短文集
人々の喧騒が遠くで聞こえる。祭囃子の音もしているから、近所では祭りが開催されているのだろう。まだ昼間だというのに平和な限りだ。
コツコツと鳴る靴音は大通りの人込みに紛れていた。
「良く似合っているじゃないか」
一歩後ろを歩く顔を振り返り、雪花は気だるげな笑みを浮かべた。視線の先には普段の私服とは様子の違う、着飾『らせられた』眞白がいた。
「落ち着かねぇ」
眉間に皺をよせ、そう言うや否や手早く首元を絞めつけるボタンを一つ外す。雪花は視界に留めると前を向き、言葉を返す。
「そういわないでくれ。絶好のデート日和にとんでもないラフな私服で来られても興ざめだろう?君の私服のセンスにあれこれ言うつもりは全くないがTPO、タイム・プレイス・オケージョンを考えた服装の方がいい」
「デートじゃねぇよ」
間髪入れずに呆れたような声がした。雪花は足をゆるめ、愉し気に唇をなぞった。
「そうだったね。じゃあこれは『散歩』だ」
後ろから絶えず注がれていた鋭い視線の気配がそれた。笑ってしまいそうなのをこらえて再び元のスピードに戻す。
「着飾らせた犬を見せびらかしたいのは飼い主の本能さ」
相変わらず眞白は何も言わない。ただひたすらに視線が注がれている。注視するような、獣が相手を見つめるような、そんな『いつも通り』の重苦しさだ。
「つきあってくれるだろう。【僕のかわいいシロ】」
今度こそ笑いながら雪花は言った。沈黙が落ちる。雪花の腕がくいと引かれ、誘導された。彼が今度は前を行く。その大きな背中を見ながら、人込みを避けるように歩く道を選んでいく【かわいいシロ】に着いていく。
何も言わずとも空気は穏やかだ。歩幅は意識せずとも合わさっている。
静かな路地に二人分の靴音だけが響いていた。
コツコツと鳴る靴音は大通りの人込みに紛れていた。
「良く似合っているじゃないか」
一歩後ろを歩く顔を振り返り、雪花は気だるげな笑みを浮かべた。視線の先には普段の私服とは様子の違う、着飾『らせられた』眞白がいた。
「落ち着かねぇ」
眉間に皺をよせ、そう言うや否や手早く首元を絞めつけるボタンを一つ外す。雪花は視界に留めると前を向き、言葉を返す。
「そういわないでくれ。絶好のデート日和にとんでもないラフな私服で来られても興ざめだろう?君の私服のセンスにあれこれ言うつもりは全くないがTPO、タイム・プレイス・オケージョンを考えた服装の方がいい」
「デートじゃねぇよ」
間髪入れずに呆れたような声がした。雪花は足をゆるめ、愉し気に唇をなぞった。
「そうだったね。じゃあこれは『散歩』だ」
後ろから絶えず注がれていた鋭い視線の気配がそれた。笑ってしまいそうなのをこらえて再び元のスピードに戻す。
「着飾らせた犬を見せびらかしたいのは飼い主の本能さ」
相変わらず眞白は何も言わない。ただひたすらに視線が注がれている。注視するような、獣が相手を見つめるような、そんな『いつも通り』の重苦しさだ。
「つきあってくれるだろう。【僕のかわいいシロ】」
今度こそ笑いながら雪花は言った。沈黙が落ちる。雪花の腕がくいと引かれ、誘導された。彼が今度は前を行く。その大きな背中を見ながら、人込みを避けるように歩く道を選んでいく【かわいいシロ】に着いていく。
何も言わずとも空気は穏やかだ。歩幅は意識せずとも合わさっている。
静かな路地に二人分の靴音だけが響いていた。
