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顔合わせ

あれから何年経っただろうか。別のチームに移動することになった。目的地へ向かい、伝えられた特徴の男の横に座って、お互いに合言葉を伝える。それで理解したのか、彼はわざわざわたしの頭を撫でてから道を歩き始めた。

「悪いな、歩きで。その靴新品なんだろ 」
「別に。裸足だと大変だろうってもらったやつだから 」

服はその辺の家から勝手に拝借したものを着ているだけ。だけど靴はパンプスしかなく、その靴で駆け回ると足が痛くなるだろうから履いていなかった。当然靴下も破けるから最初から履いていなくて、昨日バーで引っ掛けたおねーさんに靴と一緒にもらった。

「それで先輩、あんた名前は?」
「ホルマジオだ。先輩は付けなくていいぜ 」
「そう 」

会話が終了した。……仕方ないのだ、わたしにトーク力などないのだから。

「おまえは?」
「え?」
「名前だよ名前。着くまで話でもしようや 」
「はあ…… 」

なんと名乗ればいいのだろうか。今までに呼ばれたのはいくつかあるけど、蔑称がほとんどだ。流石にそれを伝えるわけにもいかないだろう。

「……しょーがねーなぁ。教えたくねえならそれでもいいけどよ、アジトについたら嫌でも聞かれるぞ 」
「別にそういうわけじゃないけど 」
「じゃああれか?野良猫みてえに名前が多いとか 」
「そんなところ 」
「なら偽名に困ることはねえな 」

ここだ、と、あるアパートに案内された。

「見た所普通のアパートなんだけど 」
「見た所はな。ここのアパート全部が俺ら暗殺チームのモンだ 」
「…………暗殺?」
「おう 」
「聞いてないんだけど 」
「聞いてなくてもしょうがねえんだよ 」

まあすぐ慣れるだろ、とまた頭を撫でられた。

「頭撫でないでもらえる?」
「っと、悪い。猫飼ってるもんでついな…… 」
「猫とわたしじゃあ大きさが違いすぎるでしょ 」
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ベネ