込んで!!」
宗介の前提が逆のプロポーズに対して、徹平とマイリーが突っ込みを入れた。
「俺はあのギターよりもお前のこと幸せに出来ると思っている。返事はイエスしか認めねぇ」
「え?あの、宗介くん……?」
宗介が葵陽の両肩に手を置き、そのまま顔を近づけて葵陽に迫る。宗介の目付きの所為か、葵陽は体を震わせる。
(オレ、宗介くんのこと怒らせちゃったのかな……?)
葵陽が思考を巡らせていると、突然二人が引き剥がされる。口論していたはずの吉宗と美郷が、いつの間にか宗介を追いかけている。一真は葵陽の背後に立ち、宗介がしたように両肩に手を置いていた。
「大丈夫か?あの脳がもやしで出来ているようなやつに何もされなかったか?」
「そ、宗介くんに失礼だよ!何もされてないから!」
「そうか、ならついでに俺と結婚してくれ」
「か、一真くんまで!?」
「一真くん?葵陽と恋人じゃ飽き足らず、夫婦になろうだなんて身分違いすぎるよ。例えるなら女神と罪人くらいの差があるよ」
「それはつまり女神葵陽が俺を裁いてくれるのか?なら看守も葵陽にしてほしいんだが。前髪ぱっつんの男子高校生に管理されるとか最高だろ」
「黙れ家畜小屋の餌」
「牧草だって言いたいのか猫被り筋肉野郎」
宗介を追いかけていた美郷が、いつの間にか葵陽と一真の会話に合流した。そこから遠く離れた場所では、砂浜に倒れ込んだ宗介へのベース四名による制裁が行われている。普段こういったことには乗り気でない真琴ですら、「葵陽さんに手を出そうとした罰です」と眼鏡を光らせていた。
「ちょ、ちょっと待って!宗介くんに何してるの!?」
「見りゃ分かるだろ、俺達フェアエプのフェアリーの葵陽に手を出した罰を与えているんだよ」
「お、オレがふぇありー……?それはともかく!宗介くんをいじめちゃダメ!」
「仕方ありませんね……葵陽さんが言うのならやめましょう」
「残念ですが、次また同じことをしたら解剖しますからね」
「まこっちゃん何言ってんだ!?」
「レイさん、僕は正しい行いをしているだけですよ」
「俺にはレベルの高い話みたいだな」
ベースの四人は持っていた武器を渋々仕舞い、宗介から離れた。ちなみに、その武器というのは吉宗がトンカチ、ユキホが槍、真琴が鞭、翼がマイクスタンドだ。翼のマイクスタンドは、大和からの借り物だ。
「大和助かったよーありがとう」
「いくら宗介といえど、葵陽を独り占めするのは許されることじゃないからな!」
「つーか全員の武器ってどっから出したんだ……」
「徹平!そこは都合よく解釈するんだ!」
「そうそう!その部屋には大切に守られた……葵陽くんがいる!」
ユキホと翼は地下施設の話で盛り上がっていたのだが、何故か話は地下に閉じ込められたFairyAprilのボーカルである鳳葵陽に変わっていた。当の本人は全く気にしていない、というよりメンバーとの会話に夢中で聞いていないようだ。
「葵陽さんの格好はどうしましょう……ここはやはり汚れたワンピースでしょうか……」
「いや、あえてロリータファッションで拘束もいいよ」
「まあ!ロリータ服を着て椅子に縛られる葵陽さん……可愛いです!」
ユキホが目を閉じて葵陽のロリータ姿を想像する。その後、翼は何か思いついたのか、確信した顔で言った。
「待てよ……そしたら着物でもいいかも……」
「なるほど……世界観としては、葵陽さんは身売りを強制されて……といったところでしょうか」
「そこに大金を払って助けるのが俺ってことだね」
「ちょっと何言ってるか分からないです」
キリッという効果音が聞こえそうなくらいの決めポーズを決めた翼。しかし、ユキホはそれを冷めた目で見る。
「葵陽さんを助けるのは誰がどう見てもこの私です。野蛮な男達に嬲られた葵陽さんに手を差し伸べる……その私の姿はなんて凛々しいでしょう……」
「あーでもなんか分かるかもなー……今回は譲るよ」
「ふふっ、勝ちました」
「あ!翼くん、ユキホちゃん!二人だけで何の話?」
「天使……間違えました葵陽さん」
「何だ、ただの妖精さんか」
会話が気になったのだろうか、葵陽が二人のもとに走ってきた。その際に聞こえた天使だの妖精だのといった単語は聞こえていなかったらしく葵陽にはスルーされた。
「いや、地下に閉じ込めるなら誰だろうね?って話してたんだよ」
「何で閉じ込めるの!?」
「あれですよ、綺麗なものは仕舞っておきましょうってことです」
「そ、そういうことなの?……綺麗なら、ユキホちゃんとか?閉じ込められても一真くんが助けに来てくれるよ!」
「いいですそういうのは。私達は葵陽さんを閉じ込めたいんですよ」
「お、オレ!?」
名前が上がるとは思っていなかった葵陽は驚き、目を瞬かせる。
「当然です、青と紫色の着物を着て牢に閉じ込めておきたいです。あと手首に枷を嵌めるのもいいですね」
