貴方とのさよならを
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何かを急ぐ様に歩く太宰の背を引き止めるように
ひとつの着信音が大きく響く。
表示されているその名前を見て眉を寄せて少し乱雑に受話器の釦を押して太宰は電話を取った。
「やぁ太宰君。任務お疲れ様。今回は長かったね」
「ええ。ですがもう済みました。情報等は全て芥川君に任せています。」
「そうかね。其方は任せるよ。
それで太宰君に頼まれていた例の件だがね・・・」
「詩織に、何かあったんですか」
「ああ。何故か数日連絡が途絶えてしまっていてね。しっかり者の彼女なら有り得ないことだ。
ーーーもしかしたら君が恐れていた最悪の事態になっているかもしれない」
その言葉に足早に歩いていた太宰の足は止まった。否、止めらされた。
そんな事態になるなど有り得ない。あってはならない事だ。
脳と身体が理解する事を拒絶しているのが分かる。森さんにとってそんな事がか起こり得るわがないと、頭のどこかの片隅で信じている自分がいる。
「・・・どう云う事ですか。連絡が取れないなんて聞いてませんよ」
「すまないねぇ。だが、君のお陰でポートマフィアへの被害も大分減るだろう。迅く彼女の処へ行ってあげなさい」
「云われなくてもその積もりです。報告は後でします」
電話を切った太宰はすぐ様駆け出した。
時間が惜しかった。一秒でも速く詩織の傍に行く為に無我夢中で走った。
ただひたすらに彼女が生きていることを願いながら。
息が乱れて呼吸もままならない。こんなにも彼女の住む家は遠かっただろうかーー。
そうして詩織の家の玄関まで到達し、持っていた
合鍵で鍵を開ける。
中に入ると室内は驚く程に静かでまるで人がいるとは思えなかった。其の事実が何よりも太宰の中の不安をより一層掻き立てた。
芽生えた不安を拭う為に一歩ずつ居間へと移動する。
詩織がいるであろう部屋の中の全貌が見えたと同時に、瞳に映った光景に太宰は目を見開いた。
彼女は仰向けになって床に倒れており、以前逢った時よりも躯は痩せこけ、顔には生気を感じられなかった。
そうまるでーーーー。
「詩織っ!!」
冷え切った頭を回転させてすぐ様駆け寄って抱き起こし、太宰はひたすら彼女の名前を呼び続けた。
「詩織!しっかりするんだ!目を開けてくれ!詩織っ!!!」
揺すってみるが詩織は依然、目を開ける事はない。
「起きてくれ詩織!私はまだ・・・きちんと君に伝えられてない事があるんだ!
だから・・・目を、開けてくれ、詩織・・・」
流れた涙が詩織の頬へと一つ、また一つと零れ落ちていく。
詩織の左手にあったカーネーションの髪飾りが、
眩い月明かりに照らされて鈍く光を放っていた。