ハーブティー
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「あの、先生……明日、なんですけど……」
「すまない、明日は休暇をもらっていてね。相手をしてあげられないんだ」
「えっ……そう、ですか……じゃあ、あの、これどうぞ」
ナエは大事そうに抱えていた小包を私に差し出した。
両手に収まるそれの中身が分からず一瞬戸惑ったが、好意は素直に嬉しい。
大切に受け取ると、ナエの笑顔が花開いた。
「ハーブティーです。先生、最近元気がないように見えたので、疲れてるのかもと思って」
「ありがとう。ちょうど飲みたいと思っていたんだ。とても嬉しいよ」
彼女の笑顔に、胸の辺りが温かくなる。
ここ数日で、久しぶりに心の底から笑えたかもしれない。
彼女の気遣いが嬉しい反面、憂鬱な気分を表に出し過ぎていたかもしれないと反省もした。
「あ、あの、まだ話したいこともあって……」
「いや、すまない。今日はもう休みたいんだ。来週以降にしてもらえるかい?」
「来週……。あの、どうしてもダメでーー」
「すまないね。気を付けて寮まで帰るんだよ。おやすみ」
彼女の瞳が悲しげに揺れる。
少し胸が痛んだけれど、それ以上を感じる余裕は今の私にはない。
ナエに軽く手を振り、背を向けて歩き始めた。
シンとした静かな廊下には、しばらく私の足音だけが物悲しげに響く……。
自室に戻ると、暖炉の灯りが部屋の中を儚く照らしていた。
ロウソクの火を灯せば、オレンジ色がより一層強まり、部屋の中を明るく浮かび上がらせる。
簡易キッチンに立ち、ナエにもらった小包を丁寧に開けると、立ち所に辺りは華やかな柔らかい香りに包まれた。
「……いい香りだ」
思わずナエの笑顔がまぶたに浮かんで、頬が緩む。
そんな彼女に酷い思いをさせてしまったと、今になって罪悪感が胸を侵していった。
仕方ないこととはいえ、まだ他に言い方ややり方があったはずだ。
「来週は……お詫びの品を用意しておこう。ナエは何が好きだろう。紅茶に合うクッキーも良さそうだ」
考えている間だけは、明日のことなんて忘れられる。
現実逃避の材料と言い訳をして、私は明け方近くまでナエのことを考えていた。
ハーブティーの優しいおいしさに、舌鼓を打ちながら……。