幼馴染に転生しました【番外編】
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「大変です!詩織さん!」
依頼を終えて探偵社に戻った私を出迎えてくれた敦くん。
額からは汗が流れているし、何だか慌てている。
「落ち着いて敦くん。一体何があったの?」
「は、はい!じ、実はですね・・・。太宰さんの様子が可笑しいんです!!」
「治くんが?また変な毒茸でも食べたのかな?」
「そう云う訳でもなさそうで・・・。兎に角来て下さい!詩織さんじゃないと無理です!!」
そう血相かいた顔で云われてしまえば、頷くしかない訳で。今の状況を呑み込めないまま、事務所へと向かった。
事務所へ繋がる扉を開くと、探偵社員の人達が皆気難しい顔付きをしていた。張り詰めた重い空気が一気に私へとのしかかる。
隣にいる敦くんを見ると、眉を下げて此方へと頷いた。
私は唾を飲み込んで恐る恐る椅子に座る彼へと近付いて声を掛けた。
「お、治くん・・・?」
彼は此方を向くと、何時もの様に微笑んだ。
「やぁ、詩織。待っていたよ」
彼の服装は正しく四年前の物だった。
「ほ、本当に治くん?」
「勿論、私だよ。疑うなんて酷いなぁ」
「だ、だって・・・貴方は・・・」
「うん。君を見て確信したよ。此処は私のと或る世界みたいだね」
そう云って椅子から立ち上がると、ゆっくりと私へ近付く。そしてそのまま頬へと手を添えられた。
「随分綺麗になったね詩織。私の知っているようで知らない、なんて・・・ね」
治くんは少し悲しそうな表情をすると、そのまま流れる様に私を抱き締める。
何時もと違う優しめなその抱き締め方に、戸惑いを隠せなかった。
「・・・治くん・・・?」
「何でもないよ。少し、嫌になった事があっただけだから」
そう云って私の肩へ顔を埋める治くん。
何時もより少し幼い治くんに何があったかは判らない。
けど、安らぎを求めているようにも見えて。
だから背中に手を回して、そっと優しくあやすように叩く。
すると、突然治くんの躰が徐々に透けてきた。帰る時間なのだろうと何となく悟った私はそっと治くんから離れる。
「治くん・・・」
「ふふっ。そんな顔しないでくれ給えよ。私は自分の時間に戻るだけで消えたりなどしない」
じゃあねと告げて、私の頬に音を立てて唇が離れる。
段々透けていた躰はそのまま消えていってしまってもう、跡形も残ってはいない。
最後に治くんの表情が泣きそうに見えたのは
気の所為だったのだろうかーーーーー。
ーー目を覚ますと、其処は何時もの風景だった。
どうやらあの世界から戻って来たらしい。
太宰に異能力は効かない以上、どのような原理であの世界に行けたのかは判らないが。
太宰は何かを探す様に目を迷わせるが、其れは直ぐに収まる。
探していた者を見つけた太宰は嬉しそうに笑みを浮かべた。
「ただいま、詩織」
寝台に横たわる彼女に向けたのは誰にも見せない特別な笑顔だった。
然し、彼女がその表情を見ることも、その言葉に何かを返すこともしない。
表情を変えることなく、静かに息をしている。
そんな彼女に聞かせるように、と太宰は語り掛ける。
「訊いてくれ給えよ詩織。今日は不思議な体験をしたのだ。なんとね、別の世界の君に逢ったのだよ。信じられないだろう?私も信じられないさ。
でもあの世界の君はとても綺麗になっていてね。あ、勿論今の君も綺麗だし、何より可愛らしいけどね」
そう云って彼女の手を取ってそっと唇を落とした。
「だからね、詩織。もう目を醒ましてくれないかい?」
"まだ私の気持ちさえ君に伝えきれていないのだから''
泣きそうになりながらも太宰は願うように詩織に問い掛ける。
その太宰を慰める者など今は居るはずもない。
