解ける寂寥
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「改めて俺は竈門炭治郎だ。宜しくな」
「・・・如月 詩織です」
歩きながらも自己紹介を始める彼に自身の名だけを告げ、任務へと足を急かす。
「詩織と任務は初めてだな」
「・・・」
「詩織はどんな呼吸を使うんだ?」
「・・・」
「おーいー詩織、聞こえてるかー?」
私が足を速めて進んでいる事で会話を交わす気がない事は雰囲気で伝わっている筈なのに、彼は一方的な声掛けを止める気はないようだ。首を傾げながら覗いてきたその顔が少し鬱陶しい。
「聞こえてます。だから近付くの、止めて貰えますか」
「っ、すまない」
そう言って少し慌てて離れた彼の眉は八の字に萎えてしまっている。・・・私は悪くない、と思う。
そうして少しの沈黙がありながらも、私達の足が止まることはない。暫く歩いている気がするが、一向に鬼の気配は感じられない。
匂いで鬼を感知出来るらしい竈門くんの鼻も今は鬼に反応を示していないようだ。
という事は、鬼はきっと近くにいないのだろう。何とも悔しい事だ。
「なぁ詩織、少し休憩しよう」
「・・・まだ鬼を見つけられていないのに、ですか?」
「今は鬼の匂いもしない。それに禰豆子が出てきそうなんだ」
そう言われて空をを見上げれば、真っ暗な中に煌びやかに輝く光がいくつも見えて、知らずのうちに世界が夜を迎えている事に気付いた。
だが鬼は闇夜に活発な生き物であるが故、尚更探索を止める訳にはいかない事は竈門くんも分かっている筈なのだが、外界へ出たがっている妹を想っての言動なのだろう。
其れに、あの小さな箱の中にずっと居るというのも少し可哀想に思えたので、話を了承する事にした。
「分かりました。では手短に済ませて下さい。こうしている間も鬼は活発化しています」
「ありがとう!少し待っててくれ」
そう何時ものあの太陽の様な笑顔を私に向けると、背負っていた箱を下ろし妹の名を呼び掛ける。箱の中からスルスルと出てきた竹を口に加えた少女を見て『竈門くんが鬼の妹を連れている』という噂は本当だったのだと、初めて実感した。何せ人と関わらない私は、この噂の名高い少女すら見た事がなかったのだ。
少女は子供の姿からむくむくと元の大きさに戻り、暫く竈門くんに撫でられていたけれど、不意に私の存在に気付き、大きなその瞳を此方に向けて私をじっと見つめてきた。
その目にはまるで敵対心などは映っていなくて
。その事に私は酷く動揺し、思わず視線を逸らしてしまった。
殺すまいと敵意を向けてくる敵は幾度あれ、
そんな眼差しを向けてくる鬼は今までいなかった。そんな眼を向けてくる鬼は初めてでどう反応して良いのか、分からなかった。
''私が鬼に向けるべきは憎悪。忌むべき存在''
それは私の中で定めている絶対の理であり、
私を奮い立たせる唯一の言葉。
なのにそんな目を向けられると、困る。
ふと視線を戻せば、彼女が此方へ一歩踏み出すのが見えて、口から言葉が零れる。
「近付かないで下さい」
「っ!」
私の言葉に二歩目を踏み出そうとしていた彼女の足が止まる。
「改めてお二人に言います。
私は他人と関わりを持つ事をしたくありません。だから無闇に近付いたり、必要な事柄以外は話し掛けないで下さい」
「どうしてなんだ?」
竈門くんが真剣な眼差しを此方へ向けて言う。
「先もお話した通り、他人と関わりを持ちたくないからです」
「そうか。じゃあもう少し丁寧に話し掛けるようにする」
「・・・私の話を聞いていましたか?」
「勿論」
「でしたら何故その様な解答をしたのですか」
「・・・詩織、無理してるんじゃないか?」
「特にしていません」
「嘘だ!だったら、っーー!」
夢中に喋っていた竈門くんがピクリと停まった。それもその筈、この慣れた気配はーー
「鬼の匂いがする」
そう竈門くんが呟いたのを耳に取り込みながら、気配がする方角へと既に抜いていた剣と身体を向けた。
