【大逆転裁判】ヤマトナデシコ(バロック・バンジークス)
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『リリーブラウンと申します。
不束者ではございますが、何卒よろしくお願いいたします。』
外にいる鳥の声が聞こえるほど静かな部屋で1人の少女と漆黒の紳士、バロック・バンジークス卿は対峙していた。
逆光でぼやけて少女からはよく見えていない、
少女の身長2人ほどあるのではないかと疑うほどの巨体が友好的ではない目を向けているのにも関わらず少女は優雅にお辞儀をする。
彼女の身に着けているドレスは上質なものだろう。身に着けている衣服だけでなく立ち振る舞いを見るに貴族の出であることは間違いない。
深々と90度ほどのお辞儀をすると肩より長い、……異国の血が混じっていることが一目でわかる、黒髪が重力に従いサラサラとこぼれ落ちた。
「ブラウン家の子女よ、其方の話はハート・ヴォルテックス閣下から聞いている。……14歳にして司法学生主席である優秀な者がいると。」
目の前の書類にチラリと目を向けて再び少女の方に視線を戻す時ちょうど顔を上げた彼女の黒い瞳と目があった。
黒い瞳と目が合った瞬間、衝動の抑えが効かないほど自分の心臓が騒ぐのを感じる。顔に出さないようにするのが精一杯であるかのように眉間の皺を寄せる彼を少女は見つめた。
「私もハート・ヴォルテックス閣下から聞いております。…今倫敦で学ぶべきことを教えられるのは貴方しかいない、と。」
凛とした声を放つわりに表情がひとつも変わらない少女は人形のようだ感じた。彼女の素性はハート・ヴォルテックス閣下からはひとつも情報がない。強いて言うなら司法学生であるということだけだ。
「……」
「バンジークス様が足手まといと判断されるまでお傍で学ばせていただけないでしょうか?」
数分ほどの静寂後、諦めたように男が口を開いた。
「……生半可な覚悟で私の元に来たわけではないということだな。…いいだろう、その目、その耳、その心で私から学びを得るがいい。」
「ありがとうございます。バンジークス様。」
これが彼女と〈死神〉の出会いであった。
ーーーーーーーーーー
「バンジークス様、3日後の裁判の資料と関連する書類をまとめました。あと、こちらは中央刑事裁判所からのメール便です。重要な書類を上から揃えてありますので下の書類はお時間ができたら目をお通しください。」
「ご苦労。」
書類を受け取るとリリーは追加できた資料と今後の予定をリストにまとめてボードに貼っている。
彼女が来てから3ヶ月、初めは私の仕事を用意していた机と椅子から黙って見ているだけだったが1週間後には私の仕事の流れを把握し、邪魔にならないように書類や私の作成した資料を届けるようになり、今では私が優先すべき仕事を把握しているようだ。
「バンジークス様、15分ほどで戻ってまいります。帰りに必要なものがあればお申し付けください。」
「今はよい。雪が降る前に戻るように。」
「お心遣いありがとうございます。行ってまいります。」
郵便物を届けてくると執務室から彼女が出て行くと再び静寂が訪れ、一息つこうと窓の外へ視線をむける。
彼女はちょうど建物から出たタイミングのようだ。風が吹いているのか、長い黒髪を抑えながら郵便局のもとへ歩き始めた。
リリーの仕事ぶりは完璧であった。司法学生の主席だとは聞いていたがここまで優秀であるとは思ってもいなかった。
お陰で仕事の処理速度があがり、今までの倍の量の仕事が舞い込んでくる始末だ。これがヴォルテックス卿の狙いだと言われたらまんまと嵌められたなと素直に認めるだろう。
席の主人がいなくなった机をみていると彼女が持ち込んだであろう物が少し増えている。
彼女と数ヶ月過ごしてわかったことだが、欲というものが年頃の娘に比べて極端に少なく感じる。
こちらが言わなければ腹を空かせていることにも気づかずに仕事をし続け、休めと言わなければいつまでも機械のように体を動かし続けそうだ。
流石に自分の執務室で倒れられてはヴォルテックス卿に監督不届と評価されるだろう。
彼女の机の上には砂時計が置いてある。これは彼女が来たばかりの頃、彼女に命令としてこの砂時計が落ち切ったら用意した昼食を摂るようにさせたのだ。自分のいない時のことを考えてメイドにも伝えてあるが。
彼女は私のもとで学ぶようになってからも一切の感情をださなかった。毎日淡々と仕事をこなし、時間の鐘が鳴れば退出するそんな日々で彼女のことを少しも知らない。
机の横に彼女のバックが置いてある。そこには少し煤汚れた犬のぬいぐるみがついている。初めて年頃の娘らしいものを見つけた。
近付いてよく見てみるとそれは少し古い人形のようで汚れは布が焼けた後のようだった。
「…失礼いたします。ただいまもどりました。」
「ご苦労。早かったな。」
ばっと自分の伸ばした腕を引っ込めながら何事もなかったように自分の席に戻る。
勝手に淑女の持ち物を観察していたことに罪悪感があるが、こちらを気にせず席に着く彼女に安心し、自分の仕事に戻った。