唯一慰めてくれる愛しい少女の瞼が開くことなど、ありはしないのだからーーーーー。
依頼を終えて探偵社に戻った私を出迎えてくれた敦くん。
額からは汗が流れているし、何だか慌てている。
「落ち着いて敦くん。一体何があったの?」
「は、はい!じ、実はですね・・・。太宰さんの様子が可笑しいんです!!」
「治くんが?また変な毒茸でも食べたのかな?」
「そう云う訳でもなさそうで・・・。兎に角来て下さい!詩織さんじゃないと無理です!!」
そう血相かいた顔で云われてしまえば、頷くしかない訳で。今の状況を呑み込めないまま、事務所へと向かった。
事務所へ繋がる扉を開くと、探偵社員の人達が皆気難しい顔付きをしていた。張り詰めた重い空気が一気に私へとのしかかる。
隣にいる敦くんを見ると、眉を下げて此方へと頷いた。
私は唾を飲み込んで恐る恐る椅子に座る彼へと近付いて声を掛けた。
「お、治くん・・・?」
彼は此方を向くと、何時もの様に微笑んだ。
「やぁ、詩織。待っていたよ」
彼の服装は正しく四年前の物だった。
「ほ、本当に治くん?」
「勿論、私だよ。疑うなんて酷いなぁ」
「だ、だって・・・貴方は・・・」
「うん。君を見て確信したよ。此処は私のと或る世界みたいだね」
そう云って椅子から立ち上がると、ゆっくりと私へ近付く。そしてそのまま頬へと手を添えられた。
「随分綺麗になったね詩織。私の知っているようで知らない、なんて・・・ね」
治くんは少し悲しそうな表情をすると、そのまま流れる様に私を抱き締める。
何時もと違う優しめなその抱き締め方に、戸惑いを隠せなかった。
「・・・治くん・・・?」
「何でもないよ。少し、嫌になった事があっただけだから」
そう云って私の肩へ顔を埋める治くん。
何時もより少し幼い治くんに何があったかは判らない。
けど、安らぎを求めているようにも見えて。
だから背中に手を回して、そっと優しくあやすように叩く。
すると、突然治くんの躰が徐々に透けてきた。帰る時間なのだろうと何となく悟った私はそっと治くんから離れる。
「治くん・・・」
「ふふっ。そんな顔しないでくれ給えよ。私は自分の時間に戻るだけで消えたりなどしない」
じゃあねと告げて、私の頬に音を立てて唇が離れる。
段々透けていた躰はそのまま消えていってしまってもう、跡形も残ってはいない。
最後に治くんの表情が泣きそうに見えたのは
気の所為だったのだろうかーーーーー。
ーー目を覚ますと、其処は何時もの風景だった。
どうやらあの世界から戻って来たらしい。
太宰に異能力は効かない以上、どのような原理であの世界に行けたのかは判らないが。
太宰は何かを探す様に目を迷わせるが、其れは直ぐに収まる。
探していた者を見つけた太宰は嬉しそうに笑みを浮かべた。
「ただいま、詩織」
寝台に横たわる彼女に向けたのは誰にも見せない特別な笑顔だった。
然し、彼女がその表情を見ることも、その言葉に何かを返すこともしない。
表情を変えることなく、静かに息をしている。
そんな彼女に聞かせるように、と太宰は語り掛ける。
「訊いてくれ給えよ詩織。今日は不思議な体験をしたのだ。なんとね、別の世界の君に逢ったのだよ。信じられないだろう?私も信じられないさ。
でもあの世界の君はとても綺麗になっていてね。あ、勿論今の君も綺麗だし、何より可愛らしいけどね」
そう云って彼女の手を取ってそっと唇を落とした。
「だからね、詩織。もう目を醒ましてくれないかい?」
"まだ私の気持ちさえ君に伝えきれていないのだから''
泣きそうになりながらも太宰は願うように詩織に問い掛ける。
その太宰を慰める者など今は居るはずもない。
唯一慰めてくれる愛しい少女の瞼が開くことなど、ありはしないのだからーーーーー。