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少女友情録

ジリジリと焼け付くような暑さに額から汗を流しながら、宮川美乃里(みやかわみのり)、通称ミミはパタパタと手で風を仰ぐ。
「相変わらずめっちゃ暑いよね〜、大丈夫?タオル使う?」
隣を向けば、同じく汗をかきながらも何故か顔は涼し気な、雪乃原柚(ゆきのはらゆず)、通称ユユは静かに首を振った。
美乃里の幼なじみで、見透かすような深海色の瞳と、整えられた黒髪のせいか、冷静で大人っぽい、そんな言葉が似合う雰囲気を纏っていた。
ただ1つ難点があるとするならば、1人で考えて1人で動こうとするせいで、周りと歩調を合わせるにはなかなか向かないというところだろうか。
でもそういうところがなんだか放っておけないというか、お姉ちゃん心が擽られるのだとミミは思う。
何を隠そう、4人兄弟の長女で、幼児の頃から一緒にいたユユも妹のような存在として思っているからだ。
しかし未だに心の内が読めないユユに、どう思われているのかと不安になることもあった。
ただなんだかんだ傍にいさせてくれている所を見ると、嫌われている訳では無さそうだった。
しかし今日は、そんな日常の中でも珍しいことがあったので、ミミの中では胸騒ぎがしていた。
その胸騒ぎを収めるためか、ユユの為を思ってか、徐に口を開いてみる。
「ところで、話があるってどうしたの?珍しいこと言うものだから、心配したんだよ〜」
「それは…」
何故だろうか、元々話したいことがあるからと呼ばれたのに、目を逸らされてしまった。
そんなに言いづらい事なのだろうか、ミミはまた少し不安になる。
しばらくの無音の後、先に切り出したのはユユの方だった。
「ごめん、やっぱり私まだ上手く言えないみたい。また今度でもいいかな」
「そ、そっか、わかった。またいつでも準備が出来たら言ってね」
心の準備が出来ていなかったのはミミも同じだったので、内心ほっとしていた。
その後はいつも通り、ミミが最近の流行りや兄弟の様子について教えたり、ユユがそれを控えめに聞いたり。
穏やな日常の1ページが刻まれただけだった。
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