【大逆転裁判】ヤマトナデシコ(バロック・バンジークス)
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
バロック・バンジークス卿の元で学び始めてから半年ほど経つ。
ハート・ヴォルテックス閣下からお話をいただいた時は少し驚いたが家と学校から離れて過ごせること、何より倫敦で最も優秀とされる検事の元で学べる何よりのチャンスをいただけたことに感謝している。
貴族の令嬢でありながら社交界に全く顔を出すこともなく、学校にある図書館で本の虫である私は貴族の間では異端的存在だった。見た目で謂れのない誹謗中傷を受けたこともある。
「資料、作成できました。こちらに置いておきます。」
「ご苦労。」
バンジークス様と過ごす日々にも慣れてきた。
こちらが作成した資料に険しい顔をしながらサラッと目を通し、ただうなづいてこの言葉を放つだけ。
初めてお会いした時は私の黒い髪と瞳に密かな憎悪を感じたがそれは初めだけだった。
いつものように差別的扱いを受けると思っていたため少し驚いた。そればかりか私の体のことまで気遣ってくれる。
倫敦でこのような気遣いを受けたのは数年ぶりで噂で聞いていた〈死神〉の話で本当だったのは何人も凍てつかせる瞳と立ち振る舞いのみだった。
「バンジークス様、今お時間よろしいでしょうか?」
「問題ない。」
過去のバンジークス様の担当の資料で気になる点もすぐに教えてくれる。仕事の邪魔をしないタイミングを伺っていると察しがいいのかお茶の準備を従者に指示して空き時間を作ってくれる。
「私は一度教えたことは二度は言わない。一度で覚えることだ。」
「承知いたしました。」
ノートに要点をまとめながらバンジークス様の担当した事件の詳細な話と要点をまとめていく。彼の思考パターンや重点にして考えることをまとめていくのはとても楽しい。生きた情報を積み重ねていくことは私にとって唯一楽しさを感じる時間だ。
そんな私の様子をじっと観察するように見つめながら注がれたカップに口をつけてしばらく考え込む。そしてふっと口を緩めたあとこちらに顔を向ける。
「……リリーよ。そなたも裁判に来てみるか?」
「えっ…今なんと?」
思いがけない提案に驚いてしまい思わず走らせていた思考とペンを止めた。上ずった声が出てしまう。司法学生として裁判を傍聴席から聞いていたこともあったが、バンジークス様の担当している事件を見たことはなかった。
「…そこまで驚くほどのことでもないだろう。貴様は私の元で学んでいるのだ。明後日に大法廷に向かう。今はまだ隣に立たせることはできぬがな。」
「…申し訳ございません。…その、…思ってもないご提案だったものですから。」
いきなりの提案に取り乱してしまったことに謝罪し、すぐに予定変更したことをボードへ書き込んだ。
ーーー楽しみだ、と思う予定ができたのはいつぶりだろう。予定ボードに赤い印をつけて明後日の資料に目を通す。バンジークス様から学ぶためには事件の情報は頭に叩き込んでいかねば。
資料に目を通し始めた私にバンジークス様は何も言わずただ黙って見つめいた。そんな様子に明日の裁判の展開を思考することで頭がいっぱいになった私は気づくこともなく時間だけが流れていった。
ーーーーー
私の提案でリリーを大法廷に連れて行くことにした。
初めは驚いていたが様子を見るに明日の裁判を楽しみにしているようだ。ボードに目をやるといつも重要な事項の時のみ使っている赤いマークでやや大きめの字で“オールドベイリー”と書いてあった。
彼女は私の話を熱心に聞き一言も漏らさぬ勢いで全てを吸収しようとしている。閣下はかつて後見人を育てるように私に話をしていたこともあったが、私の下についた者たちは皆数ヶ月で根を上げていく。
彼女の黒い瞳が思考をするたびに揺れる。知的好奇心が人一倍強い故の彼女の癖のようなものだろう。人形のような決まった反応しかしない彼女が唯一心を見せる時が彼女からの質問に答える時間である。
それにリリーと過ごすうちに分かったことだが、彼女は欲がないわけではない。むしろ欲に忠実な方なのだろう。資料に目を通し専門書を片手に仕事をする彼女は初めの頃よりイキイキとしているように感じる。
楽しみにしている、と初めて彼女は自分の感情を口にした。感謝の言葉はたくさん聞いたが喜怒哀楽に関することを話すことがなかったので少々驚いた。
