貴方とのさよならを
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ーーーー誰かが私を呼んでいる気がする。
とても必死で鳴いている様な、そんな声。
お願い、私の身体。もう一度だけ起き上がる力を下さい。
もう一度だけで、良いからーーー
すると先程まで暗闇に沈んでいた意識が嘘のように浮上していった。
あと一回ならと許可してくれたのかもしれない。
有難う私の身体。寧ろここまで持ってくれた事に感謝だ。
ゆっくりと目蓋を開くと、ずっと会いたかった人がいた。
「・・・お帰り、なさい。治さん」
「詩織っ・・・・・・!!」
治さんは私の姿を見ると顔をくしゃっと歪ませて
其の儘抱き寄せた。
久しぶりに感じた愛しい体温に思わず涙が溢れ出て顔からそっと落ちていく。
私も抱擁がしたくて何とか腕を動かして彼の背中に腕を回した。
死に際ではあったけど、矢っ張り私を救う神はいたらしい。
嫌悪していた神様に少しだけ感謝した。
治さんはそのまま私を離す事はせず、抱き寄せてくれた。其れが嬉しくてつい微笑んでしまう。
私が笑っているのに気付いた治さんは不思議に思ったのか、少し離れて私の顔を伺った。
「何故笑っているんだい?」
「だって何時も大人っぽいのに今の行動が年相応で
可愛くてつい」
「可愛いだなんて酷いね。私はもうそんな歳ではないのだけど」
「ふふふっ。ごめんなさい。許して下さいな。其れに貴方にずっと触れられるのは私には嬉しい事だったから」
彼の頬に手を添えるとその上から私の手を握ってくれる治さんにどうしても頬が緩んでしまう。
何だか、昔に戻ったみたいで嬉しかった。
そんな治さんはなんだか少しバツが悪そうに顔を俯かせて口を小さく開いた。
「詩織。私はね、君を騙していたんだ。好きでも無い女性の傍にいたのは・・・」
「任務、だったんだよね?」
治さんの目が再度驚きで零れてしまうんじゃないかと思うくらい見開かれる。
「何で、其れを・・・」
「ポートマフィアを抜ける前に首領が教えてくれたの。珍しいよねあの人がそんな事してくれるなんて」
そう。別に任務のことを療養する為に抜ける私に態々教えなくてもポートマフィアへは何も害はない。なのに教えてくれたのだ。
あれはきっと、あの人なりの優しさなのだろう。