甘い海
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もがいて もがいて
苦しい
息ができずに
深みへ落ちていきながら
手の届かないところにある
太陽を見上げました
好きな人を見ると、思わず目で追いかけてしまう。
それは、よくあることだと思う。
一挙一動見逃さないよう、一緒にいない時のあの人のことも知りたくて、目に焼き付けたくて。
「キャー! 先生すっごい!」
その声に振り向くと、不意に見つけてしまった。
黄色い声の中心にいるのが、自分の恋人なんて……。
いてもたってもいられず、就寝時間間近なのに部屋を飛び出した。
先生の部屋までの道のりは、目を閉じていても分かる。
三回ノックした後に開かれた扉の隙間から、オレンジ色の温かい光がもれた。
「やあ、ナエ。こんな時間に出歩いてはダメだよ」
そう言いながらも、先生は私を招き入れてくれる。
その優しさに甘えながら、他人にも優しすぎることがツラいと自分勝手なことを考えた。
「そんな顔をしてどうしたんだい?」
しばらくすると、テーブルに見慣れたマグカップが置かれる。
それは柔らかな湯気を立てていて、微かに甘い香りを放っていた。
ソファに埋もれるように座っていた私は、カップを手に取り静かに吐息を吹きかける。
カカオの香りが漂うココアを口に含むと、それだけで笑みがこぼれた。
「元気が出たようだね」
「!……こんなことで、ごまかせると思わないでください」
やや乱暴に、一口しか飲んでいないカップをテーブルに戻す。
ココアを飲み干してしまい気持ちを我慢しながら、先生を睨みつける。
大人なのにかわいらしく首をかしげるこの人は、リーマス・ルーピン先生。
私の、恋人……。
「いつも元気なのに今夜はまだ笑顔を見ていないから、心配してるんだよ」
ルーピン先生の優しい声に、思わずうっとりと目を細めてしまいそうになる。
私を溶かしてしまいそうな、柔らかい口調。
さっきまでの怒りも意地もどうでもよくなってきて、改めて先生を見る。
私の大好きな、優しい微笑みがそこにはあった。
「せ、先生が……他の女の子と仲良さそうにしてたから……いいなぁって」
「何だ、そんなことかい」
……そんなこと?
その一言に、心臓がドキリと嫌な音を立てる。
先生にとっては些細なことでも、私には…!
そう反論しようと口を開こうとした途端、私の唇に先生の人差し指が当てられた。
「怒らないで。私が言ったのは、君が思っているような意味ではないよ」
笑みを絶やさず、隣に座ってローブでふわりと私を包み込む。
先生の腕の中は温かくて、チョコレートの甘い香りがした。
「私が特別に想っているのは、ナエ……君だけだ。そうやって嫉妬をしてくれるのも、私を想ってくれているからだ、なんて……少し意地悪だったね」
先生は微笑みながら、いつもこうして私の身も心も包んでくれる。
私は子供だから、今日はもう少し困らせてみたい。
「……わざと、だったんですか? 本当に意地悪ですね」
「すまないね。大人になっても、イタズラ心は必要だと思っているんだ」
「ココアだけじゃ、許せないです。私を好きだという証拠を見せてください」
「フフフ、今日のナエは甘えん坊だ。そんな所も、かわいくて好きなんだけど」
あごをクイッと持ち上げられると、甘い香りと共に優しいキスが降ってきた。
幸せすぎて、体が震えそう。
「機嫌直してくれたかい? ナエの笑顔を見ないと、不安で眠れない」
「……こ、今回は、許します」
たとえ苦しくても
甘い 甘い 恋の海に
沈んで 落ちて 溺れていく
いつか貴方が
手を差し出して
微笑んでくれるのを
解っているから