明日の大法廷は彼女にとってどう映るのだろうか?そう思考を巡らせながら被告人の名前を指でなぞる。
ハート・ヴォルテックス閣下からお話をいただいた時は少し驚いたが家と学校から離れて過ごせること、何より倫敦で最も優秀とされる検事の元で学べる何よりのチャンスをいただけたことに感謝している。
貴族の令嬢でありながら社交界に全く顔を出すこともなく、学校にある図書館で本の虫である私は貴族の間では異端的存在だった。見た目で謂れのない誹謗中傷を受けたこともある。
「資料、作成できました。こちらに置いておきます。」
「ご苦労。」
バンジークス様と過ごす日々にも慣れてきた。
こちらが作成した資料に険しい顔をしながらサラッと目を通し、ただうなづいてこの言葉を放つだけ。
初めてお会いした時は私の黒い髪と瞳に密かな憎悪を感じたがそれは初めだけだった。
いつものように差別的扱いを受けると思っていたため少し驚いた。そればかりか私の体のことまで気遣ってくれる。
倫敦でこのような気遣いを受けたのは数年ぶりで噂で聞いていた〈死神〉の話で本当だったのは何人も凍てつかせる瞳と立ち振る舞いのみだった。
「バンジークス様、今お時間よろしいでしょうか?」
「問題ない。」
過去のバンジークス様の担当の資料で気になる点もすぐに教えてくれる。仕事の邪魔をしないタイミングを伺っていると察しがいいのかお茶の準備を従者に指示して空き時間を作ってくれる。
「私は一度教えたことは二度は言わない。一度で覚えることだ。」
「承知いたしました。」
ノートに要点をまとめながらバンジークス様の担当した事件の詳細な話と要点をまとめていく。彼の思考パターンや重点にして考えることをまとめていくのはとても楽しい。生きた情報を積み重ねていくことは私にとって唯一楽しさを感じる時間だ。
そんな私の様子をじっと観察するように見つめながら注がれたカップに口をつけてしばらく考え込む。そしてふっと口を緩めたあとこちらに顔を向ける。
「……リリーよ。そなたも裁判に来てみるか?」
「えっ…今なんと?」
思いがけない提案に驚いてしまい思わず走らせていた思考とペンを止めた。上ずった声が出てしまう。司法学生として裁判を傍聴席から聞いていたこともあったが、バンジークス様の担当している事件を見たことはなかった。
「…そこまで驚くほどのことでもないだろう。貴様は私の元で学んでいるのだ。明後日に大法廷に向かう。今はまだ隣に立たせることはできぬがな。」
「…申し訳ございません。…その、…思ってもないご提案だったものですから。」
いきなりの提案に取り乱してしまったことに謝罪し、すぐに予定変更したことをボードへ書き込んだ。
ーーー楽しみだ、と思う予定ができたのはいつぶりだろう。予定ボードに赤い印をつけて明後日の資料に目を通す。バンジークス様から学ぶためには事件の情報は頭に叩き込んでいかねば。
資料に目を通し始めた私にバンジークス様は何も言わずただ黙って見つめいた。そんな様子に明日の裁判の展開を思考することで頭がいっぱいになった私は気づくこともなく時間だけが流れていった。
ーーーーー
私の提案でリリーを大法廷に連れて行くことにした。
初めは驚いていたが様子を見るに明日の裁判を楽しみにしているようだ。ボードに目をやるといつも重要な事項の時のみ使っている赤いマークでやや大きめの字で“オールドベイリー”と書いてあった。
彼女は私の話を熱心に聞き一言も漏らさぬ勢いで全てを吸収しようとしている。閣下はかつて後見人を育てるように私に話をしていたこともあったが、私の下についた者たちは皆数ヶ月で根を上げていく。
彼女の黒い瞳が思考をするたびに揺れる。知的好奇心が人一倍強い故の彼女の癖のようなものだろう。人形のような決まった反応しかしない彼女が唯一心を見せる時が彼女からの質問に答える時間である。
それにリリーと過ごすうちに分かったことだが、彼女は欲がないわけではない。むしろ欲に忠実な方なのだろう。資料に目を通し専門書を片手に仕事をする彼女は初めの頃よりイキイキとしているように感じる。
楽しみにしている、と初めて彼女は自分の感情を口にした。感謝の言葉はたくさん聞いたが喜怒哀楽に関することを話すことがなかったので少々驚いた。
明日の大法廷は彼女にとってどう映るのだろうか?そう思考を巡らせながら被告人の名前を指でなぞる。
2/2ページ