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*砂のように落ちる
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煌びやかな壁の装飾に、私のスパンコールがまぶされた黒と黄緑のセパレートタイプのドレス。
楽しい『周年祭』の時間が迫る中私は。
私だけは楽しそうなんて言葉が似合わない状態だった。
「ナワーブ……私本当に踊れないわよ……」
私は恨めしそうに彼、【ナワーブ・サベダー】に声をかける。
お酒がほんのりと入った彼は笑いながら「大丈夫だ。任せろ」と、景気よく言っている。
まさか夜中からパーティをするなんて。ダンスを躍ることになるなんて思わなかった。
……思いたくなかった。
私が不安そうに俯いているとナワーブが声をかける。
「……すまないことをしたとは思っている。本当は踊りたいけれど嫌なら俺の部屋にでも行こう」
さっきのお酒がはいった笑みとは違い、しっかりとした真剣な顔でこちらを見て私の手をとる。
なんだかズルいと感じてしまう。この男だからだろうか?
私は彼の手を振りほどくと
「……ナワーブに腹が立つから、恥をかかせる為に絶対出てやる」
と、戯言のように呟き。
呪いのように言葉を吐くと彼は少し困った顔をした。
「お前がそれでいいならいいよ」
なんて、私に甘い言葉を吐きながら彼は更に酒を煽った。
「飲み過ぎて後でフラフラしないでよ。足なんて踏んだら許さないからね」
釘は念入りに。彼に刺しておいた。
『ding−dong』
十二時であり零時でもある時間になり、ホールにある古びた柱時計が鐘を鳴らす。本来ならここで魔法が解けたかの灰被りは家に走って帰るのだろう。
私はそうはいかないらしい。魔法なんて解けやしないと、彼の視線がそんなふうに伝えてくる。
「お手をどうぞ。シンデレラ」
彼がほんのりと、甘美なワインの薫る手で私をダンスホールへと誘《いざな》おうとする。きっとこの手を握ってしまえば私はクレスさんと二度と話が出来なくなる。
そんな気がする予感と同時に、なぜ今になって【彼】の事が頭をよぎったのかはわからない。
けれども今になってクレスさんの事が心配になってきた。
「……どうかしたのか?」
ナワーブが私に声をかけ甘く微笑む。たったそれだけだった。ほんとにそれだけだったが女の勘が働いたのだと思う。
私はテーブルに置いてあったパーティークラッカーを手に取ると彼に向けて放った。
……私がきちんと覚えていればこの一見無駄な行為は彼によく効くはずだ。
色とりどりな紙吹雪の中彼、ナワーブ・サベダーは身体を震わせ佇んでいる。
(やったか?)
私が彼の様子を伺いながら動こうと足を一歩動かした時だった。
ーパキン
左の奥歯がかける音がして、左頬に鋭い痛みが走る。
「うぁあああ!」
錯乱したナワーブの声が聞こえる。
私はナワーブに何度も、何度も殴られる。顔だけじゃない。鳩尾《みぞおち》、肩、腹。いくつもの箇所を殴られ続けた。
ドンと酷い音とともに鳩尾に強烈な一撃がはいる。
私の意識はこの一撃によって彼方へと飛ばされ、床に体が叩きつけられる。
「ちょっと! 何しているの‼︎」
ダイアー先生の声が聞こえる。きっと物音につられてやってきたのだろう。他にも沢山の人の足音が聞こえる。
「おいナワーブ! 何してるんだ!」
ウィリアムさんの声がしてナワーブが止められる物音も聞こえる。
完全に意識が飛ぶ前に聞きなれた、男性にしては高い声が部屋の中に響く。
「 [#nama1]! 」
嗚呼。
……クレスさんだ。