「えっ!?」
「いいや!葵陽くんにはロリータ服を着せて拘束でしょ!手首に枷はいい案だけどね」
「そ、そこじゃない……」
ユキホと翼が服装や設定で言い合っている中、葵陽は二人の言う格好を想像してしまう。「あう……」などの声にならない母音を出しながら顔を赤く染め、頭の中にある着物姿やロリータ姿を消し去ろうと頭を横に振る。そんな葵陽を見た、その場の全員の心は一緒だ。
(鳳葵陽マジフェアリー)
「おっ、オレ男だし……そんなの合わないって……」
「そんなことありませんよ。葵陽さんは顔が綺麗で可愛いじゃないですか」
「そうだな!アサっちゃん女顔?というか可愛い顔してるもんな!」
「ええ、体格は置いといて、顔だけ見ればとても可愛いわ」
ユキホ、レイ、シェリーがそれぞれ葵陽を綺麗だ可愛いだのと褒め讃えた。可愛いと言われたことに納得出来ないのか、葵陽はでも……と言いながら綺麗だと褒められたことに関しては嬉しいようだ。
「さっきも言ったけどオレは男……」
「それならボク達だって男だよ?正確には男の娘だけどねー!」
「葵陽!もう男の娘になればいいんじゃないか!?」
「何言ってんだアンタ!」
「男の娘じゃなくて女の子でもいいぞ!そしたら俺達に囲まれる葵陽は逆ハーレムってやつだな!」
「おいBLASTのボーカル……いいこと言うな。それなら俺と葵陽が晴れて世間から歓迎されるような本物の恋人同士になれるな」
「一真くん何言ってるの?葵陽と幼馴染みのこの僕が恋人になるに決まってるでしょ」
「そうだぞかずまっち。ここは一番葵陽を助けられる俺に預けてくれ」
「ちょっとみんな!?」
FairyApril内では誰が葵陽の恋人になるかという言い合いを始めてしまい、葵陽は三人を止めようと輪の中に入ろうとする。そんな葵陽を後ろから抱き締めるように止めたのは、宗介だった。
「どうしたんだ、宗介?宗介も葵陽が好きなのか?」
「好きじゃねぇ」
「そうだよ大和くん、宗介くんがオレのこと好きなわけ」
「好きじゃ表せないくらい愛してんだよ。なぁ葵陽、付き合いを前提に結婚しろ」
「へっ!?」
「何で命令してんだよ!?」
「いやそもそも前提が逆になってることに突っ込んで!!」
宗介の前提が逆のプロポーズに対して、徹平とマイリーが突っ込みを入れた。
「俺はあのギターよりもお前のこと幸せに出来ると思っている。返事はイエスしか認めねぇ」
「え?あの、宗介くん……?」
宗介が葵陽の両肩に手を置き、そのまま顔を近づけて葵陽に迫る。宗介の目付きの所為か、葵陽は体を震わせる。
(オレ、宗介くんのこと怒らせちゃったのかな……?)
葵陽が思考を巡らせていると、突然二人が引き剥がされる。口論していたはずの吉宗と美郷が、いつの間にか宗介を追いかけている。一真は葵陽の背後に立ち、宗介がしたように両肩に手を置いていた。
「大丈夫か?あの脳がもやしで出来ているようなやつに何もされなかったか?」
「そ、宗介くんに失礼だよ!何もされてないから!」
「そうか、ならついでに俺と結婚してくれ」
「か、一真くんまで!?」
「一真くん?葵陽と恋人じゃ飽き足らず、夫婦になろうだなんて身分違いすぎるよ。例えるなら女神と罪人くらいの差があるよ」
「それはつまり女神葵陽が俺を裁いてくれるのか?なら看守も葵陽にしてほしいんだが。前髪ぱっつんの男子高校生に管理されるとか最高だろ」
「黙れ家畜小屋の餌」
「牧草だって言いたいのか猫被り筋肉野郎」
宗介を追いかけていた美郷が、いつの間にか葵陽と一真の会話に合流した。そこから遠く離れた場所では、砂浜に倒れ込んだ宗介へのベース四名による制裁が行われている。普段こういったことには乗り気でない真琴ですら、「葵陽さんに手を出そうとした罰です」と眼鏡を光らせていた。
「ちょ、ちょっと待って!宗介くんに何してるの!?」
「見りゃ分かるだろ、俺達フェアエプのフェアリーの葵陽に手を出した罰を与えているんだよ」
「お、オレがふぇありー……?それはともかく!宗介くんをいじめちゃダメ!」
「仕方ありませんね……葵陽さんが言うのならやめましょう」
「残念ですが、次また同じことをしたら解剖しますからね」
「まこっちゃん何言ってんだ!?」
「レイさん、僕は正しい行いをしているだけですよ」
「俺にはレベルの高い話みたいだな」
ベースの四人は持っていた武器を渋々仕舞い、宗介から離れた。ちなみに、その武器というのは吉宗がトンカチ、ユキホが槍、真琴が鞭、翼がマイクスタンドだ。翼のマイクスタンドは、大和からの借り物だ。
「大和助かったよーありがとう」
「いくら宗介といえど、葵陽を独り占めするのは許されることじゃないからな!」
「つーか全員の武器ってどっから出したんだ……」
「徹平!そこは都合よく解釈するんだ!」