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*砂のように落ちる
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私が目を覚ますと二ヶ月間、寝る時によく見ていた自室の天井が目に入る。
……誰かが私を部屋まで運んで、ベッドに寝かせてくれたのだろう。
あのスパンコールのドレスは脱がされシルクのネグリジェに変わっていた。まだ顔はジンジンとした熱ともに貫くような痛みが襲う。しかししっかりとした処置が施されており、思っていたより痛みは小さく抑えられている。
この治療はダイアー先生だろう。彼女には後でお礼の品を持って行かなければ。
……『彼《ナワーブ》』には悪い事をしたが私なりの最善をしたと思っている。彼にも後で一応謝っておこう。
そう考えながら身体をベッドから起こすと、視界の端で何かが震えるのが目に入った。チラリと目だけでそちらを見ゆると白い頭の『彼』が居た。
「お、起きたのか……」
安堵《あんど》した声とともに不安そうな音が聞こえる。彼…クレスさんはいつも下がった眉をいっそう下げて、起き上がった私をベッドの脇から硬そうな木製の椅子に座って見ていた。
「クレスさんが運んでくれたんですか?」
私がそう言うと彼は首を横に振った。何食えぬと言いたげな顔をしていたのが印象的だった。
「いや、僕じゃない。運んだのは納棺師だ」
「納棺師⁉︎ ……め、珍しいもあったものね」
私がクレスさんの言った事に目を丸くしていると彼も変わらないがいつもよりかは柔らかい表情で「僕もだ」とつづけた。
「…まだ傷は痛むか?」
彼は言葉のふいに暗い顔して私の顔や腕に巻かれた包帯を見る。私の腕や顔には大量の包帯やガーゼが当てられ、巻き付けられている。それでも包帯の隙間から見える青黒くなった皮膚が出来事を語っていた。
正直動かし方によっては痛むがクレスさんを悲しませないために、はにかんでありもしない力こぶをつくる。
「大丈夫ですよ。体は結構頑丈なので!」
クレスさんは私の言葉に真偽を確かめるような目で「そうか」とのみ言って溜息をついた。
……しん、と部屋の中に突如静寂が訪れる。クレスさんは何かを考えるように俯いたまま動かなくなってしまった。
このままではいけない。
そう思った私は苦し紛れに思ったことを言葉にして紡いだ。
「クレスさん、私少し散歩がしたいです」