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*砂のように落ちる
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カーテンから覗く昼日《ひるび》で目が覚める。
……寝過ぎた。
すぐにそう思った。やってしまった。
僕はよく寝過ぎることが多い。ダイアー先生によく叱られているのがいい証拠だ。
正直怒られるのがわかっているので起きるのが億劫になる。このまま起きなくてもいいんじゃないかとさえ考える。
不意に寝ていたベッドで何かがもぞもぞと動いた。
それは僕ではない。
「……もう朝?」
寝ぼけ眼の彼女がシーツをめくり顔を出す。柔らかそうな暗めの色の髪に寝癖がついていてとても可愛い。
「いや、もう昼だが」
僕が彼女の頭を撫でながら伝えると間抜けな声が上がる。
「ぅえ? もうお昼なの?」
「……おはよう、僕のアイリス」
隙間から照る昼日が彼女を明るみに誘き出す。のそのそとベットから起きてきて、皮張りの椅子に腰を下ろした。
しかし、眠気には勝てなかったらしい。背もたれに寄りかかったと思ったら、そのまま寝息をたて始めた。
僕が彼女に話しかけても「うん」と気の抜ける返事が返ってくる。
「……」
仕方がないので彼女の背に腕を回す。ゆっくりと起こさぬように抱き上げ、ベッドへと連れて行った。
ーーちり
彼女の胸元で、昨日渡したネックレスが音を鳴らす。
金属の擦れる音で起きるかと思ったがそんな事はなかった。そのまま寝息をたて寝続けている。ベットに運び終えても彼女は眠りからは覚めない。
……あと一時間ほど寝ていても怒られないだろうか?
「おやすみ……」
僕は彼女の横に再び潜り込む。
潜り込んだ拍子に彼女がまた薄目を開けた。
「寝るの……?」
まだ寝ぼけた、ぽやぽやとした甘い声で僕に囁く。
「ああ。また眠ろう」
そう声をかけると嬉しそうににんまりと笑うと再び眠りに落ちる。つられて僕も瞼を閉じる。だんだんと訪れる眠気に意識は手放されてゆく。
嗚呼、僕の心は今正にこの眠りのように。
砂時計の砂のように再び彼女に堕ちてゆく。