「・・・如月 詩織です」
歩きながらも自己紹介を始める彼に自身の名だけを告げ、任務へと足を急かす。
「詩織と任務は初めてだな」
「・・・」
「詩織はどんな呼吸を使うんだ?」
「・・・」
「おーいー詩織、聞こえてるかー?」
私が足を速めて進んでいる事で会話を交わす気がない事は雰囲気で伝わっている筈なのに、彼は一方的な声掛けを止める気はないようだ。首を傾げながら覗いてきたその顔が少し鬱陶しい。
「聞こえてます。だから近付くの、止めて貰えますか」
「っ、すまない」
そう言って少し慌てて離れた彼の眉は八の字に萎えてしまっている。・・・私は悪くない、と思う。
そうして少しの沈黙がありながらも、私達の足が止まることはない。暫く歩いている気がするが、一向に鬼の気配は感じられない。
匂いで鬼を感知出来るらしい竈門くんの鼻も今は鬼に反応を示していないようだ。
という事は、鬼はきっと近くにいないのだろう。何とも悔しい事だ。
「なぁ詩織、少し休憩しよう」
「・・・まだ鬼を見つけられていないのに、ですか?」
「今は鬼の匂いもしない。それに禰豆子が出てきそうなんだ」
そう言われて空をを見上げれば、真っ暗な中に煌びやかに輝く光がいくつも見えて、知らずのうちに世界が夜を迎えている事に気付いた。
だが鬼は闇夜に活発な生き物であるが故、尚更探索を止める訳にはいかない事は竈門くんも分かっている筈なのだが、外界へ出たがっている妹を想っての言動なのだろう。
其れに、あの小さな箱の中にずっと居るというのも少し可哀想に思えたので、話を了承する事にした。
「分かりました。では手短に済ませて下さい。こうしている間も鬼は活発化しています」
「ありがとう!少し待っててくれ」
そう何時ものあの太陽の様な笑顔を私に向けると、背負っていた箱を下ろし妹の名を呼び掛ける。箱の中からスルスルと出てきた竹を口に加えた少女を見て『竈門くんが鬼の妹を連れている』という噂は本当だったのだと、初めて実感した。何せ人と関わらない私は、この噂の名高い少女すら見た事がなかったのだ。
少女は子供の姿からむくむくと元の大きさに戻り、暫く竈門くんに撫でられていたけれど、不意に私の存在に気付き、大きなその瞳を此方に向けて私をじっと見つめてきた。
その目にはまるで敵対心などは映っていなくて
。その事に私は酷く動揺し、思わず視線を逸らしてしまった。
殺すまいと敵意を向けてくる敵は幾度あれ、
そんな眼差しを向けてくる鬼は今までいなかった。そんな眼を向けてくる鬼は初めてでどう反応して良いのか、分からなかった。
''私が鬼に向けるべきは憎悪。忌むべき存在''
それは私の中で定めている絶対の理であり、
私を奮い立たせる唯一の言葉。
なのにそんな目を向けられると、困る。
ふと視線を戻せば、彼女が此方へ一歩踏み出すのが見えて、口から言葉が零れる。
「近付かないで下さい」
「っ!」
私の言葉に二歩目を踏み出そうとしていた彼女の足が止まる。
「改めてお二人に言います。
私は他人と関わりを持つ事をしたくありません。だから無闇に近付いたり、必要な事柄以外は話し掛けないで下さい」
「どうしてなんだ?」
竈門くんが真剣な眼差しを此方へ向けて言う。
「先もお話した通り、他人と関わりを持ちたくないからです」
「そうか。じゃあもう少し丁寧に話し掛けるようにする」
「・・・私の話を聞いていましたか?」
「勿論」
「でしたら何故その様な解答をしたのですか」
「・・・詩織、無理してるんじゃないか?」
「特にしていません」
「嘘だ!だったら、っーー!」
夢中に喋っていた竈門くんがピクリと停まった。それもその筈、この慣れた気配はーー
「鬼の匂いがする」
そう竈門くんが呟いたのを耳に取り込みながら、気配がする方角へと既に抜いていた剣と身体を向けた。
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