さえずり
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「教授!」
日課となりつつある今日の呼び止めは、朝食前の廊下だった。
大広間へ向かっているようで、教授もこれから朝食らしい。
「おはようございます!」
大きな声で元気にあいさつ。生徒として満点の行動だ。
なのに、教授は視線さえも向けることなく先へと行ってしまう。
今、とても不機嫌そうだった。
「あの、教授!」
「……黙れ」
ヒュッと、のどから音がした。
心臓を抜き取られたみたいに、体の芯が冷え切っていくような感覚。
スネイプ教授の暗い眼差し、恐怖をあおる低い声は初めてだった。
口が上手く動かず、手が震える。
「す、みませ……」
消え入りそうな私の声が、届いたのかもわからない。遠ざかる背中も好きだったのに、それすら。
きっと、本当に心臓を抜き取られてしまったんだ。姿を見るだけでときめいたのに、体が熱くなる感覚だったのに。
もう、何も感じない。
「お、ナエじゃん。何してんだ?」
「……あ、えっと……何してるんだろうね」
「元気ねぇな。よくわかんねぇけど、皆で遊んだら気が紛れると思うぜ」
「そう、だね」
「日曜、やっぱ来る?」
「……うん」
私の中は、空っぽになっていた。
日曜、私は男子に連れられて空き教室に来た。
ちょっとした料理、お菓子、ジュースが持ち寄られていて、各寮から人が集まっているようだった。
「好きなもん飲んでいいってさ。じゃあ俺、あっちの奴らと話してくっから」
「あぁ、うん」
教授からはっきりと拒絶されて数日。私の心が癒えることなはかった。
今までの私は、あの人の優しさに甘えすぎていたのかもしれない。
口数が他の人より多いのも、皮肉たっぷりに私を心配してくれるのも、全部、私の好意を認めて受け入れているからだと思っていた。
こんな私を見たら、今までの教授なら「君の想いはその程度なのかね?」と口角を上げて言うだろう。
違うと否定したい気持ちとは裏腹に、たった一言の重みで私の心は粉々に砕けてしまった。
教室の隅で、ジュースを持ったまま一人で涙をこらえた。
あまりにも場違いな私の様子に、誰も話しかけてこない。私を誘った男子すら、そっとしておくスタンスに切り替えたらしい。
結果的には、来てよかった。声を押し殺して泣く夜は、もうこりごりだ。
「あ! もう消灯時間過ぎてるぞ!」
「皆急いで寮に戻って!」