咳払いと共に現れた彼はこと如く敦くんを追い込んでいった。







私は二人が戦っている間に谷崎くんとナオミちゃんの応急処置を済ませる。




追い込まれた敦くんは虎化し再び彼と対峙した。








｢おのれ！｣








樋口ちゃんが敦くんに銃を乱射するもそれは中らない。それどころか敦くんの的になる。
龍之介くんが敦くんを倒すけどそれは幻影。
そして私は一瞬彼の気を反らせればそれでいい。





｢細雪｣

｢氷点｣






私は異能を発動し、地面を伝って龍之介くんの脚と手を凍らせた。





｢何故だ･･･！！何故、何故貴方がっ･･･！！｣





敦くんが龍之介くんに向かって攻撃をし出すと
すかさず龍之介くんも攻撃体制を執る。



二人とも懇親の一撃を相手にぶつける為に駆け出す。でももう彼が来てくれる。





｢はぁーい。そこまで｣





ほら。やっぱり来てくれた。



治くんが触れた瞬間二人の異能は解かれる。







｢貴方は探偵社のーー！何故此処に！？｣

｢美人さんの行動が気になっちゃう性質でね。
こっそり聞かせて貰ってた｣

｢な･･･真逆盗聴器！？いつの間に･･･｣







樋口ちゃんとの会話を済ませると治くんが
此方に歩いてくるのが見えた。




治くんが来てくれたらもう安心だなぁ。




そう思ったら私の視界が歪んできた。
ああ･･･もう暗い･･･



私の意識は段々と遠のいていった。














































ーーー

｢詩織！」


太宰は崩れ落ちる詩織の身体を傷に障らないように受け止める。
細かい外傷は多いものの、大きな怪我をしていない詩織を見て太宰は安堵した。









｢くくっ･･･太宰さん。今回は退きましょうーー。しかし人虎の首は必ず僕らが頂く｣

｢なんで？｣

｢闇市で七十億の懸賞金が懸かっている｣

｢へぇ！それは景気の良い話だね｣

｢探偵社には孰れまた伺います。
その時素直に七十億を渡すなら善し。渡さぬならーーー｣

｢戦争かい？探偵社と？良いねぇ元気で

やってみ給えよーーーやれるものなら｣





｢･･････ッ零細探偵社ごときが！我らはこの町の暗部そのもの！我らに逆らって生き残った者などいないのだぞ！｣

｢知ってるよ。その位。と云うか私はもう帰るよ。詩織を休ませたいし｣



｢はい。構いませぬ｣



｢君達も早く帰りなよ。
私の気が変わらない内にねーー｣



そう云う彼の目はこの世の物とは思えない程に
冷徹な目をしていた。



その目とは裏腹に腕の中に詩織を大事にそうに抱えて太宰はその場を後にした。