不束者ではございますが、何卒よろしくお願いいたします。』
外にいる鳥の声が聞こえるほど静かな部屋で1人の少女と漆黒の紳士、バロック・バンジークス卿は対峙していた。
逆光でぼやけて少女からはよく見えていない、
少女の身長2人ほどあるのではないかと疑うほどの巨体が友好的ではない目を向けているのにも関わらず少女は優雅にお辞儀をする。
彼女の身に着けているドレスは上質なものだろう。身に着けている衣服だけでなく立ち振る舞いを見るに貴族の出であることは間違いない。
深々と90度ほどのお辞儀をすると肩より長い、……異国の血が混じっていることが一目でわかる、黒髪が重力に従いサラサラとこぼれ落ちた。
「ブラウン家の子女よ、其方の話はハート・ヴォルテックス閣下から聞いている。……14歳にして司法学生主席である優秀な者がいると。」
目の前の書類にチラリと目を向けて再び少女の方に視線を戻す時ちょうど顔を上げた彼女の黒い瞳と目があった。
黒い瞳と目が合った瞬間、衝動の抑えが効かないほど自分の心臓が騒ぐのを感じる。顔に出さないようにするのが精一杯であるかのように眉間の皺を寄せる彼を少女は見つめた。
「私もハート・ヴォルテックス閣下から聞いております。…今倫敦で学ぶべきことを教えられるのは貴方しかいない、と。」
凛とした声を放つわりに表情がひとつも変わらない少女は人形のようだ感じた。彼女の素性はハート・ヴォルテックス閣下からはひとつも情報がない。強いて言うなら司法学生であるということだけだ。
「……」
「バンジークス様が足手まといと判断されるまでお傍で学ばせていただけないでしょうか?」
数分ほどの静寂後、諦めたように男が口を開いた。
「……生半可な覚悟で私の元に来たわけではないということだな。…いいだろう、その目、その耳、その心で私から学びを得るがいい。」
「ありがとうございます。バンジークス様。」
これが彼女と〈死神〉の出会いであった。
ーーーーーーーーーー
「バンジークス様、3日後の裁判の資料と関連する書類をまとめました。あと、こちらは中央刑事裁判所からのメール便です。重要な書類を上から揃えてありますので下の書類はお時間ができたら目をお通しください。」
「ご苦労。」
書類を受け取るとリリーは追加できた資料と今後の予定をリストにまとめてボードに貼っている。
彼女が来てから3ヶ月、初めは私の仕事を用意していた机と椅子から黙って見ているだけだったが1週間後には私の仕事の流れを把握し、邪魔にならないように書類や私の作成した資料を届けるようになり、今では私が優先すべき仕事を把握しているようだ。
「バンジークス様、15分ほどで戻ってまいります。帰りに必要なものがあればお申し付けください。」
「今はよい。雪が降る前に戻るように。」
「お心遣いありがとうございます。行ってまいります。」
郵便物を届けてくると執務室から彼女が出て行くと再び静寂が訪れ、一息つこうと窓の外へ視線をむける。
彼女はちょうど建物から出たタイミングのようだ。風が吹いているのか、長い黒髪を抑えながら郵便局のもとへ歩き始めた。
リリーの仕事ぶりは完璧であった。司法学生の主席だとは聞いていたがここまで優秀であるとは思ってもいなかった。
お陰で仕事の処理速度があがり、今までの倍の量の仕事が舞い込んでくる始末だ。これがヴォルテックス卿の狙いだと言われたらまんまと嵌められたなと素直に認めるだろう。
席の主人がいなくなった机をみていると彼女が持ち込んだであろう物が少し増えている。
彼女と数ヶ月過ごしてわかったことだが、欲というものが年頃の娘に比べて極端に少なく感じる。
こちらが言わなければ腹を空かせていることにも気づかずに仕事をし続け、休めと言わなければいつまでも機械のように体を動かし続けそうだ。
流石に自分の執務室で倒れられてはヴォルテックス卿に監督不届と評価されるだろう。
彼女の机の上には砂時計が置いてある。これは彼女が来たばかりの頃、彼女に命令としてこの砂時計が落ち切ったら用意した昼食を摂るようにさせたのだ。自分のいない時のことを考えてメイドにも伝えてあるが。
彼女は私のもとで学ぶようになってからも一切の感情をださなかった。毎日淡々と仕事をこなし、時間の鐘が鳴れば退出するそんな日々で彼女のことを少しも知らない。
机の横に彼女のバックが置いてある。そこには少し煤汚れた犬のぬいぐるみがついている。初めて年頃の娘らしいものを見つけた。
近付いてよく見てみるとそれは少し古い人形のようで汚れは布が焼けた後のようだった。
「…失礼いたします。ただいまもどりました。」
「ご苦労。早かったな。」
ばっと自分の伸ばした腕を引っ込めながら何事もなかったように自分の席に戻る。
勝手に淑女の持ち物を観察していたことに罪悪感があるが、こちらを気にせず席に着く彼女に安心し、自分の仕事に戻った。
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