女性の贖罪

××年12月24日
はぁ、今日は最悪だった。
六量程度の部屋、乱雑に敷かれた敷布団の上に女性は倒れ込む。
周りを見渡せば、先程買ってきたビール缶が目に移り、
その隣には、楽しそうに笑う男女が映った液晶、スマホがあった。壁紙も変えなくてはいけない。
電源を消し、真っ暗な鏡となったスマホには今にも泣きそうな女性の顔が映っていた。
クリスマスイブは本来、クリスマス当日に続くカップルの日と言える。
様々なカップルがデートをし、愛を育み築いていく日。
私もそのカップルの一人になるはずだったんだ。

私には2年付き添った彼氏がいた。
彼はとても正義感の強い、優しい人だった。
そんな彼に言われてしまった、貴方には優しさが足りないんだって。
きっかけはとても些細な出来事だった。
彼は自分が仕事に行った帰りの足で、いつも通り私の会社まで車を出し、家まで送り届けてくれた。
本当はそのまま、家デートに誘うつもりだった。
でも、彼は車から私を降ろすと、今日はもう帰りたいと言い出した。
思えばこの時から、少し不機嫌だったのかもしれない。
私は率直に、「せっかくのクリスマスイブなのに?」と思ったままに口に出してしまった。
それが良くなかったんだ。
彼はなにかが決壊したみたいに、突然私に説教をしだした。
沢山のことを言われた気がするが、その中でも鮮明に覚えているのは、怒りを抑え震えながら別れ話を告げる彼の表情と、感謝が足りない、優しさが足りないと言われたことだけ。
でもそれだけで、私の心を挫くには充分だった。
私は忘れてしまっていたんだ、人間として大切な何かを。
いつの間にか当たり前になっていた彼の優しさに、気づけなくなっていた。
でも言われた瞬間にはそんな反省もできなくて、ただ呆然と立ち尽くし、気づいた時には彼の車が去っていくのを見送っていた。
今日は1日反省会だ、アルコールで忘れたいのは、気持ちだけ。
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