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bnyr!

「なぁ川野春翔、朝スタジオ入ったら「おはよう一真くん!」ってとびきりの笑顔でお出迎えしてくれる十六歳ロリ顔DKがボーカルって最高じゃないか?」
「いきなり馴れ馴れしく話しかけてきたかと思えば何だよ」

地下で時間稼ぎをしろと命令されたから来てみれば四響のドラム、ダンテとFairyAprilがいた。俺と眞冬はジューダス・キスというバンドを組んでいて、このカジノでFairyAprilをエンカウンターギグで敗北させて楽曲の権利を奪ってやった。正直、俺のいないFairyAprilの曲なんていらないけど。
話を戻して、葵陽が何かを話そうとした時に俺の場所にいた草生やした頭の男が葵陽の前に立って上のことを言った。ここまでが経緯だ。
いやとびきりの笑顔でお出迎えしてくれる十六歳ロリ顔DKって誰だよ……まさか葵陽のことか?そうだろうな多分、ボーカルがどうとか言ってたし。

「俺は毎朝欠かさず聞いているから練習前にトイレに行って抜くのが日課に入ったくらいだ」
「最低だなお前」
「そう言うな、お前もそれに耐えきれず葵陽の元を去ったんだろ?」
「違うからな?俺には俺なりのしっかりとした理由が」
「違う!?違うだと!?お前あの葵陽を見ても興奮一つしないのか?本当にお前は人間か!?」
「どうしてそこだけで俺は人外扱いを受けるんだよ」

第一印象は「突然現れた知らない男」だったこの男への今の感情は「とんでもない変態野郎」といった感じだ。葵陽のどこを見て興奮したんだこいつ。

「え、えっと、春翔だよね?ずっと心配だったんだよ……?何かあったのかだけ話してよ、俺は春翔の味方だから……」

味方……ねぇ、葵陽

「俺はお前のそういうとこが大嫌いだったんだよ」


「………」
「…?」


何だ?仲間だと思ってた奴に「大嫌い」と言われて傷付いているのか?それともまた笑顔作る気か?まぁ、前者の場合ならいい気味だ。

「……う、うぅ…」
「!?」

顔を上げた葵陽は、予想と反して泣いていた。いやこれ本当に泣いてるじゃねぇか!!泣かせる気は無かったんだよ!

「ご、ごめんなさい……春翔が俺のこと我慢してたの知らなくて……ぐすっ…」
「春翔!今のうちに謝って!」
「いや、なんで…」
「よしよし葵陽、すぐに春翔が謝ってくれるから泣きやめって、な?」
「勝手に決めるなよ」
「だ、大丈夫……だって春翔にはもうその子がいるんだもん……俺なんかいなくたって…」
「あ、あぁそうだよ、俺にはもう眞冬が」
「春翔謝りなよ」
「何で」

眞冬が可哀想なものを見るかのように俺の顔を見てくる。やめろ、お前までそんな顔で見るな。

「確かに春翔には僕がいる……だけどさ、こんな可愛い子をよく泣かせようとか思うよね、流石に僕も引くよ」
「お前そっちの趣味あったのか?」
「そんなことより葵陽?って子普通に可愛いじゃない、この子の笑顔を見るのが嫌だとか春翔も贅沢だね」
「俺の葛藤をそんなことでまとめるな」
「お前の葛藤とかクソどうでもいいからとっとと葵陽に謝れ」
「本当に誰だお前」

ちゃっかり俺の位置にいるこの牧草みたいな髪の男は誰だよ。

「俺はFairyAprilのギターで葵陽の旦那、七瀬一真だ」
「一真くん黙って」
「かずまっちいい加減にしろ」
「え、葵陽って旦那いたの?ショック……僕とツインボーカルになってもらおうかなって思ってたのに」
「やめろ、ってか旦那って何だよ」
「旦那は旦那だろ、葵陽がお前と離婚した後、俺が結婚しただけの話だ」
「意味分からねぇ」

待てよ、俺はいつ葵陽と結婚したんだ。そもそも男同士で結婚なんておかしいだろ。

「名前だけ公表されていては散々鬼畜キャラだの何だのと呟かれていたお前に言っておくと、俺はフェアエプマスコットのアリエスのパパで、葵陽はママだ。だから俺が葵陽の旦那だ」

何言ってるんだこいつ。

「なんでよりによって牧草が父親なの?」

おい眞冬、そこじゃないだろ。

「俺が名付け親だからだ」

お前も答えるな。

「春翔、今から僕達もマスコットキャラを作ってもらおう」
「は?何で?」
「そしたら僕が名前を付けるから、葵陽は僕とツインボーカルに」
「余計なことするな」
「ねぇそこの泣いてる可愛い妖精さん、僕達のマスコットキャラ作ってくれる?」
「気安く葵陽にナンパしないでよ身長詐欺野郎」
「僕と葵陽の会話に入ってこないで猫被りチビ」

