本題
「あの少年、ちゃんと帰ったかなぁ」
少しの心配と満足感に身を包みながら、女性は家に帰ってきていた。
出来たての野菜炒めを腹に収め、今は布団でゴロゴロとしている。
しかし、やはり先程の出来事を思い返すと、なにか込み上げてくるものがあった。
この感情に名前をつけるのは難しいかもしれない。
ただひとつ分かるのは、優しさについてあの歳で考えていることへの感心と、自分への戒めも込めたあの言葉で何か伝えられたかへの心配が、この心に満ちているのは確かだった。
でも、久しぶりに子供を気にかけたかもしれない。
親戚にももうあのぐらいの子供はいなかったので、慣れないコミュニケーションだったと言えるだろう。
なにか、あの少年の力になれていたらいいな。
少なくとも、私は救われたから。
少年への優しさで彼への贖罪とするなんて、馬鹿らしいかもしれないけれど。
私の1歩目を飾ってくれたんだ、あの少年にどんな事情があるのかは分からないけれど、
少年の未来に幸あれ。