幼馴染に転生しました【番外編】
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「はぁー。参ったなぁ」
ザァーっと音を立てながら水が地面に降りしきる。
今日は非番だったので、一通りの家事を済ませ夕飯の買い出しに出掛けたのだが、運悪く雨が振ってきてしまったのだ。
雨宿り出来そうな屋根を見つけて、私は急いでその中へと潜り込んだ。
天気予報でも云ってなかったのになぁと思いながらも、頭に残っている雨粒を叩く。
結構体が濡れてしまい、水が躰に纏わり付いて気分が悪い。
今日は帰ってお風呂コースだなぁなんて考えていると、傘をさしながら此方へ歩いてくる長身の砂色の外套が見えた。
その人物はすらりとした長い脚でどんどん近付いて来ると私の前で脚を止める。
顔が見えなかったので、恐る恐る声を掛けた。
「治くん・・・?」
「ふふっ。中たりだよ。流石私の詩織」
「吃驚した。怒ってるのかと思ったよ」
「ふふっ、ついね・・・。そうだ。はい此れ」
そう云って治くんは片手に持っていた傘を私へと差し出した。私は少し戸惑いながらも傘を受け取る。
「私の傘、持って来てくれたの?」
「今日は善い天気だったからねぇ。傘なんて持って行ってないだろうと思ってさ」
「有難う!全然止まないから如何しようかと思ってたの」
「其れは善かった。それと此れを羽織ると善い」
治くんはそう云って砂色の外套を脱いで私の肩へと掛ける。着ていたばかりの外套は彼の体温がまだ残っていて、人ならではの温かさを感じた。
「ごめんね。帰ったらちゃんと洗うから」
「構わないさ。其れとね詩織ーーーー
今日は桃色なんだね」
治くんが急に屈んで私の耳許へ唇を寄せるとそう呟いた。突然耳許で喋られたので凄く擽ったい。
それよりも、桃色って何の事なんだろう。
唐突な其れを不思議に思い、頸を傾げて治くんを見ると治くんは少しはにかんで私の少し下を見る。
その視線を追ってみると、視線の先は私の胸辺りに。
治くんが云った意味が判かった私は思わず声を上げて外套で前を隠した。
そんな私を見て治くんは小さく笑みを浮かべると、細くて長い綺麗な包帯の手を私へと差し伸べる。
「じゃあ帰ろうか。このままじゃ詩織が風邪を引いてしまうからね」
頷いてその手を取ると、冷たい筈の治くんの手が何だか何時もよりも暖かく感じた。
服も躰もずぶ濡れになったし色々と嫌な気分を味わいもしたけど、治くんの楽しそうな顔を見たら、こういう日も悪くないのかな。
なんて思ってしまう一日でした。