彼女の体温
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薄々、気付いていたことがある。
とある特定の生徒が、馴れ馴れしく話しかけてくるのだ。
私のどんな言葉にも、笑みを浮かべて返してくる。何がそんなに可笑しいのかと初めは苛立ったが、その笑みの意味が、単純に「私との会話」自体を楽しんでいるせいだと知ったのは最近のこと。他の生徒が嫌悪感を垂れ流し俯くような言葉でも、笑みを向けてくるのだ。馬鹿でも気付くだろう。
しかし、その理由までは理解できず、まったくもって検討が付かない。好意を寄せられる理由など……。
日に日に口数は増え、授業の終わりには一言二言と雑談を交えるほどになっていた。
不本意ではあるが、私の中にも微かに温もりを感じるようになり、それは誤魔化しようもないほどに成長していった。それは、これ以上育てる必要はなく、むしろ捨てるべきものであるはず。
……それができない私は、あまりにも滑稽。
そして今宵、いつものように魔法薬の採点をしている時、薄暗い部屋に控えめなノックの音が響いた。
こんな時間に、誰がいったい何の用でここへ来るというのだ。私は一刻も早くこの薬を片付けねばならぬのに。
ノックの雰囲気から察するに、生徒であることは間違いない。今日はどの生徒にも罰則を申し付けた覚えはないが。
「何の用かね」
「スネイプ教授……フラムです」
わずかに艶を含んだ声色に、胸の辺りが慌ただしくなる。
そうだ、この生徒だ。私の心の隙間に入り込んできた、唯一の。
「我輩は忙しい。今日中に、生徒達の失敗作の魔法薬を処分しなければならないのでな」
このように突き放す言葉をかけても、お前は怯むことなく私へと向かってくるのだろう。
案の定、フラムは私が扉を開けることを求めてきた。
これ以上、近付くことなど許されないのだ。お前も、私も……。
「ここに、置いていきます……失礼し、ます……」
違和感を覚えたのは、その言葉を聞いた時だった。
フラムは、こんなにもつらそうに話す生徒だったか? 普段通りであれば、会話を続けたがって食い下がるはず。
胸騒ぎがして足早に扉へ向かい、やや強引に開いた。そこにあったのは、丁寧に包装が施された箱。そのすぐそばで、廊下に倒れ込むフラムの姿だった。