そういえばこの状況を葵陽はどう思ってるんだ?意外と楽しんでいて、もう既に笑って

「春翔ぉ……うぅ……」

そんなことなかったな。もう俺はこいつが泣いてることに関して若干すっきりしている気がする。

「ごめんね…ごめんねぇ……」
「……本当お前のそういうところ嫌いだ」
「うぅ……」
「葵陽の泣き顔可愛いな、泣かせたのがこの首元轢かれ野郎なのが腹立つけどな」
「何だよそのダサい名前」
「最初から言おうと思ってたんだよ、その首だけ車に轢かれてんじゃねぇのか」
「こういうデザインなんだよ分かれ」
「で、でも……かっこいい、ね……ぐすん」
「葵陽がそういうならかっこいいんだろうな」

本当になんだコイツ。葵陽も褒めるんだったらせめて泣き止んでからにしてくれ。そして七瀬一真とかいうやつはキャラデザをディスるな、色んなところから怒られるぞ。

「もう俺達は行くぞ、眞冬」
「え、やだよ僕まだ葵陽にマスコットキャラ作ってもらってない」
「そんなのそこの伏線しかないパーカー着てる人に頼みなよサイコショタ如きが」
「本当に見た目と違って性格悪いよね美郷って人」
「そ、そんなことないよ、美郷はいい子だよ……」
「今の何処が性格いいって言えるんだ」
「春翔だって知ってるでしょ?美郷は本当にいい子なんだよ!」

葵陽が涙ながらに微笑んだ。そんな葵陽を見た眞冬が固まる。

「何その笑顔超天使すぎる」
「眞冬?」
「そうか、FairyAprilのフェアリーは葵陽のことだったんだね」
「俺に言うな」
「ふっ、そこのお前もようやく気付いたのか……敵じゃなければ俺達『葵陽に愛の魔法を届ける会』のメンバーとして勝手に受け入れるんだが」
「そんなのいつ作ったんだ」
「春翔が抜けてすぐ作ったんだぜ!葵陽が春翔ばかり構うから、葵陽愛を拗ねらせた俺達が抜けた機会を上手く使ってこれまでたくさんの信者を集めたんだ!」

何その俺だけ仲間外れ感、なんか悲しい。別に葵陽のことそこまで好きだったわけじゃないけど。

「そ、そんなものが存在していたなんて……参加の条件とかあるの?」
「簡単だ、その場で宣言すればいいんだ」
「そうやって引き抜きでもする気か、眞冬がそんな罠に引っかかるわけ」
「入る」
「おい」
「これでまた一人葵陽に信仰を捧げるバンドマンが増えたな、ちなみにこのカジノで二人増えた、もう一人はここの地下にいたドラマーのダンテだ」
「お前ら四響まで引き込んだのか」
「入れるつもりなかったんだがな」
「偶然俺の前に天使が現れたんだ。生まれてからコイツを見た今日まで俺はここまで穢れのない煌めきを目に入れたことがなかった」
「突然出てきて第一声がそれか」

今まで一言も喋ってなかったくせに。ってか待て、ここにいる奴らは俺の味方をする気もないのか?あの眞冬もフェアエプ側の人間になりかけている……それは阻止しないと。

「眞冬、そろそろ行くぞ」
「なんでよ勝手に一人で行けば、僕は今葵陽にマスコットキャラを作ってもらってるんだから邪魔しないで」
「数分で大分辛辣になったなお前」

葵陽がスケッチブックに何かの絵を描いている。本当に作ってんのかよ……

「じゃあそのキャラに僕が名前付けたら葵陽はジューダスキスの二人目のボーカルになってね」
「え?で、でも俺のこと嫌いな春翔がそれを許すかどうか……」
「あれの許可はいいよ、葵陽は僕の天使だ」

眞冬が跪いたと思えば葵陽の手を取る……が、それは間に割って入った七瀬一真によって止められた。

「それは旦那であるこの俺が許さない」
「チッ」
「舌打ちするな当然だろう」
「それに俺フェアエプのボーカルだし……兼任とかそんな器用なこと出来ないよ」
「何本気にしてるんだよ、とりあえず時間がないから行くぞ」

眞冬を無理矢理引っ張ってその場から離れる。ちなみに眞冬はずっと「葵陽との子供が!!」と叫んでいた。
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