the girl has cursed
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これは私がポートマフィアに入る前の、入るきっかけとなった話である。
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「お姉ちゃん」
足元から聞こえるどこかたどたどしい発音で自分を呼ぶ子供に目線を合わせるようにしゃがんだ。
「なあに、敦」
しゃがみこむと目の前の子供より低くなってしまった自分に、今度は敦が合わせるようにしゃがみこんだ。
これじゃあ意味が無いじゃないか、なんて事は微塵も思わず。
また低くなった自分より一回り小さな頭を撫でるように触れた。
私達はいわゆる”孤児”、というやつだった。
物心がついた頃には既に両親の姿はなく、食事や生活の補助をしてくれる彼等が「お父さん」や「お母さん」と呼ばれる類の者でない事を理解した日も泣いて自分の境遇を嘆くことは無かった。
私より先に泣きじゃくる自分より小さな子供を前に、私の涙は引っ込んでしまったからだ。
決して裕福でない孤児院暮らしも弟がいてくれたから辛くはなかった。
だがそんなささやかな幸せもすぐ崩れる事になる。
昼ご飯を食べた後の自由時間
いつものように敦と二人、砂場で遊んでいると突如上から声が降ってきた。
【異能を持った子供というのはお前か】
黒い服、黒い眼鏡、どう考えてもこの孤児院の者でないだろう。
太陽の日差しから私達を遮るよう立つこの大柄な男の表情は影になってよく見えなかった。
“怖い”
無性にそう思った。
隣を見やれば弟が不安そうに私の顔を見ている。
敦を自分の背に隠すように前に出て男に問うた。
【お兄さんはだれ】
【ポートマフィア、と呼ばれている組織の者だ】
【何をしにきたの】
【異能力者の勧誘だ】
とっさに嘘だ、と分かった。
肯定を一文字でも口にしたら……、
有無を言わさず連れていかれる未来が脳裏に浮かぶ。
勧誘とは言っているが拒否権など端から存在しないのだろう。
私達はちがう。とだけ短く伝えると、それを聞いた男はこれでもかという程顔をしかめた
【…おいどういう事だ】
その問いかけに答えるようにやって来たのはこの施設の職員だった。
【いっいいえ、僕は確かに見ました!その隠れている子供の手がまるで獣のように変化したのを!】
【先生!】
なんで、
信じられない、
私たちを売ったのか、
言いたいことは沢山あるのに浮かんだ言葉は傍から全て口の中に戻っていく。
混乱を隠せない私をよそに黒服から金を受け取った職員はそそくさと施設の中へ戻ってしまった。
【じゃあコッチだな】
男は私の背から奪うように敦を引き剥がすとその腕に抱え込んだ。
咄嗟に短い腕を伸ばそうとするが、取り返そうにも届かない。
このままではまずい。
返して!返してよ!!、私の必死な声色で何かを悟ったのか敦が男の腕の中で暴れまわる。
これ好機に脚へとしがみ付く。両腕を外すにも外せない男は私を振り払おうと必死に脚をバタつかせるが絶対離してなるものかとより腕に力を込めた。
【どうした】
自分がしがみ付いている男のものとはまた違う声がする
【織田さん!…チッズボンを引っ張るな!…すみませんこの餓鬼が邪魔をして…あッオイ!!】
黒服の改まった言葉遣いから上司だと察した私はしがみつくのをやめて、織田と呼ばれた男の前に飛び出す。
【返して!弟を返して!!異能力なら私も持ってる!】
訴えるように必死に叫ぶ私とは反対に男の声は至って冷静だった
【コイツはお前の弟か】
【そうよ!】
【返してほしいか】
【そうよ!!】
何を言ってるのか、当たり前じゃないか。
唯一人の家族なのだ。この世の誰より大切なんだ。
言っても分かってもらえない気がして、私はそれを言葉にするのではなく男の脚を両手を丸めて叩くことで訴えた。
【そうか。ならお前が代わりに入れ】
男の膝を叩いてた手が止まる。
何を言ってるのか、耳に入ってきた言葉が信じられなかった。
【お前も異能力者なんだろう】
【幸い子供が2人とは聞いてない】
…そうだ、この男も所詮はポートマフィアなのだ。子供に対する甘さなんてもの持ち合わせてる筈がなかった。
どこかでこの男なら見逃してくれるのではないか、と淡い期待を抱いていた自分に嫌気が差す。
【……分かった。その代わり弟には手を出さないで】
【約束しよう】
そうして私は自分を身代わりにポートマフィアに入ることを承諾した。
私が12歳、敦が8歳の時だった。